インタビュアー:2012年度生 井上 裕毅、2014年度生 堀 啓子
インタビュイー:2014年度生 岡村 昂典、2014年度生 関屋 弥生

 学生視点から超域生にインタビューする超域人。  Vol. 15の超域人は【サントリー×阪大プロジェクト】のグループリーダーとして参加していた14年度生 工学研究科の岡村くんと同じく14年度生 文学研究科の関屋さんの二人に、3期生という視点からの新たな学びや気付きについて話を伺いました。3期生が、今後の本プログラムでの活動について、先輩たちが固めた道に沿って行くのか、独自に新たな道を開発していくのか…1期生や2期生とはまた違った挑戦がある彼らの姿を取材しました!

取材日 2014年8月5日

 

インタビュア:
3期生が超域に入って5ヶ月が経ちましたね。プログラムに入る前に期待していたことや、楽しみにしていた授業はありますか?

関屋
 期待していたことは、自分の知識の幅を広げることです。文理問わず様々な知識を広く浅く持っておく必要性というのは、超域に入る前からずっと感じていて。超域に入ればそれを得られると思っていました。たとえばおもちゃづくりの授業(参照:体験して学ぶデザインシンキング入門)ではグループ全体の知識を総動員して結果を残すことが求められています。グループ全体として機能していくためにも自分あるいはグループに欠けている視点が何なのか気づくことが出来るような力は身につけておきたいし、あるいは、専門外の事柄であっても、自分である程度の評価が下せるくらいの軸を持っておきたいんですよね。

インタビュア:
これまでの超域プログラムの授業を通して気付いたことを教えてください。

jin15_img02

岡村
 どの授業でも感じたことなんですけど、文系はしゃべるのがうまくて、いい意味で口がうまい。僕は理系なんですが、相手の話に聞き入ってしまって、自分の主張を伝えようにもどの点に違和感を覚えているのか、また、それをどう伝えれば良いのか戸惑う。話を丸めこまれないようにするのが大変。

関屋
 ほんま?うち文系やけど…そんなに話すの上手いかな?
 文系と理系の違いで気づいたのは、理系は、スライドの資料作りが上手いかな、と思います。プレゼンで使う図が綺麗。岡村くんが言う通り、文系には言葉だけで話をまとめるところもあると思う。文学研究科の私は、スライドを使わない発表では、原稿を見ながら話しを聞いているとその場では納得するけど、よくよく考えると腑に落ちないこともあったりする。それが、岡村くんがいう「口がうまい」ってことなのかな。理系は、プレゼンのスライドの他に、発表するときに読むためのレジュメとか原稿はないの?

岡村
 理系の発表ではスライドも発表用の原稿もあるよ。原稿は用意するけど、そのまま読むというよりはスライドを説明していく感じかな。

関屋
 私の所属する文学研究科では、発表する内容を文章に落とし込んで、発表内容をすべて文章化したレジュメを配って、その内容を読みあげるので、スライドとか準備しないんです。他の専門、たとえばスライドを使う文系の研究科や理系のひとたちを見てると、これでいいのかなと思うようになった。

インタビュア:
他の研究科の学生を見て、自分の専門に省みるという姿勢が良いですね!履修生の中には、カリキュラム以外の課外活動に活発に参加している学生も多いようですが、コースワークの負担はどうでしょうか?

岡村
 僕は研究科と超域の授業やブロジェクト以外では活動してないですけど、超域の授業だけでも忙しいです。実験系の研究なんですが、なかなか進まないのが正直なところです。

関屋
 私が過ごした期間の中で、6月は一番忙しかったです。研究科のテストが多い時期(7月)に超域の授業が少なく設定されているのは救いでした。

インタビュア:
授業、テスト、研究、課外活動とやることがたくさんで時間がいくらあっても足りないですよね…。
ところで、二人は超域の課外活動の一環として、サントリーとのプロジェクトに、グループリーダーとして参加していますよね。このプロジェクトは超域履修生の先輩達との初めての活動でもあるのですが、参加しようとした心構えや先輩方から学んだこと等を聞かせてください。

