グループ型自主活動
文理融合の基盤としての「麻雀の哲学」ーー「深層強化学習AIの開発による新たな哲学的遊戯論の構築:日本式麻雀を事例とした文理融合型アプローチを通じて」
ーグループ企画支援 活動レポートー
2025/5/8

ワークショップのポスター
代表者:中谷 碩岐(人間科学研究科、12期)
メンバー(50音順): 宮原 健輔(理学研究科、12期)/山道 宏紀(基礎工学研究科、12期)
協力者(50音順): 大原 迪久(基礎工学研究科)/栗 汰道(基礎工学研究科)
1. 活動の概要と背景
本活動は、哲学、政治思想、数理確率論、ゲームプログラマー、AI研究者といった極めて多様かつ領域横断的な研究者との共同活動を通じて、麻雀を事例とした新たな哲学的遊戯論「麻雀の哲学」の理論的基盤を構築することを試みるものであった。
本研究は「⼈間は将来を⾒通せない状況の中で、どのように判断するのか」「不完全情報下において、知能はどのように判断するのだろうか/その知能の判断をどのようにモデル化できるだろうか」という、極めて素朴な疑問から始まった。こうした疑問にアプローチするため、本研究では近年の人工知能研究において注目を集める不完全情報ゲームである「麻雀」に着目しつつ、そのモデルをより広いエージェントと世界の不完全情報下における判断へと拡張することを目指した。具体的には本活動では、麻雀における従来の最適打牌選択モデルの検討を行うとともに、その成果やロボティクス研究、デジタルゲーム開発の知見を考慮に入れつつ従来の哲学的遊戯論を再検討することで、日本式麻雀をモデルとした新たな哲学的遊戯論を構築し、その理論的射程を探った。
2. 活動内容①:学会発表
活動内容は、主に学会発表、WS開催、そして論文執筆のアウトプットを軸として設定し、その準備としての各自での文献研究やミーティング・研究会(2週間に1回~1か月に一回)を中心に行った。以下、順にその概略を記す。
まず、研究開始直後の7月には、研究代表の中谷が東京で開催された若手哲学研究者フォーラムにて「麻雀の哲学:文理融合型アプローチを通じた新たな哲学的遊戯論の構築に向けて」 という題で、また9月には共同研究者の宮原が、同じく東京で開催された日本デジタルゲーム学会にて「より現実に近い麻雀ゲームの制作とその理論的意義」という題で、研究発表を行った。この研究発表では、萌芽的段階にある研究方針について、早い段階で専門家からのフィードバックを得ることによって今後の研究計画を精緻化するとともに、その後の論文投稿やWS開催に向けたネットワーキングを行うことが出来た。
3. 活動内容②:WSの開催
また、活動期間中に三回のWSを開催し、外部の研究者やゲームクリエイターを招聘することによって、本研究課題に関する研究発表や意見交換を行った。
まず12/8には「偶然と必然の形而上学」を開催した。これは、特に必然や偶然といった「様相」の主題を基軸として自らの哲学を構築した古今東西の哲学者たち(スピノザ、ライプニッツ、九鬼周造、メイヤスー)を専門とする四人の気鋭の若手研究者のレクチャーを中心としたものであり、「エージェント」ではなくむしろ「世界」それ自体の側で不完全情報性を考える方針を開いた点で、本研究にとっても大きな示唆を与えるものであった。
続いて、2/16には「人工知能とゲームの哲学」を開催した。立教大学の三宅陽一郎先生をお招きし「人工知能と哲学の交差」「デジタルゲームAIの現在」という題でレクチャーを行って頂いたのち、本研究班の研究発表を行い、それに対してフィードバックを頂いた。実際の開発現場での人工知能開発の知見から、本研究班の研究をより具体的な、実践的なものへとブラッシュアップすることが出来たように思う。
最後に、2/23には「麻雀において「強さ」とは何か」を開催した。大阪公立大学より齊藤竹善さんをお招きし、民俗史的観点から麻雀における「強さ」概念の歴史を紹介して頂いた。また本研究班からは麻雀AIにおける「強さ」の歴史について発表を行い、議論を行うことでこの主題に関する多角的な検討を行った。

それぞれのワークショップ当日の様子
あえて図式化すれば、これらWSは、それぞれ「哲学×ゲーム(不完全情報性)」「哲学×人工知能」「人工知能×ゲーム(不完全情報性)」という三方向から「麻雀の哲学」の位相を具体化・明確化するものであり、こうしたWSの成果は、成果③にある論文投稿に必要不可欠な役割を占めた。この点において、WSの実施は本活動の中心的な位置を占めるものであったといえる。
4. 活動内容③:論文執筆・投稿
また、本活動全体の理論的成果については、論文という形で公開することができた(中谷碩岐、宮原健輔、山道宏紀、大原迪久、栗汰道「麻雀の哲学:拡張ベルクソン主義と深層強化学習型AIのモデル検討を導きとした文理融合型アプローチを通じて」『哲学の探求 第52号』哲学若手研究者フォーラム、2025年、pp. 238-254.)。当論文では、「麻雀」を始めとする不完全情報ゲームについて、それが「ゲーム」と「⾝体」の中間領域の主題化を可能とすることによって、AI開発/哲学/人工知能/社会といった様々な分野間における議論の端緒を開くことものであると主張した。詳細については、論文を参照されたい。
5. 総括・今後の展望・課題
活動全体を通じて学会発表やワークショップ企画を通して様々な分野の方々とのネットワークを構築できたこと、これらの活動を通して「麻雀の哲学」の方向性を明確化し、論文投稿など一定の成果を出すことができたこと、他分野と関わる学際研究の経験を積むことができたことなどを踏まえれば、本活動は一定の成果を挙げることが出来たと考えられる。ただし、当初計画していた「麻雀ゲームとAIの開発」や「社会モデルへの拡張」は達成できなかったため、今後の課題としたい(ただし、活動中にこうした課題遂行の困難を受け、研究計画を修正して進行できたのはそれ自体学びとなった)。
ただし「GEや修士論文などもあり、活動時間が想定より足りなかった」「スケジュールの定期化とエフォートの明確化がより必要だった」「インプット方法やアウトプット方法をより多様化できた」など、いくつかの課題も発見された。次年度以降の課題としたい。
今後は、今回の論文で提示した「麻雀の哲学」の論文中で提示したモデルに関して、より様々な関連分野(ロボティクス、認知科学、哲学…)のフィードバックを受け取ると共に、今回の活動で課題となった他分野との知識共有と統合のプロセスに関して、学際研究の方法調査を通して研究手法について考え直す活動を行いたい。
(文責:中谷碩岐)






