Activity Reports超域履修生による、ユニークで挑戦的な活動のレポート。

授業レポート | 超域イノベーション総合


アートと科学を活用した化粧品の創造的活用法

2024/5/20

課題提供者: 株式会社 資生堂

■活動概要&成果

活動概要

アートと科学は、それぞれ化粧という行為にどんな関わりがあり、またどういった価値を新たにもたらし得るだろうか。広大な現代アートの世界と、日常的な化粧の特徴、そして博士課程の学生として向き合っている科学的関心を行き来しながら、手探りでプロジェクトがはじまりました。

瞬間と持続

認知神経科学、ロボット工学、社会学、科学哲学、保健学を専門とする学生たちのチームが、自らの専門性と現代アートの世界を掛け合わせながらたどり着いたキーワードは、「瞬間と持続」、そして「死」でした。人の死は、誰にでも訪れる瞬間であると同時に、残された人々の記憶を喚起し、持続的な時間と関係性を作り出す契機にもなります。それゆえ、永遠の美しさや、決して戻ることのない喪失を表現するアートの主題にもなるでしょう。
しかし、「終活」が社会問題として騒がれる現在であっても、人の死に際は、しばしばタブー視され、表立って表現される機会が限られているのが現状です。死に際のアート(表現、技法、作法)にもっと目を向けてもよいのではないか。そこには新しい社会的価値が隠れているのではないか。こうして履修生チームは、死化粧をプロジェクトの中心テーマに据えることにしました。

なりたい自分のための死化粧

死化粧は、よく知られた営みではありません。しかし実際には、病院や葬儀場、場合によって戦場や災害の現場において、世界中でなされています。考えたことがないだけで、誰もが一度は経験する可能性の高い営みです。調べを進めるなかで、そうした事実が知られていないことこそが、さまざまな問題の引き金になっていることに気づくことになります。「なりたい自分になる」ことが化粧のもつ重要なメッセージであるにも関わらず、死という人生の最も重要な場面でなされる化粧は、しばしば他人の手に委ねられ、なりたい自分とはかけ離れた「作業」にとどまってしまっているのではないか。死化粧をひとつのアートとして考えることで、死に際の自分らしさ、美しさ、さらには死を通した生のあり方に新たな光が当てられるのではないか。そのために、どんな表現を取る必要があるのか。
こうした問題意識のもと、プロジェクトの後半は、死化粧を考えなおすための効果的な展示企画案を作りこむ作業に取り組みました。プロジェクトで考案したコンセプトは、まずは資生堂ギャラリーの企画の一部として、2024年2月に実際に展示されました。その後、学芸員へのヒアリングや、展示スペースの視察、体験型の工夫を企画として練り上げ、2025年の展示企画の開催に向けて、提案書を作成しました。

■課題提供者からの声

提案いただいたアイディアは、社内活動で行っている新しいヘアメイクアップの立案の際のコンセプトとして活用させていただきました。この作品は2024年2月での一般展示を予定しています。
今回で課題提供は3回目になります。回ごとにチームの雰囲気やテーマの咀嚼の仕方、複数案を絞り込む際のクライテリア、プレゼンの仕方が異なり、その様子を遠くからではなく身内の視点で感じるとことができました。単に課題を解決に導くというよりは、どのように世界を描いていくかのヴィジョンを立てることができたように思います。

■履修生チームの声

資生堂さまからの「アートと科学を活用した化粧品の創造的活用」という課題では、私たち5人の中でも「化粧品の価値とは」「アートや科学ってなんだろう」と考えや定義もさまざまでなかなかグループとしての意見がまとまらないこともありました。ですが、超域独自の異なる専門分野からなるグループという特性を活かして、最終的に独創的なアイデアを提案できました。また、最終的にそのアイデアを企画書に書き起こし資生堂さまのギャラリーにて実際に展示できたことは、これから所属や分野の垣根を超えて協働を行うのにとても貴重な経験を得られました。

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