Activity Reports超域履修生による、ユニークで挑戦的な活動のレポート。

授業レポート | 超域イノベーション総合


人と獣の共存のために

2017/2/2

課題提供者: 大阪府立環境農林水産総合研究所

このチームは、野生動物が農林業等に被害を及ぼす、いわゆる獣害問題について、解決に至るために実施すべき新たな手法の提案にむけて活動しました。

■活動概要&成果

社会課題の分析と再定義

学生チームはまず、テーマとなった大規模な社会課題に対して、被害拡大の背景にある中山間地域の過疎化、狩猟者・里山利用の減少、森林の人工林化等の複合的要因と多岐に渡るステークホルダーの関係を整理し、システム思考等の手法を用いた分析を進めていきました。

「住み分け」実現にむけた課題

全体の構造分析の中から、現状の被害対策(防除柵、追い払い、駆除等)は「集落からの排除」という機能を持ち、しかしそれだけでは獣害解決の実現は困難との考えに至りました。現状の対策に加えて、森のなかに動物を留めるために、動物の行く先をコントロールする手法が必要と結論付けました。
また現地調査では農家の自主的な対策を視察し、より効率的な対策手法の周知が必要であるとの認識を得ました。しかし専門家の人手が全く足りておらず、1人の専門家が広範囲の現場に手法を周知できるような仕組み作りが求められました。

人は里に、動物は森に

全体の構造において不足する要素を補うための具体的な方策として、森のなかに動物を留めるための「高選好・低栄養」(美味しいが、栄養が少なく個体数の増加を招かない)餌の開発が立案されました。
また実際に農家と柵を立てた経験から、農家と一緒に「研究のために」柵を設置することで、既存の自治組織を介して、短期間・少労力での手法の伝播が可能という方策を打ち立てました。
獣害問題は多くの専門家が頭を悩ませる複雑かつ困難な課題ですが、学生チームは個別具体の小さな解決に拘泥するのではなく、全体を見通したうえで現状不足する内容を洞察し、かつ専門家が思いもよらなかったアイデアを提案するに至りました。

■課題提供者の声

地方独立行政法人 大阪府立環境農林水産総合研究所 環境研究部 自然環境グループ 研究員 幸田 良介

今回、獣害という幅広い問題を敢えてテーマを絞らずに課題とし、大部分を学生の自主性に委ねました。その中で目的地をどこに設定するか、どんな意外性のある提案が見られるか、大阪という地域にどう落とし込むか、それぞれ期待半分、不安半分で見させていただきました。問題の背景を捉える力、成果をまとめる力、フィールドワークでの行動力には目をみはるものがあり、興味深い提案を出して頂けました。提案内容を社会実装するにはまだ課題も多いですが、その課題面は引き続き各自で反芻し、今後の活躍に活かして頂けるよう期待しています。

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