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Texted BY: 工学研究科 ビジネスエンジニアリング専攻 2014年度生 立山 侑佐

 前半のレポートでは山並さんが海外研修を通して学んだ“海外で生活し活躍していくための条件”について報告したので、後半では私達が取り組んだ『興味のある現地NGO団体を選び、その団体へ3人1組となってインタビューを行い、インタビュー内容を発表する』というプロジェクトでの体験について紹介したい。  今年3年目となるモナシュ大学での語学研修(サマースクール)は超域プログラムが始動した当初からあるカリキュラムであるが、このプロジェクトは今回初めて導入されたものである。

 まず、インタビュー対象としてあげられたNGO団体であるが、私たちが訪問したオーストラリアのメルボルンを中心に活動しているNGOは日本に比べて多いといえる。彼らは、環境・がん患者・身障者・ホームレスなど社会の抱える多種多様な問題に対してアプローチをしている。このプロジェクトではいくつかの団体がインタビュー対象の候補として挙げられており、私はその中のMelbourne City Mission(以下MCM)というNGOを対象として選んだ。MCMでは、子どもへの教育・就労支援・老人介護など10の充実したサービスは、160年という長い歴史をもち、800人の従業員、300人のボランティアによって提供されている。 私は、自分もキャリア教育についてアプローチする団体で活動していた経験から、人材の育成に関心があった。またビジネスエンジニアリング専攻ということから非営利団体がどうやって長く発展し続けてきたのか、どういったマネジメントを行ってきたのかに興味があったことから、MCMをインタビュー対象として選定した。

以下、本プロジェクトを通して体験した ・MCMへのインタビュー ・履修生内でのプレゼンテーション について紹介したい。

MCMへのインタビュー

 MCMにてマネージャー職で働いているSteve氏に、主にボランティアや従業員の登用、彼らのキャリアについて1時間にわたってインタビューを行った。その中で特に印象に残っているのが、Steve氏が仰った、“Good career is helping people” というワンフレーズである。 sms2014_img06  このフレーズを聞いた時、私は少し違和感を覚えた。確かに理想的な考えだと思うのだが、私を含め多くの日本人にとっては “Helping people is good career” というフレーズの方がしっくりくる考え方なのではないかと感じたからである。主部と補語が入れ替わっただけであるが、私はここにオーストラリアと日本の大きな違いがあるのではないかと思った。  今でこそ利潤追求と社会貢献を両立するソーシャルビジネスやCSV(Creating Shared Value)という考えが普及しつつあるが、多くの日本人は社会貢献事業を仕事にするのは現実的ではないと考えているのではないだろうか。営利企業がCSRとして社会貢献活動を行うといったように、そもそも別のベクトルとして捉えているのである。

 この所謂日本式の捉え方とは逆に、Steve氏は社会貢献授業とビジネスは両立可能であると考えている。MCM自体はNGOなので利潤追求をしていないが、MCMの歴史と団体の規模から、多くのオーストラリア人にとっても“Good career is helping people”という考えが浸透しているのではないかと考えられる。その裏付けとして、在日オーストラリア大使館のHPによると、オーストラリア政府は様々なバックグラウンドの違いがあることを認識し尊重すること、そして、全国民が平等に機会を与えられ、団結して寛容な社会をつくっていくことを推進している。また、モナシュ大学の経営学を専門にしている教授にも話を伺ってみると、オーストラリアは日本と比べてソーシャルビジネスの数が多い傾向にあるということを仰っていた。こういった政府の意向や国民の意識が、日本とオーストラリアの考え方の違いに大きく起因しているのではないかと思う。

履修生内でのプレゼンテーション

次にプロジェクト最終日に行ったプレゼンについて紹介したい。

sms2014_img07  どこのグループもNGOのことが綿密に調査されており非常におもしろい内容を発表していたのだが、とりわけ惹かれたのは同じ超域履修生でマレーシアからの留学生であるレイさんのプレゼンの上手さである。彼女の発表が魅力的なのは、英語の堪能さだけでなく、発表中のジェスチャーの使い方にあると感じた。彼女は目の前に情景が浮かぶように、ジェスチャーを振る舞うである。

 当初私はこの語学研修を通して達成すべき目標を「英語を使って円滑なコミュニケーションをとれるようになる」と設定していたが、レイさんの発表を通して、『自分の持っている尺度・目指すべき到達点』の甘さ・ズレに気付かされた。

「どうすれば円滑なコミュニケーションをとることができるか?」

 この問いの答えとして、英語の堪能さはもちろん求められるが、むしろ表情やジェスチャーなどノンバーバルなコミュニケーションの方が重要であると私は思う。特に、英語をネイティブより上手く使うのは不可能であることを考えると、ノンバーバルなコミュニケーションでよりうまく良好な関係を構築するために、英語以外で「優位性」を発揮していく必要があるのではないだろうか。つい英語力ばかりに目がいきがちになるが、今回の発表を通じて英語力は「手段」として割り切り、むしろ英語以外のどのような点で「優位性」を発揮していくかを見定める必要性を学んだ。そして何より、英語を使う以上はより多くの人間と同じ土俵で戦わないといけない。「優位性」も日本人同士で評価されるレベルではなく、世界的に評価されるレベルで目標を設定しなければいけないと感じた。

 日本のような文化や価値観などの共有されたコンテクストが高い所謂「ハイコンテクスト文化」だと、相手に理解を委ね、伝える努力を怠ってしまうのではないかと私は思う。しかし、今回の海外実習での経験から、グローバルな社会で生きていくためには、共有されたコンテクストが少ないなかで、いかに良好な関係を構築していくかを考える必要があることに気が付いた。  後期の授業も始まり、再び英語を使わない授業・日本人が多い授業が中心となるが、常に目線は世界に据え、学んでいきたいと思う。

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