Activity Reports超域履修生による、ユニークで挑戦的な活動のレポート。

授業レポート | 超域イノベーション総合


地域振興と住民の日常生活を両立させる施策を提案せよ

2023/6/26

課題提供者: 豊能町役場

■活動概要&成果

活動概要

中山間地域の過疎化は、インフラ維持への悪影響や空き家の増加による景観の毀損など様々な困難をもたらすことが知られています。地域振興のための観光誘客や移住促進が取り組むべき喫緊の課題である一方、見知らぬ他者が生活の場に入ってくることに不安を覚える事例も生じています。本課題では、このジレンマを解消し、地域振興と住民の生活の質をともに向上させる持続可能な地域振興施策の提案を行いました。

地域振興と日常生活

人口減少が継続する中、様々な地域で地域振興に向けた取り組みが行われています。大阪府北部に位置する豊能町では、豊かな自然と都市部に隣接する立地という特性を活かした有志による積極的な観光誘致活動が奏功し、ハイキング、キャンプ客などの交流人口が多く訪れる場所の形成に成功しました。しかし、その一方で違法駐車や放置ゴミといった弊害が顕在化し、一部の場所で車の乗り入れを禁止するなど集客を制限せざるを得ない状況に陥りました。
履修生チームは現地でのフィールドワークを通じて、観光誘客を推進する住民グループと抑制的な施策を求める住民グループは移住促進を重視する点で主張に大きな隔たりがあるわけではなく、齟齬の中心には、見知らぬ他者が日常生活や地域活動に実害を及ぼすことへの不満があるとの気付きを得ました。

顔の見える誘客

移住を見据えた地域への誘客とそれによって生じる弊害というジレンマを解消するため、履修生チームはUターン/Iターンを先に見据えたリピーター(関係人口)の獲得に焦点を当てるべきだと考えました。観光客が地域住民と生活体験をともにする農泊を中心とした取り組みを通じて「見知らぬ他者」から「顔見知り」になり、継続的な関わりによって相互理解を醸成することで軋轢を低減する施策を提案しました。
このような取り組みは、その後の空き家の貸与や移住後の地域コミュニティへの参画を円滑に進める端緒となるもので、波及効果の大きい取り組みであると考えられます。地域振興を単なる誘客ではなく、地域のメンバーを増やす活動であると捉え直し、そのための具体的な短期的、長期的施策を実現に向けたステップとともに提示した点で価値ある提案になったのではないかと感じます。

■課題提供者からの声

この度ご縁をいただき、豊能町から「持続可能な観光資源の活用」と「町の活性化」を  テーマに課題を提供させていただきました。本町の場合、新興住宅地と農山村部が共存しているという地理特性、土地の利用に関する法規制など、今回の課題の解決に向けたハードルが多く存在しています。特に法規制は、それぞれ異なる様々な分野からの規制がかかって おり、学生の皆さんは、「提案・法令上の適否検討・再提案」を何度も行うこととなり、   苦労されたことと思います。最終発表でいただいた施策案は、本町の特性を包括した上で 提示されたもので、「町の活性化」に向けて大変に有効と思えるものでした。
今回、様々な分野の法令を踏まえ、複数の人が多様な視点からの意見を出し合って検討を行い、最適な施策の提示をしていただきましたが、学生の皆さんにとっては、知の分野に おいてダイバーシティ&インクルージョンを経験できたのではと考えています。「知」だけではなく、「社会活動全体」においてダイバーシティ&インクルージョンは、今後ますます重要性が増すものと思います。今回の経験が、これから社会に羽ばたく学生の皆さんの活躍の一助になることを願って止みません。

■履修生チームの声

「地域振興」と「地域住民の生活の質」という一見相反する事象を両立させる解決策の提示は、我々にとって大きなチャレンジであった。縁も所縁もない地域の未来を考えることは容易ではなかったが、現地調査やインタビューにて知見を集積し、分野横断のチームで意見を交わし、1つの解決策を提案できたことは大きな財産だと思う。特に、対立構造の中でもビジョンは共通していることを発見できたこと、議論が難航した際に、バックキャスティングを用いたことで道が開けた感覚を体感できたことは今後の糧になるだろう。

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