授業名:超域学際・国際協力論
担当教員:三田 貴(未来戦略機構)
     細井 義孝(国際協力機構)
     杉山 俊士(国際協力機構)
     橋本 敬市(国際協力機構)
Texted BY: 国際公共政策研究科 2014年度生 鈴木 星良

 

地域が主体となる政策とは

 JICAで実際に働いている職員の方々が講義に来て下さる。それも、3回。シラバスに記載されている情報だけでも、公共政策を学び、まちづくりに興味をもっているため、何とも楽しみな講義内容。授業内容は、全5回のうち3回が講義、4回目で履修生が班ごとに分かれたうえで課題のディスカッション、5回目にディスカッション内容をまとめて発表という、後半が少し慌ただしいスケジュール。事前課題に目を通しながら、講義してくださる方はどういった経験をされてきて、何を考えて活動に向き合ってこられたのか、想像を膨らませた。

 各講義では講師の方々が各地域で尽力されたプロジェクトを詳述していただいたが、全体を通して一番感じたことは、人々のインセンティブを見極める重要性である。それぞれの地形や気温、生活様式、歴史、文化、信仰によって、開発などに対する人々の態度にも差異があるため、効果的な政策の実現を目指すには、その土地ごとに合った開発の仕方が必要となる。利益を受ける人、被害をこうむる人、仕組みを守る人、利用する人、そうした関係者の立場や有り様を正確に捉え、各自がもっとも重視する点を見極める。そのことが、プロジェクトをうまく進め、問題を解決するプロセスとして必要不可欠な条件だと強く感じた。

国際協力論01s

 例えば、これは他班が発表していた内容であるが、まず、農業で成り立つA国と、漁業で成り立つB国との関係において、B国がA国の領海を侵犯してまで漁業を行っていた、という仮定が提示される。それから、上記の問題を解決する手段をグループ内で議論を重ねて考察する。A国の政府や、B国の漁業関係者など様々な関係者が絡みあう中で、どういった施策をとれば、特定のステークホルダーが不利益をこうむることなく、出来るだけ多くの人が納得できる解決策を見出すことが出来るのか。そこで重要な議論のポイントとなるのが、各関係者が重要視する点に着目することである。人々のインセンティブをうまく見出すことが出来れば、お互いのインセンティブが合致する政策を考えることが出来る。それはお互いにメリットがあるため、合意形成もなされやすく、丸く収まる政策に繋がる。

国際協力論03s

 現地に足を運び、自身の経験と知識を使って創意工夫しながら、人々のニーズに沿って目的を達成する。講師の先生方に紹介いただいたご経験のような開発支援に限らず、どんなプロジェクトでもこの流れは変わらないだろう。しかし開発支援が一般的な物作りのプロジェクトと違うところは、与える影響のインパクトと範囲が大きく、なんらかの影響が及ぶ関係者が増えてプロジェクトが重層・複雑化する点である。手に入る情報をいかに活用して、どのようなプロセスで問題に取り組み、プロジェクトを進めていくのか。その判断によって対処すべき問題も変わってくる。

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 今回は課題への準備に十分な時間と労力を割けなかったため、議論が中途半端になってしまった。しかし、上記の例でいえばA国やB国漁業関係者のような、ステークホルダーのインセンティブ中心に考察を深めていくことで、現地の状況を正確に把握し、各国が目指す未来像に最も相応しい政策を打ち出していくことができるのではないか、と“体感” できる時間となった。今回の経験を踏まえ、今後更に、的確な論点の抽出する力、問題を捉える包括的な視点、議論を前進させる意志とスキルを伸ばしていきたい。

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