岡村
 僕は今まで自分に自信がなく、周りの人はいつもすごいと思っていて、自分よりも周りの人が良いアイデアを出してくれると思っていました。だから、このプロジェクトでも先輩たちと行動して何かを得られるだろうという受動的な理由で参加しようと思いました。また、超域で行われる授業外で初めての活動だったので、せっかく超域に入って普通の人が経験できないことができる機会なのだという理由もありました。でも突然、キックオフのときにグループリーダーに指名されて…僕はいつも受け身のスタンスなので、リーダーなんてできるかな、と思いました。そしてその中で、企画を進めることが、こんなにも難しいことなんだということに驚きました。学年混合のグループでワークをしていても、なかなか「これだ!」という良いアイデアが出ないんです。

インタビュア:
そんな時、岡村くんは革新的なアイデアは出せましたか?

岡村
 革新的なアイデアって出せるようになりたいと思ってもなかなか簡単には出てこなかったです。やはり、無難なアイデアに落ち着いてしまうというか…。

関屋
 なんでやろ?

岡村
 適当に無責任なアイデアを投げて終わりじゃないからだと思う。アイデアを拡散したあと収束する時に、自分たちがやるということと、サントリーの方々も関わっているということを考えると、だれでも簡単に思いつくアイデアを選んでしまうように思います。

インタビュア:
それだとイノベイティブとは言えないように思えるよね?例えば、最初は突拍子もないアイデアが出てたけど、議論を重ねていくと角が取れて受け入れられやすくなってしまう、そんな時はどうしていますか?

岡村
 どこがイノベイティブなのか外から見る目を持つことが必要だと思う。自分たちが主張したいものと、ウイスキーを買う人が求めているもの、実際に店頭に並べること等を考えると、論理性に整合が取れなくなって、結局は「無難」なアイデアが出来てしまう。自分たちが何を軸に主張したいのか、原点に帰れなくなっていたと思う。

 

関屋
 革新的すぎるのは人に伝えられなくて、みんな自信を持てなかったりする。だから、そんなアイデアを現実的にするためには論理性が大事。最初の段階で出ていた、学部ごとの特徴を書いた本をウイスキーと一緒に出す案は画期的だった。でも会議を重ねると無難なアイデアになっていった。ディスカッションしているうちに、いつしかアイデアを出したときの原点に帰れなくなっていたと思う。

インタビュア:
周りから見ても論理的であるアイデアは説得力があるものね。このプロジェクトをやってみて、今後の活動の広がりとか、成長したいと思ったことはありますか?

jin15_img04 岡村
 正直今がいっぱいいっぱいで、まだ今後どうしたいかということは出てこないです。超域に入った当初は、とにかく、研究だけじゃなくて、何かしら自分を変えたくて、嫌でも変わらざるをえない環境へ行きたいと思っていました。何を変えないといけないのかは、そのとき分からなかったけれど、このプロジェクトを通して気づきました。それは、先ほどの話でもあったように、受身の姿勢が抜けきらない部分です。僕は、能力が高い人、イニシアチブをとれる人についつい頼ってしまっている。たとえ至らない自分でも、主体的に何ができるかを考えて行動するようになることが、このサントリー企画で得なければならないことだと思います。どうすればこの状況を打開するか、超域にいる間中ずっと悩むと思いますけど…。
 あと、自分を変えるという意味で、今夏に語学研修でオーストラリアに行くのは期待しています(インタビューは8月収録)。でも、出発の日が近づいて、実際行くとなると重さを感じます。期待されているものに応えられているのか、期待されたアウトプットが出せているのかなど、研究科で満足行く結果が出せていないのもあって、そう思ってしまいます。

関屋
 自分ではわからないけど、プロジェクトの中で、何かしら成長していると信じたいですね。たとえば、具体的な話ではないのですが、理系と文系の考え方の違いは、なんとなくわかってきたと思う。学部の人と話すときは同じ前提情報があるから言わなくても分かることが多い、でも理系の人相手やとそれがちがう。それにアイデアの出し方も違う。例えば文学系の人は、アイデアを連想ゲームみたいに派生させる。理系はA点とB点の道筋を探すみたいな。

インタビュア:
それはどういう時に感じたの?

