Activity Reports超域履修生による、ユニークで挑戦的な活動のレポート。

授業レポート | 超域イノベーション総合


過疎地域の交通と自動運転の未来

2019/2/22

過疎地域の交通と自動運転の未来

課題提供者: トヨタ自動車、京都市右京区役所京北出張所

自動運転の技術は、現在世界規模で急速に開発が進められています。この技術によって、私たちの生活はどう変わりうるのでしょうか。過疎地域が向き合う現状を踏まえながら、次世代モビリティのコンセプトとその実証実験の提案に取り組みました。

■活動概要&成果

移動するとはどういうことか?

20世紀を代表する社会技術である自動車は、私たちの生活や社会のあり方を大きく変えました。自動運転もまた、ただ移動手段を快適にするというだけの技術ではないはずです。こうした問題意識のもと、自動運転技術の最新の動向をフォローしながら、同時に、過疎地域におけるモビリティの現状と課題を検討しはじめました。主要な交通手段の担い手(バス、タクシー、介護福祉サービス、病院、個人等)を訪問し、それぞれが抱える課題を聞きとりながら、人々が移動に何を求めているのかを考えなおす必要があることに気づきました。そして、移動が人間の本質的な権利であり、喜びであるという視点が欠かせないことを、プロジェクトの基本方針としました。

主要な交通手段にアクセスするまでのモビリティ

調査を進めるなかで、過疎地の交通には、赤字路線の維持から高齢者の免許返上に至るまで、さまざまな課題が山積みであることが徐々にみえてきました。特に高齢化が進む地域では、交通の利便性や合理性を考える前に、主要な交通手段にアクセスするまでのパーソナルな移動の支援を行うことが不可欠であることもわかってきました。自動運転技術は、そうした基本的なモビリティの前提がなければ有効に機能しません。そこで、自宅から主要な道路までの移動手段を新しくデザインすることに焦点をしぼり、「スマートカート」を用いた自動運転の実証実験を構想しました。

社会の仕組みとしての「モビリティ」

モビリティは、すべての人にとって、日々の生活に直結した身近な関心事です。したがって、自動運転の技術的な可能性も、利用する生活者の視点なしには意味をなしません。住民にとって提案がどういう意味をもつのかを知ることは、プロジェクトの意義を考える上でも必要になります。そこで、プロジェクト終了後の現地成果報告会では、住民、行政、地元交通事業者、開発者であるトヨタ自動車という異なるステークホルダーが一同に会して、過疎地域の交通の未来について一緒に議論する場を設けることにしました。この報告会を通して、住民が主体的に交通問題に取り組めるような仕組み作りや、社会システムの問題として移動を考える必要性に改めて気づくことになりました。

■履修学生チームの声

私達、博士課程で研究する者は、知らず知らずのうちに自分の専門領域で使う際の言葉のニュアンスに染まっています。例えば、理論という言葉を聞いたとき、私の場合は万有引力の式のような、突っ込みどころのないほぼ確立されたものというイメージを持ちます。それに対して、他の分野では理論は証明されるべきものなので、確立はされてはいない、むしろ不確かなものというふうに捉えられます。このような同じ言葉に対するとらえ方の違いは、アカデミア内に限らず、社会の中にも多く存在し、それらが議論の妨げになったり、時には誤解を招くことすらあります。すなわち、研究者が異分野とコミュニケーションをとるためには、言葉がそれぞれの専門にあたえる意味を知っておく必要があります。この気づきは、超域イノベーション総合で異分野の学生と協働し、京北地域の住民と行政、企業など様々なステークホルダーと話をする中で私が得られた成果です。その成果により、異分野とのコミュニケーションが達成され、私だけでは気づくことがなかった課題を設定することができました。今後異分野と協働する際にも、この経験は私の力になると、確信しています。最後に、課題の作成から議論の参加、報告書の添削等、感謝してもしきれないほどお世話になった、課題提供者様と教職員の皆様に厚く御礼申し上げます。

■ 課題提供者の声

トヨタ自動車(株)

山間地域の社会課題と掛け合わせて「移動の本質とは何か?」を問い直して頂きました。
フィールドワークを通じた現場の課題感と、意味を問い直す目線の高さ…両極を行き来してまとめるのは、難易度が高かったかと思いますが、京北地区の方々と多くの対話に根差した課題設定は期待値を超える洞察があり、自分の言葉でプレゼンされた姿も印象的でした。共創の力を今後の活躍にぜひ活かして頂ければと思います。

京都市右京区副区長・京北出張所長 金子宣幸氏

京都市との合併から13年,京北地域は全国の過疎地域の例にもれず,人口減少・少子高齢化が進み,まさに,持続的な発展に向けた新たな取組みが求められているところです。この度,超域イノベーションで取上げて頂いた交通問題については,地域住民にとって,あまりにも身近な課題であり,多大な関心をもって捉えられたのではないかと考えております。交通に関する問題の解決には,技術革新等による先進技術を導入しインフラ整備に繋げるハード施策と,人の行動の変容させるソフト施策の融合が重要だと思います。超域イノベーションで取組んで頂いたことが,この地域の人々に交通問題を認識し,考える一助になったと確信しております。今後も,新たな課題に向けて積極的にアプローチされることを期待しております。