About Program

超域ってなに?

教育目標・3つのポリシー

教育目標

大阪大学「超域イノベーション博士課程プログラム」※1は、社会における複雑で困難な状況に対して“あるべきすがた” を着想し、新たな知の探求や知と知の融合を構想することにより、新たな価値を創り出す取り組みを先導できる、すなわち、社会システムの変革に至るイノベーションを様々な境域を超えて導いていくことができる高度人材の養成を教育目標としています。
今日の社会では、科学技術や産業の進展のもと、様々なものやことが相互につながる連鎖により世の中や生活が従来とは異なる水準で豊かになる未来が展望される一方で、貧困や飢餓、福祉や教育、生活環境や環境問題、働きがいや経済成長、不平等の解消、都市や地球の持続可能性、平和と公正など、従来は個別的に取り上げられてきた各種の課題を包括的に取り上げ、それらの関係性をも含めた解決を目指そうとする動きも現れています。それらの背景には、社会における種々の取り組みが個々に分断された領域の中で行われ、専らそれぞれの高度化や効率化が進んできたこと、また、それらを支えてきた知の営みも専門分化のもとで領域毎の探求や近接する領域間での融合がその進展のしくみであったことの限界が顕わになっていて、異次元のイノベーションに向けては様々な境域の間の断絶こそが根源的な障壁になっている現実が横たわっています。この現実を克服していく道筋として、社会における状況を俯瞰した上で、その眺望の中から斬新な課題を横断的に見つけ出し、その解決により新たな価値を創出することに向けて、統合的な知を創造していく「社会と知の統合」が求められようとしています。
本プログラムでは、上記の動向を見据えて、大阪大学の教育目標※2のもとで、在籍研究科での専門教育に加えて「社会と知の統合」に関わる独自のコースワークを提供することにより、社会システムを変革へと導く取り組みに知的体力と勇気を持って参画し、社会での実践を経て、やがては自らそれを先導する「知」のプロフェッショナルを養成することを目指しています。ここでの「プロフェッショナル」という言葉には、当該分野の知識やスキルに長けている専門家 (エキスパート) に留まらず、それぞれの知を基盤としつつ他の専門家とも連携しながら社会で活躍できる人材、さらに普遍的な意味合いでの「知」の力に立脚して活躍できる人材という意味を込めています。

本プログラムは、基本的には5年制博士課程※3(博士前期課程・博士後期課程の区分制および 5 年一貫制博士課程。一般には4年制学部卒業者が進学する。)に在籍する学生に対する5年一貫の学位プログラムである博士課程教育リーディングプログラム※4の一つとして設計されており、上記の目標を段階的に具現化するために、下記の2つのコースから編成されています。

Basic コース
5年制博士課程の1年次から2年次の2年間※5において、社会における状況を俯瞰して課題を発見する力、課題を統合的に解決していく力に関わる基盤を養う※6
Advanced コース
5年制博士課程の3年次から5年次の3年間※7において、Basicコースもしくはそれに相当する基盤に社会での実践に関わる基盤を重ねながら、一連の基盤を深化させ、博士論文研究ともつなぎ合わせていくことにより、社会と知の統合を推進するための総合力を養う。

3つのポリシー

Basic コース

1. ディプロマ・ポリシー(修了認定の方針)

Basicコースでは、在籍研究科の博士前期課程等での教育研究を通じて培われる専門力を基盤としつつ、研究科横断型・副専攻方式のコースワークを通じて、社会における状況を俯瞰して課題を発見する力、課題を統合的に解決する力に関わる基盤となる高度な汎用力を修得することを修了認定の要件とします。
具体的には、以下に掲げる、他者との適切な関係を形成し、ものごとを俯瞰し、自律的に行動していくための基礎的能力を修得した学生に本コースの修了を認定し、その証として大学院副専攻プログラム「超域イノベーション副専攻プログラム」もしくは大学院等高度副プログラム「超域イノベーション高度副プログラム」の修了認定書を交付します※6

  • 自らの専門の内容をその社会的・公共的意義と他の専門との関係のもとで明快に説明できる力
  • 他者の論理や専門がよって立つ背景や文脈をも踏まえて、具体的な課題の骨格や要点を相対的かつ柔軟に把握する力
  • 社会における課題の具体的な解決に向けて、立場や専門を超えた適切な問いかけを行い、独創的な議論を展開する力
  • 各方面からの関係者と協動しながら、多様な専門知を交差させつつ、課題解決を志向する取り組みに建設的に参画する力

なお、修了判定は所定単位の取得の有無により行います。

2. カリキュラム・ポリシー(教育課程の編成・実施の方針)

