自主実践活動
大規模地震災害対策としての法政策に関する実践的検討
2019/2/2
Text: 法学研究科 法学・政治学専攻 山本展彰
災害多発国である日本にとって、災害は社会全体で立ち向かうべき課題であり、事前の備えである防災・減災は災害発生時の被害をより小さくする重要な施策です。そして、本活動で取り上げた地震は、様々な災害の中でも具体的な発生予測が比較的困難な災害の一つとされ、発災時の被害を最小化するために、建物の耐震化や避難計画の策定などを中心とした具体的な施策が実施されています。
私は以前より、社会インフラである法が、地震防災においてさらなる役目を果たすことが出来ないかと考え、本プログラムでの個人的な活動として地震と法との関係に着目してきました。その中で、断層のズレによる破局的な被災を防止することを目的に、活断層の直上について一定の建築規制を課すアメリカ合衆国カリフォルニア州法の存在を知りました。そこで、本活動では、このカリフォルニア州法をはじめとするアメリカ合衆国の防災法制の実態調査と理論的探求を通して、日本においていかなる地震防災法制が可能かを検討しました。実際に約1ヶ月アメリカ合衆国に滞在し、上記州法を所管するカリフォルニア州の機関California Geological Surveyで担当者へのインタビュー調査や現地調査を実施し、州法の運用や現在取り組んでいる問題点など現地ならではの情報を得ることが出来ました。また、Harvard Law Libraryではカリフォルニア州法を含むアメリカ合衆国の防災法制について広く文献調査を実施しました。国内では、類似した枠組みを採用している徳島県条例について担当者へのインタビュー調査を行い、日本の社会事情に即し、他の制度とも整合性のある制度構築のアプローチを知ることができました。そして最終的に、以上の調査結果を総合的に検討し、災害対応が求められる施設に限定した上で、カリフォルニア州と同様の法制度を構築することが今後の地震防災において有用でありかつ実現可能性が高いとの結論を、防災関係の研究所に報告しました。
これらの活動では、今まで本プログラムで培ってきた経験やスキルが大いに有用でした。例えば、カリフォルニアでのインタビュー調査では、オーストラリアでの語学研修の際に行った研究者へのインタビュー経験や、フィールド・スタディ等で習得した現地の社会的文化的文脈に留意した調査のスキルが役に立ちました。また、様々な利害関係者が存在する中での解決策の策定には、超域イノベーション展開や、超域イノベーション総合での経験が生きたと感じています。そして、地質学と法学が重なり合う本活動は、他分野の知見を建設的に吸収し活用するという、本プログラム特有のスキルがなければ出来ないものでした。今後は、本活動の成果を研究報告や論文として発表し、成果を対外的に発信していきたいと考えています。