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超域生になるということ 超域を支える人たち

 選抜特集ページもこれが最後の更新です。いよいよ出願にむけて、いろいろな準備が進んでいることだと思います。
 さて、第2回までの企画では、あくまでも超域生どうしでの内容でしたが、ここでは、一歩引いた視点で超域生、並びに本プログラムについて考えていきたいと思います。そこで、超域イノベーション博士課程プログラムの特任教員の先生と事務職員の方々に、超域生並びに本プログラムについて、普段から“どのように感じておられるか”、事前にアンケートを実施し、その回答をもとに作成いたしました。
 超域生と特任教員、事務職員の方々とは関係性が強く、選抜試験の時から私たちがどのような個性、趣向を持っているのかをよく観察されています。じつは、スタッフである教職員の方の声を踏まえて記事を書く、というのは「チョウイキジジョウ」でも初の試みです!
 今回、特任教員9名、事務職員8名から回答をいただきました。お忙しい中、アンケートにお答え頂き誠にありがとうございました。

特任教員、事務職員についてそれぞれの業務と関わり

 当然のことですが、教職員ともに超域プログラムでの授業、活動を通して、個々の業務の中で、超域履修生たちと関わりを持っています。それらは、一般的な座学の講義のような授業にとどまらず、かなり多くの点で、超域生を支援していただいています。学生との関わりについては、日頃の超域生に対する感想が垣間見ることができました。
 まずは、私たち超域生も普段しらない、特任教員、事務職員の方々の、それぞれの業務の内容を尋ねました。ここではすべて紹介できませんが、軽く説明しておきます。
特任教員
 わかりやすく言うと「大学の先生」です。プログラム運営にかかわっておられます。いろいろな分野の履修生がいることは超域の特徴ですが、教員の専門分野も多様です。たとえば、先生の中には、文化人類学や発達心理学を専門とする先生もいらっしゃって、理系の私のような人間が接する機会のない先生が多く、思考経路やそれぞれの学問で培われる能力の違いについていつも新鮮な話、講義をしてくださいます。
 また超域プログラムのカリキュラム(コースワーク)の作成、進級(QE、Pre-QE・進級審査)での準備や運営、チューター面談(院生が研究科での生活、研究の進捗などについての面談)の仕事も担っておられます。普段、どのように学生と関わりがあるのかを聞いてみました。

「授業を通じての関わりが一番多く、その他は廊下や教員室等で個人的に学生と話をするくらいです。たいていは当たり障りのない会話が多いように思います(それで良いと思っています)。学生の研究科での活動に関心があるので、そう言ったことをこちらから聞くこともあります。(中略)リサーチプロポーサル(競争的資金獲得のための申請書等)についてコメントを返したりするときに、関心の一端を知ることができるので楽しいです。」

「ときどき、長期の海外での活動の相談を受けることもあります。」

「(授業関係の合宿や、その他の研修で)多くの時間を学生と共有し、真面目なことからくだらないことまで一緒になって話した。そこから学生のパーソナリティーが見えてくることもあった。」

事務職員
 事務職員の方の業務も多岐に渡っています。大学・学部を支えてくださる事務職員さんの仕事も多様ですが、超域プログラムで特徴的であるのは、奨励金、独創的な教育的活動研究経費を含めたお金にまつわる事務手続きが多くあることです。学生一人ずつの事情に合わせて、大学のルールに基づきながら、すべてのサポートをしてくださっています。
 また、海外フィールド・スタディ、本ページの第1回目の企画で話に出た、海外プレ・インターンシップでの出張費の管理、実施前後・実施中の事務的サポートなどもあり、その他に航空券、宿泊施設の手配なども業務として含まれております。もちろん、授業カリキュラム並びに授業準備の補佐、事務的手続きなどもあります。私たちが見ているシラバスのとりまとめや、レジメ・講義室の準備、外部の先生方をゲストスピーカーでお呼びするときの手配や対応がこれに当たります。
 さらに、これから学部生皆さんが受験される選抜試験でもサポートしてくださいます。試験会場の手配や出願書類の処理などです。また、超域プログラムの修了要件の単位等の検討の事務手続きもあるのです。

