Activity Reports超域履修生による、ユニークで挑戦的な活動のレポート。

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キャリア支援Part 2「D&B project サイトビジット・交流会」

2017/1/25

D&B project

Text: 大谷 洋介

超域イノベーション博士課程プログラムでは平成28年10月26日から11月17日にかけて、学生側のキャリアイメージの多様化、博士人材の実社会での登用イメージの具体化を目的としてサイトビジット(単日の企業訪問)および交流会を実施いたしました。

企業への就職活動では依然として、博士課程修了者であることが不利に働くケースが非常に多い状況にあります。博士人材の価値は多くの場合「専門知識」のみにフォーカスして語られ、そのため大部分の企業は研究・開発職以外での採用に積極的ではありません(文科省NISTEP Report 2009 他)。
 学生・大学側の持つキャリアイメージもいまだに狭く、研究・諸活動を通じて獲得した能力・経験がどのような業種・分野で活かされるのか、多様なイメージを描くことができないでいます。
 当プログラムでは、平成24年度以降、社会でイノベーションを担っていく専門力と汎用力を兼ね備えた新たなタイプの博士人材の育成に取り組んできました。来年4月には、当プログラム1期生が新たな博士人材として社会に挑戦していくことになります。履修生には、彼ら彼女らの専門、そして当プログラムでの取り組みを広く社会のなかで形にしていくための新たなキャリアパスの開拓が求められています。
 そこで今回、経済界の方々と博士人材の相互理解をより一層深め、キャリアイメージを共に明確化することを目的として、シスメックス株式会社様、株式会社リクルートコミュニケーションズ様、株式会社船井総合研究所様にご協力いただき、1日限りのサイトビジット(企業訪問)および交流会を実施いたしました。

サイトビジットスケジュール

1日目のキックオフでは、博士人材の能力をどのように効率的に顕在化させ、アピールすることができるのか、外部企業から講師を呼んで自己分析・プレゼンテーションの講習会を実施しました。自己の経験・能力を伝わる形で紹介する技術を学び、サイトビジット・交流会へ向けて博士人材の能力顕在化の準備を行いました。

キックオフに続き、計8名の学生が異なる業種の3社に訪問しました。この場では、各社の事業内容やその業種におけるトピックの紹介を受け、ワークショップ・座談会を通じて企業の理念、経営哲学といった大きな概念と、働くモチベーションや仕事観といった実際的な働き方のイメージについて共有を行いました。

このサイトビジットを受けて、新たな博士人材の実像、および実際に博士人材を受け入れた企業の所感を経済界に向けて周知するべく、プレゼン・交流会を開催しました。パネルディスカッションではリクルートワークス研究所主幹研究員 豊田義博氏をお招きし、社会の求める事業創造人材の特性、博士人材の潜在的価値と登用可能性について、フロアを交えた活発な意見交換がありました。

この会では7名の学生が自身の研究とそこから得られた経験・能力についてストーリーテリングの手法を用いて紹介を行い、各人について参加企業から質問やコメントが飛び交いました。研究におけるマネジメント能力の必要性、問題に直面した際の解決能力、様々な状況に応じた修正力といった点が特に注目を集めた様子でした。またある学生の語るマニアックで壮大な夢の話題に会場がざわつく一幕も見られました。

交流会の締めとなる交流ワークショップでは、短時間に可能な限り多くの相手と仕事・キャリアに関する価値観を共有することを目的として、企業参加者と学生が4名一組での相互質問、ディスカッションを、メンバーを入れ替えながら複数回実施しました。会社選びの際に重視した点や仕事における理想と現実のギャップといったキャリアイメージに関する話題から、仕事と家庭の両立といった広い意味での人生設計にまつわる話題など、多様な話を共有する中で学生側は働くということの実像を、企業参加者側は博士人材に対するイメージを新たにしたように感じています。

今回、キックオフ、サイトビジット、交流会と延べ5日間の企画を通じ、学生側のキャリアイメージおよび企業における博士人材の登用イメージの醸成の端緒となる場とつながりを形成できたのではないかと考えています。

当プログラムが育成を目指す汎用力を備えた新たな博士人材たる能力は既存の評価体系ではその価値を見出しづらく、数値による評価が非常に困難なものです。その価値と可能性を社会に向けて周知すべく、今後もプログラムとして取り組みを続けていくことが、ポスドクの就職難という社会課題の解決、ひいてはアカデミアと産業界双方の活性化に繋がると考えています。

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