プログラム特任助教横山 拓真Yokoyama Takumasa
- 専門分野
- 霊長類学、生物保全、文化人類学
- 研究関心
- ヒトの同性愛の進化的・生物学的基盤について

研究紹介
私の研究テーマは、ヒトを含む霊長類における同性間の性的交渉(同性愛的な性行動)を行動学的・内分泌学的分析をとおして比較することで、ヒトの同性愛の進化的・生物学的基盤を探ることです。現代において、ヒトのセクシュアル・マイノリティに対する理解は深まりつつありますが、広く世界を見渡すと、セクシュアル・マイノリティに対する理不尽な差別や間違った固定観念が依然存在しているのも事実です。
2016年にセネガル共和国(当時の世論調査で「セクシュアル・マイノリティが最も暮らしにくい国」とされていた)を訪れ、同性愛に関する人類学的調査を実施した際に、現地インフォーマントに「同性愛者は子どもが残せないから異常だ」という意見をいただき、大きな葛藤を抱きました。彼ら彼女らの意見は1つの意見として受け入れ、根底にある要因を理解するために寄り添う必要があると思うのと同時に、その意見に立ち向かうための科学的根拠や妥当な答えを示すことができない自分が情けなく感じました。しかしながら、それもそのはずで、ヒト以外の生物においても、同性愛的な性行動の意義やその生物学的基盤について、未だ多くの謎に包まれているのです。
そこで、これまで行ってきた人類学的研究から大きく路線変更し、非ヒト科霊長類の同性間の性的交渉に関する研究(霊長類学)を新たに始めることにしました。それらの研究を行うことによって、ヒトの同性愛の生物学的基盤や進化のプロセスを明らかにするためのヒントが得られるかもしれません。とくに、私が専門に研究をしているのは、チンパンジーと同じくヒトに最も近縁な類人猿といわれている「ボノボ」です。

アフリカ・コンゴ民主共和国にのみ生息するボノボは、メス同士がgenito-genital rubbing(通称、ホカホカ)と呼ばれる同性間の性的交渉を頻繁に行います。ボノボをはじめとする霊長類の性行動について研究することで、あのときセネガル共和国で示せなかった答えを見つけられるかもしれないという思いで、日々研究に取り組んでいます。

私にとっての超域とは?
既存の枠組みに捉われず探究し続けて、知的好奇心を満たすことです。ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士はこんな言葉を残しました。「未知の世界を探究する人々は地図を持たない旅人である」。マンガ『宇宙兄弟』の金子シャロン博士は『「どっちが楽しいか」で決めなさい』と言いました。
私は「楽しいを探究する地図を持たない旅人」になりたいです。
(迷子になって怒られるかもしれませんが…)
超域生へのメッセージ
あなたの「楽しい」はなんですか?マンガ『宇宙兄弟』の難波六太はこんなことを言いました。『本気の失敗には価値がある』。失敗しないに越したことはありませんが、超域には本気で失敗することのできるチャンスがたくさんあると思います。「楽しい」を求めて失敗を恐れずにチャレンジしてみてください。
(今も昔も、私は失敗ばかりですが…)