「直接的な関わりは少ないですが、総合的な視点でフォローしています。」

「各種の手続きでの書類提出等のやり取りや、関連事項についてご相談いただくなど。(奨励金の受給や独創的の経費の応募と執行に関するご相談がメインです。)」

超域生について

 さて、教職員それぞれのお仕事を知ったところで、つづいて超域生について、こんな質問をしてみました。

質問1:「超域生と他の大学院生との間に印象の違いはありますか」

 回答は、以下のようなグラフとなりました。
 授業で関わることが多く、また研究者でもある特任教員のほうが、超域生と他の大学院生との印象の違いを強く持っていると言えます。一方、授業を受けている院生としてではなく、一個人の人間として接する機会の多い事務職員の方からは、一般的な大学院生と「だいたい同じ・同じ」という印象を持たれる傾向が強くなります。しかし、2つのグラフを通して印象の違いが有るという回答がどちらも多数意見でした。この回答に対する理由も同時に質問しました。いくつか抜粋して挙げてみます。
特任教員で「かなり異なる・異なる」と回答された理由

「よくしゃべるし、自分の主張を曲げないことを表に出す人が多い印象。」

「物怖じせずに発言する傾向がある。・・・学生の性向の幅が広く、また性向の異なる学生同士が仲良くしている。今まで見たどこよりも多様性が高い。

「(大学院に)入学時点では、柔軟性や人生における経験においては、他の大学院生と比べるとむしろ足りていないかもしれない。しかしM2くらいまでに大きく成長するので、それを見るのは実に楽しい。」

「By far, many students in the CBI Program have shown significant communicative skills, a lack of reserve when expressing opinion in English, and, perhaps most importantly, a comfortable acceptance of criticism. That has set them apart.」

事務職員で「かなり異なる・異なる」と回答された理由

「自分の意見を持っていて、積極的に意見が言えたり、議論してぶつかることに抵抗がない点。」

「他のリーディングプログラム履修生や大学院生とグループを組んでディスカッションをするとき、良い意味で目立っているような気がします。」

「一般の大学院生と比べ社会人との関わりが多い為、社会的なマナーを守った社交性を身に付けていてるように感じる。他人に気を配るのが上手な学生が多い。」

 どこが違うのか?という主な理由としては、自分の意見をはっきりと表現する「コミュニケーション能力が高い人間が多い」ということで共通しているといえるでしょう。一方、「だいたい同じ・同じ」という回答の理由これは特任教員、事務職員ともに回答に関しては、「極端には違わない」という消極的な理由の回答のみでした。私の質問が悪かったのかもしれません。
 以上のように、超域生は他の学生よりも意見をはっきりと述べる、活発に自分を表現出来る人間が多いというのが、学生から一歩引いた教職員共通の意見のようです。これは私も日頃から感じています。その理由として、普段から自分の専門とは全く異なる人間の中にいるため、人にしっかり意見を理解してもらうために説明する機会が多いからではないかと思います。

超域生にもとめること

 次はこんな質問をしてみました。

質問2:「様々な個性を持った学生が多く所属していますが、彼ら彼女らにあえて求めるとしたら、貴方はどのような人物になって欲しいと思いますか。」

 これには様々な回答が得られました。全て掲載したいのですが、量が多くなってしまいますので、ここでは特に、私にとって印象の強かったものを紹介します(順不同)。

「奨励金をもらっているということは、『仕事』同様にこのプログラムに参加し『納税者』の大切なお金をいただいているのです。その点をさらに自覚し、学修を深められる人物になってほしい。」

「将来、どのような形でも、このユニークな経験と専門知識を社会に還元していってほしい。」

「関西の外、国外でものびのびと動きまわれる人物となってほしい。」

「教員の目の色を伺うような学生はつまらない。自分が本当にやりたい・やるべきことだと心から思うことを必死になってやれるひとになってほしい。」

「Education is education, and in the sense that a graduate education represents a significant accumulation of knowledge and experience, doctoral-degree holders are invaluable human resources to any society that values progress and a decent quality of life. 」

