TEXT BY 藤田 朋美
研究科:理学研究科
専攻:物理学専攻
専門分野:原子核物理

 全く未知の挑戦。
 日本国内ですら一人で飛行機に乗ったことのない私にとって2週間近く、一人でヨーロッパを旅するプレ・インターンシップは想像できないほど遠い話で計画を立てるのにも苦労しました。
 結局、私が選んだプレ・インターンシップのテーマは「研究」と「教育」です。専門が物理学の実験系であるために、日本以外の研究者や学生に会うことも多い。しかし、私は実験中という彼らの「非日常」しか知らない。彼らがどのような環境でどのような日常を過ごしているのか知ることは、彼らと一緒に実験をするときに彼らの考えを「想像」する助けになるのではないかと思ったのです。そういった想像力は「グループ」「チーム」で実験する私にとって必要なのではないでしょうか。またもともと「教育」に興味があったため、「日本とは全く違う」と言われているヨーロッパの教育がどのようなものであるか知りたいとも思いました。そこで研究者の方や友人にアポイントメントを取り、最終的には自分に近い分野だけでなく、少しだけ違う分野や全く違う文系の学生に会うことに決めたのです。
 スイス、フランス、ドイツ、イングランド、スコットランド…多くの国、都市、大学を巡り、多くの人に出会い、学んだことのすべてをここで言い尽くすことはできません。その中には違うと感じたことも同じだと感じた部分も同じくらいたくさんありました。
 最も考えさせられたことは「Ph.D.の持つ意味」です。Ph.D.をとりたいというと「(日本では)仕事に就くことができない」と言われたことがあります。「世界ではそうではない」という声や「日本でもPh.D.の役割を考え直すべきだ」という声を聞いたこともあります。しかし、この場合の「世界」とはどこのことでしょうか。今まで私は漠然と「他の国ではそうなのか」と思っていました。しかし、私の研究分野の例をとると、日本とフランスではPh.D.の持つ意味が全く異なると感じたのです。日本の学生は学部4回生から研究室に配属され、研究室の一員として「研究」に参加します。特に修士の学生からはその傾向が強くなるでしょう。一方、フランスは異なりました。修士の学生までは研究室に属せず、学部生と同様に授業を受講し、Ph.Dの学生のみ研究室の一員として実験に参加できる。それを聞いたとき、日本で学部3回生と4回生または学部生と修士の間にあるギャップはフランスでは修士とPh.D.の間にあるのではないか、と感じました。だからこそ、フランスではPh.D.まで終了していることが大きな意味を持つのだと。そう考えると日本とフランス、そのPh.D.の意味は大きく異なります。そうなると、同じ言葉だからといってPh.D.を同じものだと考えることはできません。フランスでPh.D.が重要視されるのと同じ理由から日本で重要視されることはないでしょう。だからこそ、私のようにPh.D.に残ることを選んだ人間はPh.D.の間に何を学び、社会に出たときに何ができるのか、考えていかなければならない。そう思いました。
 最後にプレ・インターン中に出会ったすべての人、迷子になっていたときに教えてくれた方々、研究室に迎え入れてくれた研究者、学生の方々、いきなり声をかけたにもかかわらず研究や大学教育について語り合ってくれたドイツの学生さん、一緒に授業まで受けさせてくれた友人、優しく道や電車を教えてくれた各駅のインフォメーションセンターの方々、そして、このような機会をあたえてくださったにも関わらず、準備段階からたくさんご迷惑をおかけしてしまいました超域イノベーションの先生方、本当にありがとうございました。たくさんの方々に助けられ、支えられ、無事にプレ・インターンシップにいくことができました。ここで学んだことを次につなげられるよう、これから頑張って行きたいと思います。