インタビュアー:13年度生 岩浅 達哉
インタビュイー:茂木 健一郎さん

 大阪大学 超域イノベーション博士プログラムのアクティビティを通して履修生と関わってきた方々に、本プログラムの魅力や思いを語って頂く企画、【超域パートナー】。  第3弾の今回は、脳科学、認知科学を中心に最先端を学ぶ、本年度の「超域メディア論」にて、講師を務めてくださったソニーコンピュータサイエンス研究所・脳科学者の茂木健一郎先生に、本プログラムの印象や履修生、学問の今後についてお話を伺いました。

茂木健一郎見出し01

インタビュア:
 始めに、なぜ超域に関わろうと思われたのでしょうか?

茂木さん
 きっかけとしては檜垣先生(超域プログラム担当教員)に誘われたからなんだけど、やっぱり今、大学は変わらなくちゃいけないって思っていて。東大でも領域横断的な取り組みはあるけど、本来、universityって総合的な学問をやる場所でしょ?領域を超える試みが必要だろうし、超域もそういう取り組みの一つとして興味がありますね。

インタビュア:
 超域生と話してみてどんな印象をお持ちになりましたか?

茂木さん
 印象的なのは授業中に履修生に何をやりたいか聞いたときに、典型的な日本の大学生とは違う進路をみんな考えているみたいだったから、それはすごい良いことだと思いました。看護師へのコンサル、国際機関での勤務、都市計画に携わるとか。普通の大学生に聞くと、業種が出てきたり、企業名が出てきたりするんだけど、それとは別に具体的な進路のイメージがあるのは面白いなって感じました。

インタビュア:
 今回超域で授業をするにあたって、いつも実施されている講義や講演を、超域向けにカスタマイズされたのですか?

茂木さん
 もちろん、もちろん。授業の内容、ボリュームも、目一杯詰め込んで、カスタマイズしてみました。僕は、大学は自分を鍛える場所というか、アスリートと同じような感じでやって欲しいと思っているんですけど、もっともっと激しく全力で自分を鍛えていってほしいね。今も激しいやついるけど。

茂木健一郎_超域授業

インタビュア:
 今後、具体的に履修生が磨くべき力ってなんでしょうか。

茂木さん
 英語力はもっと上げて欲しいな(笑)。英語力、クリティカルシンキング、システムやプログラムに関する感覚、あとは社会問題に対する批評的な視点を特に鍛えて欲しい。授業をしてみて、それを持っている人も多いように感じたけど、更に磨いて欲しいなって思いますね。


茂木健一郎_見出し02

インタビュア:
 なるほど。他に超域生や超域プログラムに関して思うところはありますか?

茂木さん
 阪大全体が超域みたいになっていかないといけないんじゃないかな?超域をコアとして、阪大全体にそういう変化をもたらしていくっていうか。いやぁ、正直なところ、ケンブリッジの入試がYouTubeにあがってたんだけど、ああいうのを見ると、もう勝てないなと思いますね。

インタビュア:
 どこが勝てないポイントなんでしょう?

茂木さん
茂木健一郎_img01
 やっぱり現代の学問って、最先端の情報が全部横に繋がらないといけないじゃないですか。それは全部英語で行われるんだよね。だから、ものすごいスピードで英語の世界を走れないといけなくて、世界の優れた総合大学ってそういう状況を前提にみんなが走っている。一方で、日本だとちょっと英語力が優れた人がいるとそれで良しとされてしまう傾向があるから。



インタビュア:
 たしかに英語がすらすら読めたりぺらぺら話せたりすると、すごいなーって思ってしまいます。

茂木さん
 本当はそこから勝負が始まるのにね。でも、日本の大学は勝てないなと思いながらも、じゃあ負けを認めて諦める訳にもいかないから、走り続けるしかないよね。超域のような環境に身を置くのは良いことだと思うけど、世界をみれば、そのような取り組みはみんな色んな所でやってる訳で。でも日本ではあまりそういうことをやる大学が今まで無かったってことなんでしょうね。

インタビュア:
 そうですね。スタンフォードのd.schoolのようなものもありますし、国内外で実施されている、他のプログラムと比べて、どこが違ってどこが超域の方が優れているのか僕達が理解した上で、周囲の人達へ示していく必要がありますね。

茂木さん
 いやぁ、頑張ってほしいなって思いますね。


茂木健一郎_見出し03

インタビュア:
 超域生を見て、他の大学生と違う点はありましたか?

茂木さん
 良い点は、さっきも少し言ったけれど、社会に対する問題意識を持っている、キャリアプランが明確にある、あとは国際性があるところだと思う。それをもっと続けていって欲しいな。人間ってほら、変化するときって全く新しいことをやらなくちゃいけないって思いがちなんだけど、そうではないんだよね。

インタビュア:
 そうなんですか。僕は変化と聞くと、習慣とか日頃から付き合う人とかを変えないといけないのかと思っていました。

茂木さん
 例えば、今まで英語の本を100ページ読んでいたところを120ページにすれば良いということかもしれない。つまり、自分がやっていることを、少し推し進めてみる、外国の友達を一人から二人にするとか。自分が今やっていることを始まりとして、それをもっと量的に変えていくことで質的な変化に繋がることもあると思うんだよね。

インタビュア:
 自分自身に変化をもたらすのは、0から新しいことをはじめることだけではないんですね。

茂木さん
 その点で日頃の研究とか専門性はやっぱり強化して欲しいね。僕、ハーバードで数学を研究していた知り合いがいるんだけど、数学の本読みながら眠りに落ちて、目が覚めたらまた読み始めて、それくらい数学漬けだった時期があったそうなんだよね。そういう風に、それぞれの分野の読み込みはして欲しいなって思いますね。そう考えると大学は意外と大変だけど、大変だから楽しいんだよ。(→続きはこちら)

bt_01 bt_02