TEXT BY 金谷 優樹
研究科:工学研究科
専攻:精密科学・応用物理学専攻
専門分野:太陽電池

 このフィールドスタディで自分の人生のクオリティは間違いなく上がったと思う。そのくらい良い経験ができ、世界の広さを実感させてくれる研修であった。ただ研修というと自分が感じたことをうまく表現できていないように思う。そのような決められた枠組みで何かを学んだというよりは、一週間のホームステイの間、本当に島の人々と同じ暮らしをして自分の五感で色々なことを感じ、考える機会を与えてくれるものであった。そういう意味では、大学の研修というよりはクック諸島という南の島でウルルン滞在記のような経験をしてきたと言った方が伝わるように思う。

 クック諸島、とくにホームステイをしたマンガイア島は自分が知っている世界とは全く異なる場所であり、そのような場所で実際に生活してみることは、驚きの連続であった。例えば、私のホームステイ先は漁師さんだったので、朝5時真っ暗の中、木製のカヌーで沖に出てマグロを釣りに行った。釣ったマグロは木の棒で叩き気絶させ、私の足元に投げ込まれた。ものの5分もすると、マグロの血で足下は血の海になり、10分後にはマグロが目を覚まし、尾ビレを動かす度にマグロに血を浴びせられた。浜に戻るとその場で15歳のホストブラザーが浅瀬でマグロを華麗に捌き、私もその手伝いをした。このような生活をしていると衝撃が大きすぎて、マグロ釣りの際も真っ暗な海の上に浮かぶカヌーに座りながらもはや自分が何者で今何をしているのかよくわからなくなったのだが、人間の慣れとはすごいものですぐに慣れていった。

 島での生活をしていると、島の子供たちができることでさえ自分にはできないことがたくさんあって、色々なことができる島の人達は自分とは遠く離れた存在のように感じてしまうことがあった。ただ、実際に生活をして自分にもできることが増えてくると、そう思わなくなっていった。島での生活をし、世界での自分の立ち位置など考えさせられる機会も多かったが、日本での生活とは180°異なる生活を経験することで逆に、人間ってやはり世界のどこでも同じだと実感でき、それは自分にとっては大きな収穫であった。ただ差や違いのように感じられることは、その土地で生きてきた慣れの問題であるように思う。今回の研修では非常に貴重な経験ができ、自分の視野が大いに広くなった。日本で生活していても、今の気持ちを忘れないようにしたい。