FPGA-CAFÉ / FabLab つくば にて 相部範之氏とプロジェクトメンバー

公共政策研究科 佐々木周作
理学研究科 藤田朋美
情報科学研究科 丹羽佑介
工学研究科 武居弘泰
人間科学研究科 松村悠子

 阪大吹田キャンパスの一角にわれわれプログラム履修生に利用可能な「実習室」と呼ばれる部屋がある。そこには3Dプリンター、レーザーカッターなどの工作機器が設置されており、「これを作りたい」という情熱とアイデア、CADやイラストレーターに関する知識があれば比較的容易にモノづくりすることが可能だ。平成24年度後期には「デジタルなモノづくりをしてみよう」という講義が開講され、その登録者を中心に講義の時間外も足しげく実習室に通うようになったことが、本プロジェクトのそもそもの発端である。

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■実習室とは??

 本プログラム用のデジタルな工作機器を備えた部屋。モノづくり全体のプロセスに対する深い理解を文理問わず持てるようになることを目的に、木材や初心者でも簡単に扱えるマイコンボードを用い恊働して作業を進める講義が開講されている。

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 時期を同じくして、「ファブラボ」という言葉が世間で多く聞かれるようになった。市民に対して広く開かれたその工房は、我々の実習室と同じく3Dプリンター、レーザーカッターなどのデジタルな工作機器が備えられており、普段はモノづくりに縁遠い人たちが通い、様々なアイデアが交じり合いながら革新的なモノが生まれているという。設置された工作機器の共通点、市民が参加して互いの専門領域を超えながらモノづくりを行うという超域イノベーションとのコンセプトとの共通点から、ファブラボに対して強く共感を持つようになった。

■ファブラボとは??

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 工作技術のデジタル化が進み専門家と非専門家の境界が薄れたことを背景に、市民にもモノづくりが可能な形で開放された工房。世界中に50カ所以上あり、日本には鎌倉、筑波、渋谷、大阪市北加賀屋に設置されている。

多様な人材が入り交じったモノづくり

 一方で、クリス・アンダーソンの『MAKERS』をはじめとした関連書籍を読み進める内に、ファブラボに対して単純な疑問も抱くようになる。多様な人材が入り交じったモノづくりは簡単に実現されるものなのだろうか。というのも、先に挙げた実習室における演習で、研究科を横断してモノづくりを行うことの困難を感じ始めていたからだ。

この時、佐々木周作は…

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 どんなモノを作ろうか、というアイデア出しには積極的に関与できるのに、いざ作業に入ると手が止まり、理系メンバーの手に委ねることが多かったです。途中で問題が生じても、具体的に何が問題か理解できずに傍観するだけ、という歯痒い思いをしました。モノづくりを通したコミュニケーションでは、全員が実際にある程度手を動かせることが大事だと感じます。

 アイデアは交換できても、実際のモノづくりの段階になると作業の分担さえ難しい。また使用方法が簡単といっても、様々な知識、技術の不足から出来上がりは理想と異なるものになっている。普段のディスカッションを中心とした授業では、互いの専門性の違いを意識しながら各自の意見を出し合い共通見解を達成しえているように感じていた反面、成果物がモノに変わった時の無力感は、そもそも多様な人材が交じり合って作業をすることの方が良いのだろうか、という疑問を想起させるほどのものがあった。

ファブラボでは
どのようにモノづくりが行われているのだろうか。

 書籍にはファブラボの成功話や将来への可能性が綴られているが、実際の運営にはきっと隠れた苦労があるに違いない。利用者の知識に差があれば、機器の管理にも工夫が必要なはずだ。モノづくりに縁遠かった人が頻繁に利用しているとするのなら、どのように知って、どのようなところが魅力で通っているのだろうか。我々の実習室は、結局のところモノづくりに興味を持っている者だけが通っているように見える。
 これはもう現地に行って、直接見聞きして学んでくるしかないだろう。そのような背景から調査プロジェクトを立ち上げて、国内のファブラボを視察しようということになった。参加したメンバーは、工学・情報科学・理学に加え、人間科学・国際公共政策とそれこそ多様な専門領域に跨がっている。プロジェクトの進め方、現地の様子、感想などの詳細は他メンバーのパートに委ねるが、本プロジェクトに参加したことで、今後も本プログラムで開講されるモノづくり関連の講義により積極的な気持ちで参加できるような気がしている。機会を頂いたことに、改めて感謝の意を表したい。

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