Activity Reports超域履修生による、ユニークで挑戦的な活動のレポート。

授業レポート | 超域イノベーション総合


EXPOCITYの新たな「未来」

2018/2/2

課題提供者: 三井不動産株式会社

消費傾向が大きく変化する中、商業施設はただモノを売るだけではなく訪れた人に新しい体験や時間の過ごし方を提供する必要に迫られています。この課題では30年先までを見据え、万博周辺地域全体を巻き込んだ体験型観光実現に向けた戦略立案に取り組みました。

■活動概要&成果

大型商業施設の抱える課題

2015年に万博跡地に開業したEXPOCITYは複合型商業施設として順調な集客を続けていますが、30年先の未来を見据えた場合には、この種の施設の常として、集客力の低下が生じると予想されています。EXPOCITYが長く魅力を維持するための新たな戦略が必要とされており、その立案のために現状の課題を分析することからこのプロジェクトは始まりました。

シンボリックなイメージの創出

30年先までその魅力を維持・向上させるためには、新たな価値の提案が必要となります。集客力の向上には現状の主な集客範囲である近隣都市圏に加えて、国内外の広い範囲から集客可能となることが望ましく、そのためには周辺の地域や施設と連携し、観光地としての立場を確立させることが求められました。
そこで新たに必要だと考えたのが「地域を象徴するイメージ」です。京都や富良野に代表されるように、観光地として成功している地域には特定のイメージが定着しており、そのイメージを体験するために広い範囲から人が訪れているという構造が調査から見えてきました。

未来を感じられる場所

万博周辺地域に定着させるイメージとしてこのチームが着目したのが「未来」というキーワードでした。この地域では「人類の進歩と調和」をテーマとした万国博覧会が1970年に開催され、大勢の人が未来を体験したという歴史を持ちます。その背景を活かし、訪れた人が少し先の未来を体験できる場所という統一したコンセプトのもと、EXPOCITYや周辺地域、施設が取り組みを続けることで、独自の世界観を持った観光地として広く世界に認知されることを目指す、という提案をするに至りました。
具体的な方策として、ベンチャー企業の製品を展示、その場で小口投資が可能な仕組みを整備し、実現された商品を万博公園や周辺地域で先行的に実用化するなど、常設のものとしては国内外に例がなく、また地域全体での取り組みが可能なプランを提案しています。

■履修学生チームの声

8ヶ月にわたるプロジェクト活動を通して、どこから手をつけたらよいかわからない暗中模索の苦しみと、アイデアが形になっていく快感という対極の経験をすることができました。課題解決においては、問題を正しく認識することが最重要ですが、有効な解決策を考えて初めて問題が認識できるという矛盾が生じます。この矛盾を打破するには、物事を構造化して、問題を設定しなおし、暫定的にでもどこから手をつけるか決める必要がありました。振り返ってみると、暗中模索をしていた初期の議論の中にも、最終成果につながるようなキーワードや議論の芽がたくさんあったことに気づきます。我々の班では、課題解決のためのよいモデルケースに出会ったことで、議論が構造化されて、初めて課題解決への手応えを感じることができました。プロジェクトの進捗が芳しくない時には、重い足取りで吹田キャンパスに向かうこともあり、実に濃厚な8ヶ月間となりました。課題解決の苦しみを、身をもって知ったこの経験は我々の血肉となり、これからも役に立っていくことでしょう。最後に、我々の自主性を重んじながら適切な距離を保ってご指導いただいた課題提供者および教職員の皆様に厚く御礼申し上げます。

■課題提供者の声

三井不動産株式会社 鈴木達也

2015年11月に吹田市万博記念公園内にオープンした大型複合施設EXPOCITYを中心とした観光誘客をテーマにさせていただきました。大阪大学に近接し、エンターテインメント施設と商業施設を含んだ複合施設の観光誘客を考えるという身近に思えるテーマでありつつ、多角的な視点を持ちながら仮説を組み立てないと実践的な提案が生まれにくいテーマであったと思います。課題提供者としては特に万博公園周辺施設との連携や、30年間続く事業としての時間軸、国内外を含んだ観光客のターゲットの特定など、EXPOCITYを取り巻く環境を分析したうえで独自性の高い提案を期待しました。超域学生からの提案は、課題提供者の期待を大きく上回り、分析力・発想力・提案力に優れたものであったと言えます。観光誘客のために「聖地化」というキーワードを抽出し、万博エリアの持つ土地の特性を活かして「未来に夢を描ける場」というテーマで施設を色づけ、実現可能性を踏まえて中長期的な施策に落とし込んでいくストーリーは非常に納得感の高いものでした。本プログラムで発揮した力は、ニーズが多様化し、刻一刻と変化していくビジネスにおいても活用できるものだと思います。皆様の益々のご活躍を期待しています。

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