Professors & Lecturers様々な分野の教員が履修生の学びを支援します。

プログラム特任助教荒木 智子Araki Tomoko

専門分野
リハビリテーション医学、応用健康科学
リプロダクティブヘルス&ライツ、ヘルスプロモーション
担当業務
選抜審査・選抜広報
担当授業
超域イノベーション総合
研究関心
女性のwell-being(特に産前産後の健康課題と社会、就労との関係)
Sexual Reproductive Health & Rights

研究紹介

私はスポーツ選手がケガから復帰し、再び活躍するエピソードに魅力を感じ、理学療法士になりました。臨床で活動しながら、より一層学びを深めたいと考え、修士でスポーツ医学、博士でリハビリテーション医学をそれぞれ違う大学で学びました。「リハビリテーション」には単に身体の回復だけではなく、「名誉の回復」、「尊厳の回復」という意味が含まれています。現場で多くの対象者の方に出会い、その方々に伴走することに私も大きな影響を受けてきました。
その後、自身の妊娠・出産・復職を経験し、女性の就労継続に健康が必須であることを実感し、ウィメンズヘルスの研究を始めました。現在は特に産前産後女性の健康課題を中心に取り組んでいます。一見元気にみえる産後女性の多くが腰痛や尿もれなどの症状を経験していること、また体力や身体能力は一般平均より低い水準で、半数程度がロコモティブシンドロームという移動機能の低下の可能性があることがわかってきました。育児、復職など次々に新たなことに出会うこの時期に必要なのは心と体の体力だと考えます。その点について共同研究者とともに研究成果を活用してリーフレット等を作成し、広く啓発しています。

さらに自身の経験から、流産や死産を経験した女性の健康状態の研究を行っています。産後であり、グリーフを抱えた女性の健康課題を検討しています。これらの研究において、身体的な要素のみならず、心理社会的側面についても着目することを大切にしています。
また、社会的困難を抱えやすい女性の課題について、多職種で課題解決を目指すプロジェクトに参画したことをきっかけに、あらゆる機関との連携や多様な立場から意見を交わす機会を持つことができました。例えば、望まない妊娠をした際どうするのか、という点で、日本と欧米では選択肢が異なること、法制度の違いを、私自身プロジェクトに参画するまで十分に理解できておらず、様々な驚きがありました。自分自身の心身の健康について、適切な時期に適切な知識を持つこと、自分自身の意思で考え、選択をすること。自分のからだの自己決定について、日本は欧米に比べて低い水準にあります。これらを社会課題と考え、一般社団法人SRHR Japanの設立に参画し、理事を務めています。多職種で活動、研究を展開しています。

私にとっての超域とは?

あらゆる知識や技術は人を介して伝えられ、活用され、発展していくものと考えます。専門性を高めることは、決して専門だけにこだわり深めることに限らず、全く関係なさそうな分野の知識や技術などを用いることでも実現できると私は信じています。それは自らの専門性を俯瞰することにもつながります。「関係ない」と決めつけずに、いったん飛び込んでみること。それが私の超域であるように思います。

超域生へのメッセージ

理学療法士として地域の企画に呼ばれた際に参加者の方の認知度が思ったより高くないという経験をしたことがあります。日々専門分野に身を置き、その専門には詳しくなる一方で、客観的な視点の大切さに気づいた経験でした。 技術の進歩で情報の獲得は簡単になっていますが、一方で自分の欲しい情報「しか」入ってこないデメリットがあります。多様な視座からものを見ること、自分が思いもよらないような意見や情報に出会うこと、超域にはそんなチャンスがいっぱいあると思います。
私も皆さんと一緒にそのチャンスを共に経験し、皆さんの伴走者でありたいと思っています。