Basicコースでは、ディプロマ・ポリシーに掲げる人材像に対して、教育内容を、社会における状況を俯瞰するための基盤としてのKnowledge、専門知に基づく社会での活動を円滑に行うためのSkills、社会課題に関してイノベーションを導いていくためのIntegrationに大別することにより、教育目標にしたがった体系的なコースワークを大学院副専攻プログラム「超域イノベーション副専攻プログラム」・大学院等高度副プログラム「超域イノベーション高度副プログラム」として整備しています。
コースワークは、Knowledgeに関わる知識・教養系科目群、Skillsに関わる展開力系科目群、一連の基礎の上にIntegrationに直結する力を養っていくコア科目群からなるラーニング科目群から構成し、独自に多数の科目を提供します。各科目では、学生が主体的に学びに参画するアクティブラーニングの手法を取り入れ、特徴的な課題についての学習を通じて当該分野が共有しているエッセンスや固有の考え方を修得していくモジュール方式による授業を展開します。また、社会と知の統合に関わるさらに深い独自の学修機会として、上記の各科目群での学修のもとで課題発見から実践に至る各種の活動を通じて社会との関わりを具体化していくアクティビティ科目群を提供します。さらに、一連のコースワークに加えて、それらの学修効果をより確かなものにするために、履修生の発案等による社会課題に関わる取り組み(アクティビティ・プラス)を審査の上で支援する機会を提供します。
なお、上記の科目群のうち、アクティビティ科目群は本履修生のみを対象とします。準履修生はそれを除く部分のコースワークを受けることになります。本履修生のうち、特に優秀である者については、日本学術振興会の特別研究員に導いていくために、選考の上で特待生と位置付けて、社会と知の統合に関わる円滑な学修を促進するための経済的支援を実施します。なお、特待生の資格は研究活動や修学の状況により失効することがあります。

3. アドミッション・ポリシー(履修生受入の方針)

Basicコースでは、教育目標に掲げる人材へと成長しようとする志とポテンシャルを持つ大学院生として、下記の資質と意欲を持つ者を本コースの準履修生として受け入れます。

  • 大阪大学のいずれかの研究科における5年制博士課程あるいは4年制博士課程の1年次から2年次、もしくは、修士課程での専門教育を通じて、当該分野のプロフェッショナルに成長したいという志とそれに足る基礎的な学力を有している
  • 社会における課題に具体的な関心を持ち、その解決に関わっていきたいという意志を有している未解決の課題に対して他者との対話や協働を通じて包括的に取り組もうとする態度を有している

また、上記に加えて下記の資質と意欲を持つ者を本コースの本履修生として受け入れます。

  • 大阪大学のいずれかの大学院における5年制博士課程の1年次から2年次、もしくは、4年制博士課程の1年次から2年次において社会と知の統合に関わる修士論文研究もしくは博士論文研究に取り組み、Basicコースの修了後は引き続いてAdvancedコースに進学して博士号を取得しようとする志とそれに足る学力を有している

準履修生は、5年制博士課程、4年制博士課程および修士課程の1年次学生を応募対象として選考します※3。準履修生の選考では、出願書類審査と面接審査により、上記の資質と意欲を審査します。
本履修生は、5年制博士課程および4年制博士課程の1年次学生を応募対象として選考します※3。本履修生の選抜では、準履修生の選考での各審査に、複数の書類(出願者による研究構想に関する計画書、指導教員による評価書としての推薦書、外国語の運用能力の審査)および、試験(筆記、グループディスカッション、口頭試問)を加味して選抜します。外国語の運用能力は、外国語能力判定テストのスコア、授業での成績、外国語での論文等の執筆経験等により審査します。

Advanced コース

1. ディプロマ・ポリシー(修了認定・学位授与の方針)

Advancedコースでは、在籍研究科の博士後期課程等での教育研究を通じて培われる高度な専門力を基盤としつつ、研究科横断型・副専攻方式のコースワークを通じて、Basicコースで獲得した高度な汎用力に社会での実践に関わる基盤を重ねながら、未知で複雑で困難な課題の解決を先導し社会でイノベーションを起すための力にまで高めて、社会と知を統合するための総合力を獲得することを修了認定の要件とします。
具体的には、以下に掲げる社会と知の統合を牽引するために求められる力量を修得した学生に超域イノベーション博士課程プログラムの修了を認定し、在籍研究科での博士学位の授与に際して、同プログラムの修了を付記します。

