TEXT BY 金谷 優樹
研究科:工学研究科
専攻:精密科学・応用物理学専攻
専門分野:太陽電池

プレインターン先に欧州を選んだ大きな理由は、国連やOECDなどの国際機関があることであった。このように書くと国際機関へのキャリアを考えている人のように思われるかもしれないが、全くそんなことはなくむしろ国際機関では働きたくなかった。正直に言って国連という言葉は中学生のときに社会の教科書で見ただけの存在であり、全く身近でなかったので、働きたくなかったというよりはキャリアとして考えたこともなかったのだ。しかし、超域1期生の中にはそのような国際機関で活躍したいという人がいる。自分とは全く違う視点を持った人が身近にいて、そのような人たちに刺激を受け、何も知らないままキャリアを決めるのはおかしいと思った。だから自分の知らない世界や価値観に触れるために国連にも行ってみたいとあえて欧州を選んだ。この時点でこのプレインターンの目的は、先入観を持たずに産学官をバランスよく訪問し、自分の今後のキャリアについて考える、ということになった。

欧州滞在中に、国際機関としては国連訪問やOECD、大学などの研究機関としてはフランスで最も有名な大学の一つで、日産のカルロス・ゴーンの出身校としても知られるÉcole Polytechnique大学、民間企業としては欧州進出している日系企業や現地の企業で働いておられる方を訪問して様々なことを見聞きした。

実はこのプレインターンシップ全てが順調というわけではなく、当初訪問したかった自分の研究分野で世界的に有名な研究機関へのアポイントメントの交渉が途中でダメになり出発直前でバタバタしたり、慣れない旅の疲れもあってかパリ滞在中に酷い食中毒になり人生最大のしんどさを味わいながら病院へ行き、ホテルで寝込んだりしたこともあった。ただ結果として、このプレインターンシップは自分にとって実りのあるものであった。まず、今まで全く興味がなく考えたことがなかったフィールドで活躍する人たちに会うことは自分のキャリアを考える上で非常に意味のあるものになった。さらに、私がお会いした人たちはグローバルに活動されている方、年次が高く海外経験豊富で重要な役職に就いている方ばかりで、日本では会うことができないような(大企業の欧州拠点の代表取締役など)方も多く、その豊富な経験から仕事だけでなく人生観なども学ぶことが大いにあった。

あれほどの長い間、自分のキャリアについて延々と考えるようなことは、このプレインターンシップに行かなければなかったと思う。そういう意味で本当に貴重な経験であったと思うし、海外という慣れない土地で日々起こる問題への対応力も格段に上がった。ここで得たことを活かすためにこれからも精進していきたい。