インタビュアー:13年度生 篠塚 友香子: 人間科学研究科
インタビュイー:13年度生 米田 翼: 人間科学研究科
取材日2014年2月
篠塚
米田君とは研究室が一緒なので、話をする機会は他の履修生と比べれば多いね。キャリアパスについて前にも聞いたことはあるけれど、もう少し詳しく聞かせてくれる?
米田
ぼくは、アカデミアに残ることを考えている。もちろん、リーディング大学院の主旨がより多くの博士人材を社会へ活かすことであるのは重々承知しているよ。けれども、研究と社会を繋ぐ意識をきちんと持った人材がアカデミアに残ることも大切だと思うんだよね。
例えばぼくの専門に引き付けて話すと、哲学者は従来、抽象的な議論を行ってきた。それは科学者達が具体的な社会問題を扱う上で取り逃してきたことを論じるためでもあったんだよね。けれども、それが再び社会に還元されないのは問題だと思う。その点、自分の研究を社会に還元することを意識した人材が大学側に残るのも重要。それを踏まえた上で、アカデミアに残ることを志望している。
篠塚
なるほど。超域に入る前からアカデミアに残ることを決断していたの?
米田
もともとアカデミア志望だった。でも、正直なところを言えば、前期の半年間でかなり迷ったよ。超域に入って、マーケティングやアクティビティのような多様な授業を受けたことで、自分の立ち位置が少し揺らいだ。でも、夏の海外実習での教員との出会いを通じて自分の立ち位置を見つめ直したんだ。その時、アカデミア一筋に決めた。迷ってなくても、今の道を選んだと思う。でも、ぼくはこの迷いは意味があったと考えているよ。
篠塚
新しいことに出会うということは、今まで培ってきた立場を批判的に見つめ直し、そこから方向転換をする必要が生じる可能性があることを意味するもんね。その点で、超域は刺激的であるけれど、しっかり考え抜かなければ拡散しっぱなしになってしまう。ところで、米田君が超域に志望した理由は何だったの?
米田
ぼくは今まで色々なことをやってきたんだよね。研究以外にも。例えば、音楽や舞踏を始めとする芸術活動。これは、一般的に言えば「遠回り」って言われる。でも、実は超域のディスカッションにおいても、こういった回り道で培った能力は活かされていると思う。選抜試験でも、相手の意図を汲み取る能力、つまり芸術活動を通して培ってきた対話力が評価されていたよ。
そう考えると、「遠回り」って無駄じゃない。超域って、確かに専門一筋でいくより、無駄なことかもしれない。でもそれは結局のところ全く無益なわけじゃないんだよ。ぼくが超域を受けようと思ったのは「もっと無駄できる場所だな」と思ったからなんだ。
それは哲学が社会に対して果たす機能に似ている。現代って、とにかくスピードを求められるよね。けれどそこに寸断を入れるのが哲学。つまり、少し立ち止まって考えてみるということ。ちょっと横道に逸れてからまた戻る、これってすごく重要なことだと思う。誰かストップ入れる人がいないと、止まらないから。この点で、「無駄」ってすごく意味があるんだよ。
篠塚
その話、すごく共感できる。学問においても、自分の生き方においても当てはまると思う。
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米田
超域に感じている魅力の一つは、ぼくを超域に選抜してくれたことなんだよね。例えば、普通の大学であるとぼくみたいな哲学と音楽の二足のわらじを履いている人は敬遠される。でも超域は二足のわらじを履いていても、そこから生まれてくる可能性をきちんと認めてくれた。もちろん、アウトプットを出せるかどうかは自分次第だけどね。
それから、超域は専門研究にも活かされているよ。ぼくはもともと生物学から哲学に入ったんだけど、哲学を専門としてから、生物学を専門としている人との接触がすごく少なくなってしまった。でも、超域だと生物学を専門としている人もいて、これはぼくにとってすごく「おいしい」環境。ぼくの研究にとって重要なのは、哲学研究を生物学研究に繋げたいということなんだ。だから、生物学を専門としている人に対して分かるように伝えていく必要がある。そういう時には、生物学を専門としている立石君や花井君に意見を求めることができる。超域はまさに自分の研究に活かせるプログラムだよ。
篠塚
超域の活かし方は人それぞれだけど、私たちみたいに領域横断な研究をしている学生にとっては超域を通じて得られる他分野の仲間や先生からの意見や視点は貴重だよね。
米田
あ、あと、超域に入ってパワポ力が補われた!理系の学生はパワポ力に長けているから、それが参考になったよ。
哲学は言語を使って抽象的な議論をする。でも言語である以上、伝えきれないこともある。その部分を掬い上げる手段の一つが、ビジュアルだと思うんだ。ビジュアルを使って、コンパクトにコンセプトを伝えるパワポ力。まさにパワポ力は自分が今まで足りていなかった部分で、超域を通じて成長したところかな。まだまだだけど。
篠塚
私もついつい自分の伝えたいことばかり盛り込んで、聞き手のことを考えずにパワポを作成しがちだから気をつけないと。
今日は超域に関して研究と結びつけながら話してくれてどうもありがとう!また色々と聞かせてね。