Professors & Lecturers様々な分野の教員が履修生の学びを支援します。

プログラム特任講師田島 知之Tajima Tomoyuki

専門分野
進化人類学・霊長類学
担当業務
履修生支援、海外研修
担当授業
課題解決ケーススタディ他

研究紹介

私たちヒトと進化史上で近縁な大型類人猿のうち、オランウータンの行動と生態をボルネオ島で研究してきました。オランウータンは霊長類の中ではとても珍しく、明確な群れを持ちません。彼らの不思議な社会性には興味が尽きません。最近ではヒトと類人猿の比較から「青年期」の進化史的基盤についても研究しています。

■オランウータンとは?

オランウータンとはマレー語で「森の人」を意味し、東南アジアに生息する赤毛の類人猿です。熱帯雨林の高い木の上に暮らし、群れを成さず、果実や木の葉を食べて生きています。従来、社会性に乏しいと研究者たちから見なされてきたオランウータンですが、私は野生下や動物園での観察を通して、個体間の社会関係があること、食物分配が起こること、ケンカが起こると平和的に仲裁がなされること等を明らかにしてきました。群れないオランウータンにも他の類人猿とは異なる共存の様態があることが徐々に明らかになりつつあります。謎多き「森の人」はヒト科の進化史をたどる上でも重要な存在です。

オランウータン

残念なことにオランウータンは現在もっとも絶滅に近い類人猿です。彼らが住むボルネオ島とスマトラ島の森林は急速な勢いで失われ、生息数は過去100年で80%減少したと推定されています。また東南アジアの熱帯雨林の破壊には私たち日本に住む人々の生活との関係もあります。市民の方々へ向けて絶滅の危機に瀕するオランウータンの生態と生息地破壊に関する情報発信と教育活動をNPOとして行っています(https://www.orangutan-research.jp/)。

私にとっての超域とは?

動物は無限に広がる世界から個の領域をねじり出し、有限化した環境を生きます。広大な森の中で自身の領域を固定することは、過酷な環境をサバイバルして当面の成長を果たすために必要なことでしょう。しかしさらなる成長を求めるのなら、未知の領域へ波乱の旅に漕ぎ出すことでしか達成されないこともあると思います。うまく行く保障はないし、リスクもありますが、ぜひ「超域」する勇気を持ってほしいです。

超域生へのメッセージ

ウェブで検索すれば何でもわかると人々が思い込むほど、フィールドでの学びの価値はいっそう重くなったと思っています。世の中、まだまだわからないことだらけです。正解に容易にはたどりつけないことを目の前にして、私たちはどうすれば絶望せず、その問題に取り組もうという気持ちを持つことができるでしょうか。好奇心と行動力を持った超域生と共に学びながら、皆さんの挑戦をサポートしたいと思っています。