戸谷 洋志(とや ひろし)
特任教員紹介
戸谷 洋志(とや ひろし)
特任助教
専門分野 哲学・倫理学
担当業務 選抜・広報
担当授業 超域イノベーション総合・超域イノベーション展開 他
チューター
担当学部・学科
研究関心 技術の哲学
先端科学技術のELSI
哲学対話の実践
space_sp-appointed

研究紹介

 近代において科学技術は人類を発展させるものと信じられてきました。しかし20世紀になると、最先端のテクノロジーが戦場に投入されたり、環境への深刻な影響が明らかになったりして、科学技術の負の側面もまた明らかになってきます。それでも人類は科学技術を捨てようとはしません。こうした事態に対して、現代の哲学者たちは、人間と「技術」そのものの関係を問い直していきました。それが「技術の哲学」と呼ばれる領野です。
 この問題圏でしばしば指摘されるのは、科学技術において示される人間の製作能力と想像力の乖離です。たとえば原子力爆弾は一発で数十万人を殺害することができます。しかし、人間にはこの「数十万人の殺害」という事態を、ありありと想像することができません。もちろんこれを単なる数字として把握することはできます。そうではなく、目の前に広がる光景として、そこに漂う音や臭いを思い浮かべることができないのです。現代社会は、そうした人間の想像力を停止させるに足るような、圧倒的な破壊力・速度・巨大さ・微小さ・複雑さを備えた科学技術によって成り立っており、私たちにはそれらを実感に基づいて運用することが困難です。こうした状況を踏まえた上で、人間と科学技術の関係をより緻密に解き明かすこと、そして科学技術による破局を回避するために何が必要であるのかを哲学的な観点から検討することが、私の第一の研究関心です。
 もちろん、それは私がたった一人で考えていても仕方のないことです。特にバイオテクノロジーの領野では、科学技術によって喚起される諸問題は「ELSI」(Ethical, Legal and Social Implications:倫理的・法的・社会的課題)と呼ばれ、それに対する領域横断的なアプローチの必要性が叫ばれてきました。私は、上述の哲学的なバックボーンを活かしながら、他分野の研究者と連携してゲノム医療および放射性廃棄物に関するELSI研究にも携わってきました。また、そうした議論は専門家の間だけではなく、市民に開かれたものでなくてはなりません。こうした観点から、私は「哲学対話」と呼ばれるワークショップの手法を用いて、大学の外で市民と対話し、社会との連携を実践してきました。
 対話の実践によって得られた知見を、技術の哲学やELSI研究などの理論的な研究にフィードバックしつつ、理論的な研究で得られたアイデアを対話の実践なかで検証していく。そうした理論と実践のサイクルによって研究を進めることを大切にしています。

私にとっての超域とは?

 領域を超えるということは本質的に危険なことです。そのとき私たちは誰からも守られなくなり、そして無数の責任を引き受けなければならなくなります。しかしそうした危険の中からこそ新しい価値もまた芽生えてくるはずです。危険に抵抗するために重武装するのではなく、余計なものを捨て去り、乱気流のなかを軽やかに、しなやかに、踊るように進んでいくこと。そしてその歩みが新しい轍を残していくこと。それが私の思う超域のイメージです。
space_sp-appointed

message

 超域では様々な困難な課題に挑戦することになると思いますが、その挑戦は出会いの機会でもあります。このプログラムで学び続けるなかで、人と人とのつながりも大切にして下さい。また、不安なことや困ったことがあればいつでも声をかけてください。皆さんの奮闘を見守っています。