Reported by:大阪大学大学院理学研究科 稲富桃子(超域14年度生)
大阪大学大学院工学研究科 高田一輝(超域13年度生)
大阪大学未来戦略機構 Ghosh Dastidar, Debasrita(特任講師)
Edited by:大阪大学大学院文学研究科 佐藤紗良(超域12年度生)

授業名:アカデミック・イングリッシュⅠ〜Ⅳ
担当教員:Ivan Brenes(未来戦略機構)・Ghosh Dastidar, Debasrita(未来戦略機構)・上田功(言語文化研究科)

超域プログラムには英語が得意な人しかいないのでは?―——超域に興味がある学生から、「英語が苦手なのですが授業についていけますか?どんな授業をするんですか?」という質問をよく受けます。今回その疑問に答えるべく、超域プログラムで開講されている英語授業の受講生である2013年度生の高田 一輝くん、2014年度生の稲富 桃子さんに、一年次・二年次に開講されている授業紹介をしてもらいましょう!更に今回は担当教員の一人DebbieことDebasrita先生からも教師側の視点を提供して頂きます。

 

実際の授業で行っていること

アカデミック・イングリッシュとは具体的に何をやる授業なのでしょうか。
また、大学の学部までの英語の授業とはどう違うのでしょう。

稲富:
 授業は全て英語で行われており、今期(一年次前期)は「英語でのプレゼンテーション技術の獲得」を大きな目的としています。1クラス20人程度の少人数で行われているため、グループディスカッションや発言の機会が多く、生徒同士の距離はもちろん、先生との距離も近く感じられます。プレゼンの他に、メールの書き方などの実用的な技術も勉強します。授業は学部時代の「listening」や「reading」の授業と似ていますが、これらの授業は「一般教養」に近い部分がありました。それに対して、超域での授業は、それよりもさらに実生活に役立てやすい「実践に近い内容」であると感じました。

高田:
  シラバスによりますと、Academic Englishというのは 10577774_781432761003_2021519313_o「真に教養ある大人に求められる英語の発信能力を訓練する」授業だそうです。
  具体的に何をやっているかと言いますと、たとえば、「エッセイ」を書く練習などです。正直なところ、「エッセイ? そいつは徒然なるままに日暮らしチラシの裏に向かって書くっていう、あれかい?」みたいな第一印象だったのですが、授業を受けていくうち、どうやらこれは日本でいう「レポート課題」に近い概念なのかな、という気づきが得られてきました。「海外で体験したことについてあなたの意見を述べよ」とか、「あなたの専門についてわかりやすく説明せよ」とか。つまり、この授業では英語でのレポート課題の書き方を教えてくれているようなのです。日本語のレポート執筆でもここまで丁寧に教わったことはないかもしれません!

Debbie先生:
 超域イノベーション博士課程プログラムの一年次・二年次が履修するアカデミック・イングリッシュⅠ〜Ⅳは、2014年度より未来共生イノベーター博士課程プログラムとの合同で行っています。一年次にあたる2014年度生は、今年度の英語の授業「アカデミック・イングリッシュⅠ・Ⅱ」において、アカデミック・プレゼンテーション(学術的な場面での英語を用いたプレゼンテーションスキル等の講義)を行っています。授業内容は基本的に、簡単な導入と実践的な練習で構成されています。受講者は、段階的に発表やディスカッション戦略の練習を行い、発表内容や論理的構成、主張のサポート、効果的にスライドを組み立てる方法などを身につけることができます。
 二年次である2013年度生の授業は「アカデミック・イングリッシュⅢ・Ⅳ」で、未来共生プログラムとの三つの合同クラスで、ライティングを中心に授業しています。形式的構造に従って文章をまとめること、根元的な理論と概念を順序だてて呈示すること、そして引用により参考文献を裏付けること、の三つのプロセスに焦点を当てて講義を進めています。


レベル別クラス構成

今年から英語のクラス分けが始まりましたが、それによって学生たちの学びや授業内容はどう変わったのでしょうか。

Debbie先生:
  クラスは筆記の実力試験によって三段階(上級・中級・基礎)に分かれており、未来共生イノベーター博士課程プログラム(RESPECT)と合同で進めています。私が担当している2014年度生(一年次生)のクラスは超域履修生7名、未来共生履修生7名の中級クラスで、授業は毎週金曜日の1時限目に行っています。同じく、2013年度生(二年次生)の中級クラスは超域履修生4名、未来共生履修生6名の10名から成り、毎週金曜日の2時限目に行っています。