  • 社会と知の統合に関わる学術領域において斬新な研究を構想し遂行する確かな能力
  • 高度な教養のもとで、ものごとを俯瞰的にとらえて、未知の問題を見つけ出し、新たな課題を設定する力
  • 独創的な思考を通じて、新たな考え方やしくみを積極的に取り入れた課題の解決策を立案していく力
  • 豊かな国際性のもとで、様々な立場の他者と関わり協働しながら、確かな指針を持ってグローバルに行動し、イノベーションを起こして新たな価値を創造する力

なお、修了判定は所定単位の取得の有無を踏まえた最終試験の合否により行います。

2. カリキュラム・ポリシー(教育課程の編成・実施の方針)

Advancedコースでは、ディプロマ・ポリシーに掲げる人材像に対して、Basicコースによる基盤の上に、Integrationに関わる力を本格化していくために、教育目標に従った体系的なコースワークを整備しています。
コースワークは、Integrationに向けて多様な知識やスキルを総合化していくアドバンスト・コア科目群として構成し、いずれも独自の科目を提供します。実践的なプロジェクト学習をはじめとする一連の科目は、Basicコースでの学ぶべき事項や解くべき課題の認識、要素としての知識の「学び方」の獲得やスキルの修得、コア科目でのワークショップや導入的なプロジェクト学習を通じたそれらの統合化に対して、専門研究とともにそれらを強化する役割を担い、“学修のスパイラル”が全体として組み上がることを意図しており、一連の内容が紡がれて社会と知の統合のための総合力として結実することを目指します。
また、履修生を教育目標に掲げる人材へと着実に導いていくために、Advancedコースの1年次(プログラムとしての3年次)終了時には所要単位の取得を前提として在籍する研究科での社会と知の統合に向けた専門力の確実な向上を審査するためのQualifying Examinationを実施します。

3. アドミッション・ポリシー(履修生受入の方針)

Advancedコースでは、教育目標に掲げる人材へと成長しようとする志とポテンシャルを持つ大学院生として、下記の資質と意欲を持つ者を本コースの履修生として受け入れます。

  • 大阪大学のいずれかの大学院における区分制博士課程の後期課程、もしくは、5年一貫制博士課程あるいは4年制博士課程の3年次以降において、社会と知の統合に関わる博士論文研究に取り組もうとする志とそれに足る学力を有している
  • 社会と知の統合に向けた高度な汎用力を構成する基礎的な知識やスキルを有している
  • 社会システムの変革を導くイノベーションに関わる取り組みに主体的に参画したいという意欲を有している

履修生は、5年制博士課程および4年制博士課程の3年次への進級予定者を応募対象者に、Basicコースの本履修生に対してはAdvancedコースへの進級審査としてのBasicコースの修了の判定、あるいは、Basicコースの非履修生に対してはBasicコースに相当する教育や社会での実践を通じてBasicコースを修了した者と同等の知識やスキルを有することの認定審査、英語の運用能力についてのスコア、指導予定教員による評価書の審査、および、社会と知の統合の観点からの修士論文の考査を含む選抜試験により選抜します。Basicコースを準履修生として履修し大学院副専攻プログラム「超域イノベーション副専攻プログラム」を修了した者については、選抜試験に出願するに際して、知識やスキルに関する認定審査を免除します。業での成績、外国語での論文等の執筆経験等により審査します。

  • ※1 2018年度以降の超域イノベーション博士課程プログラムの内容は、2012年度からの6年間の教育活動の成果、この間に浮かび上がってきた社会情勢や高度人材への要請の変化などを踏まえて、2017年度以前のそれから改定されたものとなっています。
  • ※2 大阪大学および各研究科等の教育目標、ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、アドミッション・ポリシーについては、大阪大学のホームページに掲載されている下記のファイルを参照してください。
    > http://www.osaka-u.ac.jp/ja/guide/announcement/files/program_graduateschool.pdf
  • ※3 5年制博士課程、4年制博士課程と修士課程のそれぞれに該当する研究科や専攻の範囲は募集要項を参照してください。
  • ※4 博士課程教育リーディングプログラムについては、大阪大学大学院学則の第5条の6に規定されています。
  • ※5 Basicコースにおいては、履修生の選抜・選考を博士前期課程への入学後に実施するため、その履修期間は実際には2年間よりも短くなります。
  • ※6 大学院副専攻プログラム「超域イノベーション副専攻プログラム」もしくは大学院等高度副プログラム「超域イノベーション高度副プログラム」の修了認定証の交付は、5年制博士課程を履修する者については博士前期課程修了時に、4年制博士課程を履修する者については博士課程修了時になります。
  • ※7 博士課程(4年制)の場合、期間は2年間になります。