Texted by: 大阪大学 工学研究科 高田 一輝(超域 13年度生)

 工学研究科環境・エネルギー工学専攻M2、超域13年度生の高田です。今回は、超域生と他リーディングプログラム履修生がチームを組み、共に挑んだ”Next Visionary”というイベントについて、活動報告をしたいと思います。

 

未来を提言するコンペ

 初めに、”Next Visionary”とは何か、ということからご紹介いたしましょう。詳しくはこちらで見ていただければお分かりいただけるかと思うのですが、誤解を恐れず単純化しますと、「全国のリーディング大学院履修生が、『こんな未来にしたい』という未来像を提言するというアイディアコンペ」です。未来を語る時のテーマは、「未知のデバイス」、「Sustainability」、「社会的格差」、「Japan & Global」というふうに4つございまして、チームはどれか一つのテーマを意識した未来像を提案します。テーマごとに優勝チームを決め、さらに総合優勝チームを決するというものでした。


京大教員からの声―京大とタッグを組む

next_img01 昨年七月、京大のリーディング大学院である「思修館」の方々との交流会が開催された折に、当大学の教員よりこのアイディアコンペについて事前に示唆がありました(まだイベントのほとんど全貌が伏せられておりましたが)。十月に正式発表があったときは、「京大の院生とタッグを組んでエントリーしよう」という意欲が強く、阪大・京大の混成チームを複数つくりテーマに挑むことになりました。


阪大のリーディングプログラムともタッグ

 まずは、エントリーするテーマの選定をしました。規程では一つの大学からいくつチームを出してもいいので、個々人の自由は結構効いたのですが、3名以上でチームを作る必要があったので、志を同じくする仲間がいなければそこで試合終了となってしまいます。私は、環境・エネルギー工学専攻(英語ではDivision of Sustainable Energy and Environmental Engineering)所属ということもあり、「Sustainability」というテーマに惹かれていたのですが、ほかの超域生はどうも「未知のデバイス」や「社会的格差」というテーマに関心があったようで、私は別のリーディングプログラムからメンバーを見つけることになりました。結果的に私のチームは、京大から3名、同じ阪大の「ヒューマンウェア」というリーディングから2名、そして超域から私1名という構成になりました。


同系の専門家が集まれば、文殊の知恵

 こういった経緯もあり、ほぼ初対面の面子同士でうまくやっていけるのかと些か以上に不安だったのですが、意外と各自の専門性が噛み合って、意義ある議論ができたように思います。そのことに気づかされたのは、最初の顔合わせをした時です。私の専門は下水処理なのですが、京大側には浄水処理を専門とする方、環境経済学を専門とする方がいました。また、ヒューマンウェアには魚に詳しい方がいまして、こうした共通項から「水環境の未来」を中核に未来像を描いていこう、ということが瞬刻にして定まりました。前回私が筆を執らせていただいた「経済学的思考法」のレビューでは、「専門家がいないと会議が躍る」といった話を書かせていただきましたが、今回の場合は「同系の専門家が集まれば、文殊の知恵」ということを感じることができました。

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チームで心がけたこと

 私たちが実際にコンペで使ったスライドはこちらからご覧いただくことができます。正確には、最終発表で使用したスライドです。一次審査、二次審査を通過するごとにスライドを練り直す時間が与えられており、マイナーチェンジを繰り返しておりました。当チームが心がけたのは、次の二つです――「オリジナルのビジョンを考えること」と「現実に即した提案に落とし込むこと」。
next_img03  前者については、様々な領域の学生がいたおかげで、なかなかに多角的な議論ができたのではないかという印象でした。たとえば私は、「Sustainability」といえば「ハーマン・デイリーの3条件」が常套というふうに専攻で勉強していたこともあり、どうも人間中心で産業活動の持続可能性を議論していた節があったのですが、文系の方から「自然の権利」という法の概念の提示があり、自然循環システムの視点から地球の持続可能性を見てはどうか、と思い至るようになりました。こうしたことから、「人間と自然との望ましいかかわりあい方は何か」という論点を見出すことができ、一段深いレベルで「Sustainability」のビジョンを提示できたのではないかと思っております。

 しかしながら一方で、後者、具体的提案に落とし込むところが難航しました。事前準備では、たとえば私の研究室で取り組んでいた「植生浄化法」など、複数の事例を参考にして頭を捻ってみたのですが、小気味良い名案は浮かばず、そのまま大会当日を迎えることとなってしまいました。コンペ当日の一次審査では、予想通り、企業の方からこの点のご指摘がありました。そのうえで建設的なご提案までいただき(早速二次発表用に反映させていただきました)、実践的活動を日々なされている方の偉大さに脱帽したのを覚えております。私たちのチームはテーマ別で優勝、総合でも準優勝という栄誉を冠することができましたが、この栄冠の半分は、こうしたご助言あってのことだと考えております。

 このように、他大学のリーディング履修生や実社会で活躍されている方々と触れ合う貴重な機会である”Next Visionary”が、今後もよき場であり続けますよう願いつつ、擱筆させていただきます。

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