Activity Reports超域履修生による、ユニークで挑戦的な活動のレポート。

授業レポート | 自主実践活動


原子力防災に貢献する超域人材となるために ~国際機関での超域的な自主実践活動~

2019/2/2

Text: 工学研究科 環境・エネルギー工学専攻 石井大翔

私は、オーストリア・ウイーンに本拠地を置く国連の専門機関International Atomic Energy Agency (IAEA:国際原子力機関)のIncident and Emergency Center (IEC)で6カ月間のインターンシップを行いました。IECは各国の原子力・放射線事故対策の支援や、事故が発生した際の情報発信を行う専門部署です。IECで活躍する原子力分野からIT、教育に至る様々な専門家を目の当たりにしたことで、原子力発電所の事故解析研究に携わる私自身が、俯瞰的な視野を持ち合わせた博士人材となるためにも、まずは軸となる思考、つまりは専門分野に関する知識と経験が必要となることを学びました。

インターンシップ期間中は各国の原子力・放射線事故対策の知見を集約するデータベースの構築や国際会議での書記などを担当しましたが、中でもInternational School of Radiation Emergency Managementという原子力・放射線事故対策を各国で進めるための人材育成を目的としたワークショップの運営に力を注ぎました。私が業務に携わったオーストリアでのワークショップでは、欧州15ヵ国から、原子力規制機関の関係者や警察官、消防官、看護師に至る様々な分野の参加者が集まりました。ワークショップの開催に際しては、多様なバックグラウンドをもつ参加者に、原子力・放射線に関する基礎的な知識から、原子力・放射線事故対策に必要な制度設計までの幅広い情報をどのように伝えていくかが課題とされていました。原子力・放射線事故対策では、Harmonizationという原子力・放射線事故対策に関わる各ステークホルダー(中央・地方行政、警察、消防、医療機関、科学者等)のそれぞれが、役割と責任を明確化し連携することが、事故時の被害を最小限にとどめるためにも重要であるという考え方が重要視されています。私は、出席した会議でテキストは必要な情報は極力簡潔にまとめ、特に専門知識が必要な講義に関しては、ディスカッションやケーススタディを中心に進めることを提案しました。参加者のそれぞれが、個々に異なる発災時の役割を理解することから、原子力・放射線事故対応の全体像を把握し、最終的には、参加者が各々の自国で原子力・放射線事故の対応力強化に貢献するというストーリーが大切だと考えたからです。実際にこの方針で幾つかの講義は進められ、特に過去の放射線事故のケーススタディでは、参加者から高い満足度を得ることができたと考えています。 (私のインターンシップは福井県国際原子力人材育成センター、福井大学、トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムの支援を頂き実現しました。)