Career path修了生インタビュー

白瀧 浩志

出身研究科
工学研究科
専門分野・領域
有機金属化学、フッ素化学、触媒化学
現在の所属・役割
テクノロジー本部 マテリアル応用技術センター(内閣府出向)
キーワード
科学技術、水素エネルギー、国家プロジェクト、産官学スタートアップ

2018年度修了生

白瀧浩志

博士人材として社会に出ることについて、大学院での研究内容との関わりや今の仕事を選んだきっかけ、博士人材だからこそ社会に提供できる価値など、感じるところをお聞かせください。

私は、博士課程修了後パナソニック株式会社にて水素製造に関わる研究開発に2年間従事した後、内閣府に出向し、現在はSIP/PRISMという国家プロジェクトを通して科学技術・イノベーションを推進する仕事に携わっています。大学院在籍中の活動も含めると約8年間、産官学スタートアップという多様な立場で「科学技術をもとにした新規事業の開発により、人間の行動様式を変化させる。」という自身の目標に取り組んできた道のりだったと思います。

私の経験から述べると産官学スタートアップの全ての機関において、「科学技術」に対する期待は益々高まっていくと確信しています。Ph.D(博士号)は単なる資格の一つですが、そのような将来においては、博士人材は「科学技術」の創出だけでなく、社会の要求や環境への配慮などを踏まえた科学技術の活用の中核を担う事が求められており、その期待に応える事が社会に提供できる価値の一つだと思います。

今思えば、大学院時代は研究活動にて「真理を追求」しながら、超域で様々な「社会的な要請」を肌で感じられる恵まれた環境であり、まさに今後の博士人材に求められる素養を育んでいた期間だったと感じます。今後、これらの経験を存分に活かし、自分なりの社会への貢献について考え、行動に移していきたいと思っています。

大学院生活とその後のキャリアパスに対して超域プログラムが果たす役割について、超域での学びが就職活動や現在の職務へ与えた影響や、履修によって生まれた新たな視点や考え方などがあれば教えてください。

超域の影響は多岐に渡りますが、専門性の抽象化」「課題の本質を問う力」「他者への尊敬という3つの視点からお話したいと思います。

超域で異分野の方々と議論を重ねる経験は、自身の専門分野をより幅広く捉える事に寄与すると思います。例えば、私の場合、専門を有機金属化学と捉えるのではなく、「分子レベルの相互作用を推定する力」「分子レベルで分析する力」といった具合です。このような専門性の抽象化は、自身の強みの再認識だけでなく、どんな課題でも強みを活かせると感じさせてくれると思います。

2点目は超域の授業で「放射線被曝量の正しい安全基準をどう設定するか?」というテーマの議論から学びました。私はこのテーマに対し、生物学的に正しいと証明するにはどうすれば良いか?という「課題解決の視点」から取り組みました。一方、人文系の学生は対照的に、「なぜ正しい安全基準が必要か?」という「課題の本質」を問うていた事を今でも鮮明に覚えています。これは、超域が目指す姿を端的に表す事例だと思います。すなわち、複雑な課題の本質を多角的な視点から問い、課題を再定義する事です。この能力は学術・産業・行政のどの領域でも必要な能力だと思います。ぜひ、超域でこの能力を鍛え、将来活かして欲しいと思います。

最後に、超域生の皆さんは既に今まで触れた事もない視点や思いがけない課題に沢山触れ、全てを学び切る事は出来ないと感じたかと思います。このように自身の領域を超え、「知らない事を知っている」という実感を伴う経験こそ、他者への尊敬に繋がり、人間的に成長させてくれる経験なのだと思います。ぜひ超域の活動を通し、人間的にも成長して欲しいと思います。

日々研究に励みこれから社会へ飛び立つ超域生に一言お願いします!

超域生の皆さんは、人とは異なる道を選び、歩もうと決心された方々だと思います。私自身がそうだったように、その選択は時に「孤独」や「不安」を感じさせます。また、全ての時間を研究に割くことが出来無いため、第一線の研究者にもなりきれない葛藤が付き纏うと思います。
ただ、超域で学んだ事は人生を豊かにするものだと社会に出て確信しています。超域生の皆さんには、日々の研究や超域での活動に自信と誇りを持って、今を大切に、しっかりと取り組んで頂きたいと思います。そして、各々の領域で皆様の活躍に期待すると共に、いつか何かプロジェクトをご一緒出来ることを楽しみにしています。

(2022年3月)