関屋
 授業ではあまり気づかなかったけど、サントリーのプロジェクトを通してアイデア出しの時とかにそう感じました。例えば、どうすれば大学生にウイスキーを手に取ってもらえるかというのを考えたときに、理系は「ウイスキーは強いお酒というイメージがある→でも、強いお酒には慣れていない大学生が多い→そうであれば、あまり度数の高くないウイスキーを作れば大学生も手に取りやすい」という風に、論理を数珠つなぎにして結論を導き出すことが多いように思います。一方で文系の人たちは「ウイスキーは強いお酒というイメージがある→ウイスキーは年上の男性が飲んでいるイメージがある→ウイスキーを飲んでいる人は大人というイメージがある」という風に、いくつかの事柄の共通項を見出すことで結論を導き出してくることが多いと感じました。

インタビュア:
サントリーのプロジェクトでは理系と文系混ざっている事はもちろん、先輩もいるから刺激をもらえてるようだね。
そういえば同期生(3期生)で刺激を受けた人はいる?

jin15_img03関屋
 私は鈴木星良さん(国際公共政策研究科)の発想力がすごいなと思う、分野も近いし。おもちゃ作りの時も劇形式の発表をしていて自分のスタイルを発揮していたと思う。他の授業でも星良が入っているグループはまとまりが良かった。

 

インタビュア:
鈴木さんから受けた刺激によって、関屋さんはどんな風に変わった?

関屋
 たとえば、おもちゃ作りの授業を例にすると、アイデア出しからまとめまで、全行程を全部自分ひとりでやれるのが一番いいと思ってたけど、それだとなかなか面白いアイデアは出てこない。人には得手不得手があって、私は発想するのが得意ではない。そんな時は、発想力がある人をグループに入れるだけでも十分なんじゃないかな、と思えるようになった。足りない能力を補ってくれる人をグループに入れて補完すると考えるようになりました。

インタビュア:
それができる環境があるのが超域のいいところだね。

岡村
 僕は補完されてばっかりだから、全員から刺激を受けてる。周りの人にはいろんないいところがある。論理を自分で構築していく人や、目的と現状からプロジェクトを進める人、相手の想いをちゃんと汲み取って形に出来る人、もやもやしたことを自分の言葉に出来る人...そんな人たちの中で、自分は補完されてばっかりいるなと感じた。

インタビュア:
岡村くんはちょっと自信がないのかな?それでは関屋さん、客観的に見て、岡村くんのいいところはどこだと思う?

jin15_img054

関屋
 お世辞じゃなくて、岡村くんの長所は、自分が展開した論理の筋道が通っていることと他の人の論理も受け入れてくれること。そういうのはすごく大事。自分の中で論理が出来上がりすぎている人は、他の考えを受け入れてくれないことがあるけど、岡村君はみんなから相談されることが実際に多いし、みんなにとって相談しやすい人。なるほどしか言わないときもあるけど。笑

岡村
 僕、もしかして、超域唯一のイエスマン?笑

インタビュア:
あと、僕が思う岡村くんの良いところは、ちゃんと考えて人を見ていること。そんな風にみんなのいいとこ言葉にできるのは、いつも考えていないとできないと思うよ。自分の見えてないところを周りが評価してくれて、補うんだと思うよ。

 

 今回超域人初となる超域3期生へのインタビュー。3期生は、超域に入る以前からの知り合いも多く、だからこそ打ち解け感があり、1・2期生とは違った個性が集まっているようだ。異分野の先輩や同期生から刺激を受け、自分にあるもの、足りないものに気づき、学んで成長していく過程が見られた。現状に悪戦苦闘しながらも必死に自分と向き合い、先輩の背中を見ながら、あたかも当然のごとく先輩のすぐ後ろを歩かないように、自分たちの道を模索している彼らの姿をみることができた。彼らの“超域”はまだ始まったばかりだ。今後の成長に期待したい。