About Program

超域ってなに?

社会において大学が果たす役割

変貌する社会と知の世界、
それらの関係「社会と知の統合」が求められる未来。

社会と知の関係をめぐる最近の動向

今日の社会はいろいろな意味で大きな変動期にあります。サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合する第4次産業革命の到来や人工知能の進展のもと、世の中のしくみが組み変わり、求められる人材や職種が大きく変化することが予測されています。新たな科学技術や産業の進展に向けて、我が国の科学技術政策では、様々なものやことが相互につながる連鎖のもとで世の中や生活が従来とは異なる水準で豊かになる超スマート社会、Society 5.0が展望されています。
そのような明るい未来像の背後では、国連において、貧困や飢餓、福祉や教育、生活や都市の環境、地球環境の持続可能性、平和と公正など、従来は個別的に取り上げられてきた各種の課題を包括的に取り上げ、それらの関係性をも含めた解決を目指そうとする持続可能な開発目標、Sustainable Development Goals (SDGs)が人類共通のアジェンダとして設定されています。

社会と知の関係がたどってきた道

世の中が至るところ、農村であった17世紀の代表的哲学者Gottfried Wilhelm Leibniz (1646-1716)は、微積分法の考案者であり、世俗的には国家官僚でもあり、時として商人でもあり、宗教家でもありました。往時の知識人とは、程度の差こそあれ、そういうものだったのです。
それに対して、18世紀半ばに起こった動力源の刷新は産業革命を起こし、世の中を一変させます。産業の躍進は、裏を返せば、人々が担う役割を個々に専業化し高度化することでした。知の拠点としての大学も、そのような分業に呼応するかたちで専門を分化させ、領域毎の専門家を育成する装置となっていきます。分業がさらに進み、大量生産のもとで市民社会が形成され、社会の課題はより複雑になりました。知の世界では、複雑化した課題に対応していくべく、技術経営、医工連携などを典型として、様々な知を融合することも時代の流れになってきています。
今日の社会では、新たな価値の創出に向けて、産業界では知識のソースを社外に限らず大学にも求めようとするオープンイノベーションの動きが活発になっています。先端科学では研究者がグローバルに連携してより深い知の世界に挑んでいくオープンサイエンスが求められています。しかしながら、社会課題の多様化や複雑化は留まるところを知らず、様々な矛盾がより深いレベルから浮かび上がってきています。旧来からの知の営みは分断された専門領域毎に進められ、せいぜい、明確な課題に対して近接する領域間での融合が行われるに留まっていましたが、複雑で困難な幾多の状況を克服する上で、各方面でそのような営みを超える転換点を描き出すことが求められています。

社会と知の統合とは?

上記の現実に対して、社会と知の世界を股にかけ多方面で活躍したLeibnizは、どのような形で今に蘇るのでしょうか?
Society 5.0として展望され、SDGsが挑もうとしている未来では、今では当たり前となっている社会での分業の体制や知の世界における専門分化のあり様がイノベーションに向けた限界として立ちはだかります。社会の現実に対して専門を超えた俯諏力で立ち向かい、未知なる状況に入り込んで、その解釈の中から解くべき課題を着想し、独創的な関係性を描き出す。そのもとで、深い専門性を軸としながらも様々な専門性との横断的な知の営みにより転換点を構想することから始め、社会で新たな価値を生み出す「社会と知の統合」が求められ始めています。
この“統合”の担い手には、基軸となる自身の専門における深い力、様々な知の力を縦横無尽に使いこなす力、はるかにスケールの大きなビジョンやストーリーを描いていく力、そのもとに人々が集い、共に動いていく力、……、それらの総体として未来への挑戦を牽引していく力が求められます。様々な専門の人々が織りなすシンフォニーのコンポーザーでありコンダクター、それが未来のLeibnizなのかもしれません。
超域イノベーション博士課程プログラムでは、各研究科・各専門分野で培われる深い専門力を基盤として、末来のLeibnizに求められる新たな道を創っていくための知識やスキル、力量に向けた“もう一つの基盤”を独自のコースワークにより身に付けていくことができます。