「社会経済を牽引するリーダーになってほしい。」

「信頼される人になってほしい。」

 超域生への期待から、我々への課題として、それぞれの専門研究からどのように一社会人として、いま学んでいることを世間に還元することができるのかといったことが見えてきます。国立大学に通い、さらに経済的な支援を受けている超域生には、社会との間で責任がついてくることも自覚することが必要なのでしょう。
 大学院で、専門的な研究を行うこと、とはどういったことでしょうか。私の意見(意見は常に個人的なものです)は、学問領域または一般の人々にとって、それがゆくゆくは大きな意味を持つということです。私は物性理論と量子シミュレーションの研究室に属しています。そこでは、日常的に取り扱うテーマはどうしても数学的な問題に偏りがちになってしまうこともあります。その時に、実験を行っている研究者から、その問題に取り組むモチベーションは何かと聞かれることがあります。私自身としては、その問題に取り組んでいる時点で知的好奇心は満たされているので、先のような疑問を目の当たりにすると、言葉に窮してしまいます。
 しかし、それではダメなのです。一介の大学院生が行っている研究と言えど、理想をいえばいろんな人に、少なくとも近い領域の人間には自身の研究に対して、理解してもらえるよう、伝えていかなければなりません。研究に対するモチベーション、ここでは“なぜそのテーマについて研究するのか”といった問いは院生とて、そして研究者として成長しようとする者にはとても重要なことです。独りよがりになってはいけません。研究の成果が得られることで、どのような効果があるのか、誰が喜ぶのか、それがわかることで何が嬉しいのか(物理学の分野ではよくこのように表現します)ということに具体的な道筋が必要でしょう。偉そうに書いてしまいましたが、研究を進める上で私が強く感じていることです。

超域イノベーション博士課程プログラムについて

質問3:「博士号を持つ人間は社会のリーダーとして、どれくらい世間一般に必要とされているでしょうか。あなたのご意見をお聞かせください。」

 私は、選抜が終わり、超域で4月から学び、活動するようになって、この問いの回答が得られませんでした。そもそもこの問題設定は良い問いではありません。なぜならば、「博士号を取ること」と「リーダーになること」が、社会的要請と完全にマッチしていないからです。もちろん、リーダーとしてその分野、業界を牽引する人間は必要でしょう。しかし、そのような人物をデザインできるかはまだまだ未知数です。“まだ答えは出ていないが、専門性を持ち、リーダーとしての素養を伸ばした人間がどのように活躍していくか”という問題提起への、超域生は1つのプロトタイプです。少し脱線しましたが、超域生に投げかけられる問いはこのように、複合的な問題を抱えていることが多々あります。実際、このような問題が現に起こっています。それらは絡み合って、問いを分割して個々の問題に落とし込むことがなかなかできません。こっちを立てればあっちが立たないといった感じでしょうか。今回はあえてそのようなプログラムで働く方々に問うてみました。
 ここでは、あえて回答を羅列させていただきます(一部編集あり)。この記事を読んでくださっている方も、一度考えていただければ嬉しいです。

 まず、考えられるのはこの質問に対する批判的な意見です。

「現在の『世間一般』で博士号の有無がリーダーの資質として問われることはほとんどないかもしれません。」

 次に世間の認識が低いだけで、今後に期待を寄せるもの。

「『専門のプロ』であり、かつ『リーダーのプロ』であるプログラム履修生が今後社会で活躍することで世間の認識が変化するのではないだろうか。」

 最後に、私の中の回答と似ているもの、気づかせてくれたものを、アンケートの回答をもとにまとめてみます。

「学術の世界では最低限の資格として必要である。それ以外の分野、例えば、企業、政府、自治体、NGO、国際機関などでも、海外では博士人材が多数活躍している。また、トップに近い立場の側からはあまり必要とされておらず、むしろ現場に近い立場から必要とされている印象を受ける。
 行政と住民団体、行政と企業、企業間などでの交渉、合意形成プロセスにおいて双方の実務者が専門知識と科学的・論理的思考を備えていればスムーズかつ的外れでない議論が可能な場面は多いであろう。その時に、伝える力のある方はリーダーとして必要とされる。逆に『伝える力』を養っていない人間は必要とされず、逆に疎まれる傾向があるであろう。」

