Activity Reports超域履修生による、ユニークで挑戦的な活動のレポート。

授業レポート | 超域イノベーション総合


次世代の環境教育を提案せよ

2016/2/2

課題提供者: NPO法人こども環境活動支援協会LEAF

今回、本チームが取り組んだ課題は、西宮市の都市と隣接する里山を舞台として「持続可能な開発のための教育(ESD)」をより発展させることでした。持続可能な社会構築に向けた人材育成を行うための「次世代の環境教育」の具体案を提示しました。

■活動概要&成果

ESDの先駆的事例

これまでの環境教育では環境保全という観点を強調したものが多くを占めていました。こうした限定的な「環境」という捉え方を拡張して提唱された「持続可能な開発のための教育(ESD)」への社会的関心も高まっていますが、具体的な実践策は十分に普及しているとは言いがたい状況にあります。
NPO法人こども環境活動支援協会(LEAF)と大阪ガスエネルギー・文化研究所(CEL)が共同開発した実証実験プログラム『第一次産業を基盤とした次世代の総合的な生活力を育む学びの社会デザイン研究』は、ESDの教育観に則り、農・林・水産・消費の分野に関する活動を通じて、日本社会の持続可能性に寄与する人材育成を目的としたプログラムです。これは、「環境」という概念を拡張し、環境問題以外の様々な社会課題(少子高齢化、食料自給率etc.)をも視野に入れた先駆的な環境教育となっています。

現場で活動に参加してこそ得られる情報

チームの始動にあたり、環境教育やESDについての情報収集を行い、その後西宮市甲山の里山に何度も足を運びました。LEAFが実施する土作りや稲刈り、除草といった農業体験や、薪作りやナラ枯れ調査といった山の体験等に参加しました。文献調査では分からないことも多く、まさに「百聞は一見に如かず」でした。またLEAF職員の方々とも意見交換を重ね、提案へ向けての知見と刺激をいただきました。回を重ねるごとに新たな気付きがあり、それを持ち帰って話し合い、また文献調査をするというプロセスを繰り返しました。

次世代環境教育プログラム「Deliziosa Pizza」

本チームは次世代の環境教育プログラムとして「Deliziosa Pizza~世界一おいしいピザを作ろう~」を提案しました。本プログラムのコンセプトは、1年をかけて「世界一美味しいピザを、ゼロからつくる」に集約されます。大学生20名を対象とし、甲山で野菜、小麦などを作って、1年後にオリジナルのピザを作ることを目指します。自身で材料作りから計画し、「ピザをつくる」という目標に向けた様々な活動を行うことで、楽しみながら「物事を俯瞰して捉え、全体最適となる解決策を実行する力」が身に付くものとなっています。

境界線を引き直す力

「次世代の環境教育」に必要な要素について議論を重ねるにつれ、ひとつの「力」が浮かび上がってきました。それは「境界線を引き直す力」というものです。環境保全に限らず、少子高齢化、食料自給率の低下などの社会課題は「部分」を見ているだけでは解決できません。これらの課題は社会の変動とともに様々な要素が複雑に絡み合い、またその影響も広範に渡るようになってきています。こうした問題に対し、既存の境界線に沿って問題を切り分けるのではなく、全体を俯瞰して捉え、全体最適となる解決策を導き出し、実際に持続的な社会に向けた行動を起こすことが必要です。本チームはこのような力を総合して、「境界線を引き直す力」と定義しました。

持続可能な社会へ向けて

本プログラムを実施することで、自然と人間との関係を見つめ直すと共に農林水産業の大切さに気付き、「境界線を引き直す力」を身に付けた人材を社会に輩出していくことができれば、一人ひとりが人々や自然とのつながりのなかで豊かに生きていく持続可能な社会が作られていくのではないかと考えています。

■履修学生チームの声

当初は「環境」と一口で言えども、どこに焦点を当てて解決策を考えていくのか、異なる専門をもつメンバー間では重視したい点や、議論にずれが生じることも度々ありました。しかし、実際に現場に足を運ぶなかで次第に「現場」を軸足に据えて議論を組み立てていくように変化し、断片的であった議論がつながりながら進むようになりました。課題定義から提案の具体化までの一連の過程を経験するなかで得た学びは多大ですが、同時に半年間での限界を自覚したことも重要な学びです。研究・教育・社会の接合について深く考える貴重な機会となりました。
(人間科学研究科 博士後期課程 1年)

いかにチームメンバーに最大限に知識・能力を発揮してもらうかが自分自身の課題でした。議論しやすい場を設定し、その各人の意見・アイデアだけでなく、各人の価値観・バックグラウンドに気づくこともできました。また、お互いの価値観の理解がチームメンバーへの信頼につながり、期限が厳しいなど困難な時もありましたが、最大限に能力を発揮できるチームになっていったと思います。その過程で、プロジェクトはリーダーが一人で創り出すものではなく、チームで創り上げていくものだと改めて気づかされました。
(工学研究科 博士後期課程 1年)

■ 課題提供者の声

NPO法人こども環境活動支援協会 LEAF 小川雅由

今回のプロジェクトの良さは、現代社会における諸課題の解決に向け、複眼的・統合的な視座を持ち中長期的な視点でアプローチできる人材の育成につながると感じました。