インタビュアー:篠塚 友香子 二期生・人間科学研究科(文系)
取材日2014年1月
■インタビュイー紹介
丹羽 佑介: 一期生・情報科学研究科(理系)
金南 咲季: 二期生・人間科学研究科(文系)

1: 超域生の将来のビジョン、
 超域で経験できた実際の体験から得られること

篠塚
今回は一期生(2012年度生)丹羽さんと二期生(2013年度生)金南さんへのインタビューということで、学年も専門も超えた「超域人」は初、です!どうぞよろしくお願いします!
二期生はもうすぐフィールド・スタディ、そしてこの夏にプレ・インターンシップを控えています。そこで自分の将来のキャリアビジョンについて、まずは一期生の丹羽さんにお伺いしたいのですが。
丹羽
僕はアジアにとても興味があって、日本の技術を使って、アジアの発展の協力したいな、と考えているよ。きっかけは、プレ・インターンシップで、そのときにラオスで日本の建築の技術移転をしている人に出会ったんだけど、そこでは日本では起こりえない問題が発生するんだよね。例えば、建築の図面を反対にして読んでしまうとか(笑)だけど、そこで働いている日本人の方々が本当に生き生きして見えた。そのときに、技術移転をされる現地の人だけでなく技術移転をする側にもメリットがあると感じたよ。僕の専門はカメラや画像処理の研究だけど、もっと幅広く、日本の得意としている『技術』を使って、いろんな国とつながっていくような仕事がしたいかな。
篠塚
なるほど!丹羽さんは、プレ・インターンシップでの経験が、自身のキャリアビジョンを拓くきっかけになったんですね。金南さんは、いま自分のキャリアについてどう考えてる?
金南
私は、今のビジョンとしてはこのまま教育の分野で研究者を目指したいな、と思ってる。でも遠くから見ているだけではなくて、実践的に問題解決にコミットできるようなアクティブな研究者になりたい。「何が起きているのか」を丁寧に追っていく研究者の視点と、「何ができるのか」を現場と一緒になって考えていく実践家の視点、その2つを大事にしたいな。あとは、教育の分野でも行政、現場、研究者の立場によって問題意識とか方法に大きなギャップがあって、バラバラに動いているっていう感じがするけど、分野間だけでなくて、そういう立場間の橋渡しができる研究者にもなりたいな。
篠塚
研究者の新たなカタチだね!私も、そういう視点ってとても大切だと益々感じてるよ。すごく明確なビジョンに感じるけど、学部生時代からそう思っていたの?
金南
ううん、むしろ、超域に入ってこの半年、具体的にこれ!っていう明確なビジョンとか夢を持つことの難しさをすごく感じたかな。これまでずっと、具体的な行き先を持って、というよりは目の前の直感を大事に選んで進んできた感じが強くて。超域を選んだのも、これまでの自分では持ち得なかったビジョンが見つかるんじゃないかっていう”可能性”を直感的に強く感じたから、っていうのも大きかった気がする。実際、いまのビジョンは超域でのいろんな活動を通して得たものかな、と思うよ。
丹羽
あたらしいもの(ロールモデル)を創り出すことに超域の価値があるかもしれないよね。僕も明確なビジョンがあった訳ではないけど、超域で何度も話していくうちにいろいろな人にいろいろな意見をもらうことができて、少しずつビジョンが定まっていった感じ。
金南
私もこれからそういう明確なビジョンを、丹羽さんみたいに超域をうまく活かしながらもっと深めていきたいな、と思っています。
篠塚
丹羽さんの「海外実習での体験が自身の興味を大きく変えた」という経験を聞いて、私たちも、これから始まるフィールド・スタディやプレ・インターンシップがとても楽しみになってきました!
丹羽
二期生の海外実習も貴重な体験になるはずだよ!僕は超域に入る前からもともと海外実習に興味はあったけど、実際に、プレ・インターンシップ※1やフィールド・スタディ※2を通じて、現地で感じた様々なことは自分の興味に大きな影響を与えたと実感しているよ。ブータンでは経済発展と幸福度を天秤にかけて発展している。幸せを犠牲にする経済発展はいらないという価値観に目の前で体験できたのは本当によかった。もちろんGNH※3は有名だし、事前に調べたりしていたけど、調べたり聞いたりするのと、目の当たりにするのは全然違う。新たな価値観にまさに触れることができて、そこからアジアへの興味が一気に深まって、自身のキャリアビジョンにもどんどん繋がっていったように感じる。

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2: 自分自身の専門分野と、フィールド・スタディについて

篠塚
私たち二期生はもうすぐフィールドスタディでスリランカとパラオに行きます。金南さんはスリランカだったよね?
金南
それまではスリランカについてよく知らなかったんだけど、フィールドスタディの授業を機に、スリランカの教育事情の中には、教育の民主化の問題とか、加熱する競争や格差の問題があるってことも知ったりして、思いがけず専門分野からの興味もたくさん出てきたんだよね。さっきの丹羽さんのラオスの話を聞いていても、実際行ってみることでしか分からないことっていうのは絶対にあるし、そういうのを私もしっかりと見て学んでくるつもり。
丹羽
アジアの国に行って改めて感じたけど、教育って本当に大事。金南さんの専門である教育の話をもう少し詳しく聞きたいな。
金南
教育っていろんな分野の基盤になってるし、一人ひとりの人生とか幸せとか可能性にすごく深く関わっている分野だと思っています。私自身も教育とか、そこで出会った人のおかげで今があって、いろんな可能性に出会えてるっていうのをいつも感じてる。でも今の社会では、それは全然あたりまえのことではなくて。私自身がそんな風に、教育の力とか、教育への感謝を深く持っているからこそ、教育を通じて一人ひとりがもっと可能性とか幸せに出会える社会にしたいっていう思いが私の根幹にあります。
丹羽
だれもが広い意味で”教育”に携わる立場になる可能性があると思うけど、その一方で、教えるっていうのは難しいなって常に思う。各国で教育は違うけど、日頃の行動で見せる教育とかもあるよね。超域の中に教育を専門分野にしている履修生がいる事はとても貴重だと思うな。
続き(超域人vol.11 ~後編~) は次回掲載致します!
===文中注釈===
※1:プレ・インターンシップ
2年次に海外の企業や団体、大学などを短期間で訪問し、4年次に実施するインターンシップのイメージを獲得することを目的としています。
※2:海外フィールド・スタディ
履修生の日常とは異なる文化的、政治的、社会的、経済的な背景を持つ人々が生活する場所を訪問し、グローバル化の時代における多様な世界を感じることのできる場に身をおき、その社会が抱える課題とともに考えることを通じて、世界を複眼的に認識する視点を養うための実習を行います。1年次の2月から3月の期間に実施します。平成24年度(2012年度生)は、ブータン、フィリピン、クック諸島に分かれてチームで実習を行いました。平成25年度(2013年度生)はスリランカ、パラオで実施を予定しています。
[関連記事]
※海外フィールド・スタディレポート:前半後半
※プレ・インターンシップレポート:前半後半
※担当教員レポート「ブータンでフィールド・スタディ
※3:GNH
国民総幸福量(GNH:Gross National Happinessの略)。国民の幸福度を示すとされる指標。1972年、ブータン国王が経済的・物質的な豊かさよりも心の豊かさを重視すべきとして提唱し、以後、国の政策として活用されている。
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※担当教員レポート「ブータンでフィールド・スタディ