 私は常日頃から感じているのは、人は様々なパラメーター(媒介変数)を上げなければと、思っています。その中の一つとして、質問3のような問いかけに、どの程度、他人を納得させられる説明ができるかは重要だと思います。

まとめ

 さて、皆さんに少し引いた立場からの超域はどのように見えましたでしょうか。ここまでのように、超域プログラムの支援体制はかなり分厚いことがわかっていただけたのではないかと思います。しかしながら、自分に足りないスキル、教養を身につける。また単純に他者に対する理解を得る過程はかなり険しいです。
 現代の日本にとどまらず、グローバル化が進んだ世界は多くの問題を抱えていることは、みんなさんもよくご存知かと思います。しかし、それに対して新たな視点から解決策を投じていこうとすれば、我々はもっと多くのことを学ばなければなりません。もっと多くのスキルを身につけなければなりません。
 超域は、その可能性を目一杯拡げてくれるプログラムであると私は思っています。もちろん、大学院という場で、自身の専門研究をし、「専門力」を深めることは重要です。しかし、一つのテーマを突き詰めて研究を続けていく上で、長いスパンで成果を出し続けていこうとすれば、自分が心地よいだけの領域にとどまっているべきではないことは言わずものがなでしょう。また、前述したように、自覚と責任をもって研究し、そして社会の課題に挑むことを目標とするのなら、やはり専門分野だけに拘泥するわけにはいかないのではないでしょうか。専門研究と超域プログラムをどのように繋げるかは、皆さんが願書で取り組まれることでしょう。研究をしながら、超域でも活動をする。その「意味」を、どうかしっかりと考えてください。
 話が飛びましたが、それぞれが持つプロフェッショナルを磨いていき、学問的な興味、活動を活性化しようとすると複合的なスキルが求められます。もちろん、超域のような場所にわざわざ来なくても、自然と自らにそのような課題を与えて、成長される方もおられるでしょう。私自身、学部時代は教養や対人スキル、専門外の経済学、認知科学、生物学などの分野の知識は自分で本でも読んで身につければ良いと考えていましたが、それでは得られないものが、超域では、自分が予期していないものも含めて、時には抱えきれないくらい多くあります。それが面白そうと思えるなら、あなたは超域に向いていると言えるでしょう。一方で、私の経験では、受験する方すべてが、別に超域に向いている必要はないと思います。けれど、貴重な大学院生活で自分の専門外のことも含めて経験、理解を深めることは、翻ってきっとみなさんの専門研究に役に立つと思います。まだ分からないかもしれませんが、それは自らの専門とその他の分野との差異を感じて初めて気がつくでしょう。
 最後に、特任教員、事務職員の方々から受験生の皆さんにエールをいただきましたので、これで締めさせていただきます。

「お会いできるのを楽しみにしております!」

「地平線を広げられるかは自分次第、頑張って。」

「ここで培われる経験とネットワークは
かけがえのない大切なものになるはずです。」

「超域に入ると、専門研究だけの範囲だけで大学院生活を送るのとは別次元の機会を得ることができます。」

「I would say BE READY for A CHALLENGE ~ ENJOY THE RIDE AND NEW FUTURE AWAITS YOU !」

「人を育てるのは、人と環境だと思います。皆さんがプログラムを作っていくのだという意気込みで臨んでほしいと思います。」

「自分が今どんな人間か、何をしているのか、確かめたいなと思ったら、受験してみると良いかもしれません。確かめたいな、と思えるひとは、それだけ視野が広いひとだと思います。」

「汎用力育成を謳うカリキュラムやプログラムは多数あるが、そのなかでも『超域イノベーション博士課程プログラム』の教育内容は秀逸である。」

「専門分野での学びに加えて、超域の授業科目の履修や諸活動などに参加するのは時間的にも体力的にも相当大変なことだと思います。ですが、超域での学び、また同じ意思を持った仲間との出会いはかけがえのないものだと思います。」

「さまざまな活動から何を学びとれるかは、本人次第です。高いモチベーションを持った方の応募を期待します。」

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