稲富:
ae_img02  超域プログラムの英語授業はどれくらいのレベルなのか?ということは、プログラム履修前からずっと気になっていました。私自身、正直なところ、大学入試まで英語は得意なほうでした。とはいうものの、それはreadingが中心の英語であり、speakingとなると、かなりカタコトになる状況でした。学部の頃に在籍していた研究室は留学生がよく来ていたので英語をしゃべる機会は多かった方なのですが、大学院に進学して研究室が変わると留学生もいなくなり、その機会も非常に少なくなってしまいました。「アカデミック・イングリッシュⅠ」では、事前に筆記によるクラス分けテストが行われ、スコア別に3つのクラスに分かれます。私は真ん中のクラスに配属されました。
 プレゼン発表の課題で、私は未来共生プログラムの留学生の方とペアになりました。個人で取り組む課題では、自分の専門分野に関する発表になってしまいがちですが、他の超域の授業と同様に、この授業も異なる専門分野を持つ人との積極的な交流が求められるので、専門分野に依存しない本質的なプレゼン技術が磨かれます・・・余談ですがプレゼンは「日本と中国の麺類」というテーマで発表しました(ちなみに私の専門は生物学です)。普段の研究科での生活だけでは出会うことができないであろう学生と知り合い、ともに一つの課題をやり遂げることはこの授業の魅力の一つです。

高田:
 今年度から新しく追加された特色として、「未来共生」という阪大にある別のリーディングプログラム履修生との合同講義となり、英語能力別に3段階にクラスが分けられたという点が挙げられます(私の英語はIELTSで6.0程度の能力ですので、中級クラスです)。超域2013年度生はいささか理系に偏ったメンバー構成になってしまっているので、履修生の多くが文系の学生である未来共生との合同授業は、新しい刺激を与えてくれているように思います。たとえば、「自分の専門分野を一枚の絵と、若干の英語で説明する」というプラクティスをやったときのこと。未来共生の学生は全員、自分の研究フィールドを示すために、図ったかのように地図を描いていました。理系の私が研究紹介で地図を使うことなど滅多にないので、「おいおい (ホーリー モーリー)、図を見てもさっぱりじゃないか!」と、英語とはあんまり関係ないところでも考えさせられるところがありました(そしておそらく、向こうの学生にも私の伝えたかったことはあまり伝わっていなかった)。


超域ならではの英語で学んだこと

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英語を話すのにためらいはないのか?どうやったら話せるようになるのか?等、この授業を通して学んだことや将来どのように生かせることができると思うか教えてください。

稲富:
 この授業を通して感じたことは、「英語は話さなければ身につかない」ということです。研究時には英語論文をよく読むので、自身が専門とする分野であれば文章読解には比較的自信がありました。しかし、同じ要領でいざ話そう!となると(たとえ自分の専門分野であっても?)「あうあうあう…」となってしまう自分がいました。
 国内の研究環境では、日本語があればなんとかなりますが、今後、国内外との共同研究や国際学会に参加するときには英語が必須となります。それも「論文が読める」などの偏った能力だけではだめで、英語を話せるようになって、はじめて相手の意図が理解でき、かつ自分の意図も発信できるようになります。そのため、自分が英語に不自由だとわかったこと、そして話す訓練を行えることなど、得たものがとても多い授業でした。同じプログラムを履修している超域生や、同学年の未来共生プログラムの履修生のなかには、「英語ができる」人が多い一方で、自分は「英語がしゃべれない」というこの現実には、正直なところかなりショックを受けました。しかし同時に「このままではいけない!」という危機感も抱き、もっと努力しよう、しゃべれるようになろう、という決心をすることができました。超域プログラムでの授業が始まって既に数か月、まだまだ未熟な英語力ですが、今後も絶え間なく精進しようと頑張っている今日この頃です。

高田:
 この英語の授業で学んだことは、英語の「エッセイ」を書くときのみならず、日本語のレポート作成でも役立っていますし、勿論英語論文の執筆も手助けしてくれています。たとえば、「はじめに」を書いて「本文」を書いて「結論」を書く、という構成はエッセイでも論文でも同じですしね。
 学部での英語の授業というと、院試を見据えてTOEICやTOEFLの対策に偏ってしまいがちですし、一年次にサマースクールでオーストラリアに語学留学した際もIELTSの対策に主眼が置かれていた授業もあったように思うのですが、毎週実施される超域の英語授業は、それらとは一味違う。博士号取得を目指す私たちが、どのような英語の能力が必要なのか、さらには、将来的にどういう風に英語を使うのか、ということまで想定されていて、非常に魅力的です。

Debbie先生:
 「アカデミック・イングリッシュ」の授業は学習者主体に進めており、履修生たちには、積極的に授業内のアクティビティやディスカッションへの参加を求めています。学生は教師や他の学生と共に授業内容について考え、評価し、分析せねばなりません。今年度の超域プログラムと未来共生プログラムの合同英語授業は、学問的背景が異なる学生たちが相互に影響し学び合う機会を得るという点において、超域の学生にとっても、未来共生の学生にとっても重要な意義を持つでしょう。


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