Career path修了生インタビュー

村上 裕美

出身研究科
経済学研究科
専門分野・領域
ミクロ経済学、一般均衡理論
現在の所属・役割
関西学院大学商学部助教
キーワード
社会科学

2016年度修了生

博士人材として社会に出ることについて、大学院での研究内容との関わりや今の仕事を選んだきっかけ、博士人材だからこそ社会に提供できる価値など、感じるところをお聞かせください。

 ミクロ経済学の知見に基づきながら、市場メカニズムの性質、信用貨幣の成り立ち、企業はどのようにして形成されるのか、といった問題について研究を行っています。なかでも特に私が関心を持っているのは、今日の信用貨幣、およびそれが引き起こす諸問題を適切に扱うための、理論的枠組みの構築です。人々が社会的な選択を行う上で前提としているルールがどのようなものである場合に、貨幣的均衡が健全なものとなり得るか、そのルールを含めた全体社会の仕組み(メカニズム)についての合意はいかなるものか、といった観点から、貨幣の持つ肯定的役割を分析しています。またこうした貨幣的現象への理論的接近、および経済学理論全般に関する方法論的検討にも取り組んでいます。
 私は超域活動を経た後も、縁あって研究職に就くことになりましたが、今日の社会の激動の中、学問は実践を通じて社会と関わることを強く求められており、それと同時に知の在り方、またその方法が厳しく問い直され、専門分野の細分化といった問題を含む、様々な断絶を乗り越えることが要求されているということを実感しつつあります。このような現代社会において、単なる手法の共有といったことに留まらない、異分野との協同、有機的な研究を実現する社会科学研究者になることが私の目標です。

大学院生活とその後のキャリアパスに対して超域プログラムが果たす役割について、超域での学びが就職活動や現在の職務へ与えた影響や、履修によって生まれた新たな視点や考え方などがあれば教えてください。

 様々な異なる分野の履修生と一緒に学ぶことができる、というところに魅力を感じ、履修をはじめた超域プログラムでしたが、やはり今、大学院生活を振り返ってみても、自身とまったく異なるバックグラウンドを持つ履修生、そして先生方と多くの時間を過ごすことができたということが、このプログラムの一番の魅力であり、かけがえのない経験でした。
 領域横断的な経験を通じて学んだことは、安易な答えを出すのではなく、問題をできるだけ多くの側面から考えること、そして「取り残された意見」を含めた全体像に意識を向けることが重要である、ということであったと思います。

日々研究に励みこれから社会へ飛び立つ超域生に一言お願いします!

 超域での活動は、時として遠回りに感じることもあるかもしれません。しかし、いつか必ず、超域での経験は皆さんの力になってくれるはずです。皆さんのご健勝とご活躍を心よりお祈りしています。

(2020年11月)