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■フィールドスタディ総括担当
  Texted BY 医学系研究科 公衆衛生学 博士課程一年 陣内 裕成

sIMGP3742  私たちは海外フィールドスタディで何を学習するのだろうか。超域には海外活動の機会としてフィールドスタディとプレインターンシップがある。まず両者に共通する最大の魅力は、フィールドという媒体を通して、それまでの自己の認識や表現力の限界を超えることにあるだろう。しかしそれについては今回の恵まれた引率教員によって、超域生各人の関心を尊重した自由度の高い学習ができたと感じている。すなわち長期間のフィールドワークおよび国際機関でのアカデミックな活動経歴のある三田貴氏および上田晶子氏に加え、スリランカのフィールドワーカとして 50年以上の活動経歴をもつ、元龍谷大学教授の中村尚司氏(現 JIPPO専務理事)が引率教員であったことの恩恵が大きく、学生一同深く感謝している。

  興味深いのは「フィールドで見つけ出す課題は自分の生き方に関連する。自分の生き方と関連しない課題は、結局のところ解決することは難しい。そのため、課題を発見するためには自分がこれまで何に関心をもってきたか、どんな生き方をしてきたかをよく知る必要がある」という、中村氏の助言である。

  超域は多分野の学生が参加しているため、事前に特定の課題を設定してしまうことには学習の自由度を不必要に制限するリスクがある。そのため事前計画の段階で内容を詰めすぎることが最善の成果を生みだすとは限らず、後半は自由度の高い活動計画とし各人の関心に合わせた計画を立てられやすいようにすることは必要だろう。しかしさらに超域のコンセプトを考慮するならば、各専門知識を合理的に結びつけ、社会課題の問題を具体的に分析し、解決策を講じるところまで踏み込むことも重要で、それはつまり今後は限られた期間の中でも、社会課題の問題分析または解決までのプロセスを辿るように組み替えていく必要性も感じた。

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■コロンボ担当
  Texted BY 工学研究科 電気電子情報工学専攻 修士一年 増田 壮志

  スリランカ到着後,私達が最初に訪れたのはかつての首都コロンボであった。コロンボ大学を訪問しJayatilake 教授から、スリランカの地理的特徴、降雨状況による農地・灌漑設備の発展に農業生産物への化学肥料の導入の問題、教育制度、高齢化等の社会構造の問題、スリランカでのカースト制度、女性の社会進出まで、かなり汎い範囲についてお聞きした。
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  次にコロンボ国立博物館を見学した。現地の伝統的な建物というよりも欧米的な外観、内装であった。仏教国であったため、仏像が多く、また、インドの影響を受けた彫像も多く展示されていた。植民地時代のものでは、ポルトガル時代の港・砦の遺跡の一部、最後の王様の玉座などが展示されていた。これらの展示からスリランカは、かなり昔の時代からシンハラ人とタミル人が共存し今日まで彼らそれぞれの特徴を守り続けているというのだと印象を受けた。さらに、植民地支配を経た後に彼らの生活様式が大きく変化したことも確認することができたが、現在に至るまで彼らの思想・信仰が保たれているということを考えると、欧州各国による支配は、労働力としてスリランカの人々を酷使することはあったが、彼らに対して欧州的な思想や宗教を強制せずに統治の材料の一つとしてそれらを意図的に残していたのではないかと考えた。

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  その後はコロンボの市内視察であった。果物や精肉、魚等の生鮮食品を取り扱っている市場と、市内のショッピングモールを訪れた。魚や精肉店の衛生状態は良いと言えない市場と、最新のスマートフォンが陳列された携帯電話ショップがある市内で、同じ国の同じ地域にそういった全く異なる性格の店舗が有り驚いた。

■ホームスティ担当
  Texted BY 工学研究科 マテリアル生産科学専攻 修士一年 岩浅 達哉

  私たちはコロンボからコロンボ郊外の都市モラトゥワに移動し、ホームスティした。ホームスティは現地各家庭に一人ずつ割り振られ、直接文化に触れることができ、大変有意義なものであった。私がホームスティさせていただいた家庭は、スリランカの中流ぐらいの家庭であった。元NPO マネージャーであるホストマザー、とその息子さん二人、その奥さんと子供一人の5人で暮らしていた。ホームスティ中、夕飯の準備を手伝わせていただいた。スリランカ独特のさまざまな香辛料の入ったカレーや野菜たっぷりのお粥、ビーフンのようなライスヌードルなど、おいしいスリランカの家庭料理家庭料理がどのように作られているかこの目で見ることができた。

  料理を手伝っていて気づいたことはほとんど自分たちで調味料を作っていること、sIMGP3560新鮮な野菜を使っていること、料理に時間をかけているということである。この三つはおいしい料理を作る基本かもしれないが、日本では少しずつ難しくなってきている。例えば、日本ではCookDo などの合わせ調味料やインスタント麺など手早く調理できるがあるが、スリランカでは調味料から料理を作っており、どの料理が辛くて、どの料理が塩辛いかが料理を手伝うことによってよく分かった。また、日本のように形や大きさが不自然に揃った野菜を使うのではなく、近くで取ってきた様々な形をした草や野菜を使っていることが印象的であった。日本では過ごすことのできない四日間を過ごすことができた。

■ホームスティ担当
  Texted BY 理学研究科 化学専攻 修士一年 山脇 竹生

  積極的に情報を集め、分析した事前学習とは異なり、フィールドスタディではあらゆる情報が無秩序に流れてきた。モラトゥワに着くと超域生がそれぞれのホームステイ先に移動した。車での移動中でさえ未舗装の道路が車の揺れとして伝わり、ゴミが堆積された川の臭いが風と共に漂い、遠くで流れている御経が聞こえた。ただ現地に身を置くだけでも多くのことが分かったが、今回は「コミュニティーの規模」という切り口で、ホームステイを経て調査した内容をまとめる。

  sIMGP3732ホームステイでは日本語が通じないのはもちろん、英語も通じなかった。困っていると二つ隣の家から子供がやってきて通訳をしてくれた。どうやら夕飯は隣の家で一緒に食べるらしい。その後、子供と一緒にクリケットで遊んでいると向かいの家のおじさんと近くのジムの管理人がやってきて一緒に参加した。日本で見られるような、家族と家族の分け目のようなものはなく、この村一帯の人たちがひとつの家族のようなコミュニティーを形成した。それはホームマザーの職場である寺院でも見られた。週2 回ある寺院での儀式補助をしているのだが、その寺院には村の女性、子供が集まるという。日本だと職、趣味、学校や年齢が同じ人で集まることが多いと思うが、ここでは村という地域の区切りで人が集まっていた。まとめると、家族間の区切りがあまりみられず、地域一体となって活動しており、コミュニティー規模は日本より大きいと感じた。