Activity Reports超域履修生による、ユニークで挑戦的な活動のレポート。

授業レポート | 自主実践活動


工学と理学の境界を越えた研究者となるために - 実学に倣った工学研究に対する理論的考察 -

2020/3/31

Text: 工学研究科 環境・エネルギー工学専攻 桐村誠

私は、工学研究における理学的考察の意義を考えることを目的に、自主実践活動を行いました。私の研究では、磁石にくっつく粒子をがんの周りの血管に集め、それらの血管を閉塞させることでがんの成長抑制を行う治療法について工学的な視点から検討しています。本研究の課題は二つあり、一つは粒子を体内深部の血管に選択的に集めることができる磁石の設計、もう一つは、血管を閉塞させるために必要な不可逆凝集体を形成できる粒子の設計です。私のこれまでの研究では、主に実験的な検証を行ってきましたが、この治療法の実用化のためには精密な制御方法を確立することが必須であり、そのための理学的な解析はできていませんでした。そこでこの自主実践活動の機会を利用し、国立研究開発法人の物質材料研究機構とイギリスのノッティンガム大学にて、実験結果に対する理学的な解析に取り組みました。さらに、これらの技術の応用先を探索することを目的に、アメリカのクリーブランドクリニックを訪問しました。

具体的な研究活動としては、物質材料研究機構にて磁場分布が時間的に変化する際の粒子の動きを調べました。これらの研究成果は、カナダ・バンクーバーで開催された国際学会Magnet Technology 26で発表しました。ノッティンガム大学では宇宙理学研究科にて、磁石付近に存在する複数の粒子が集まり、一つの粒子を形成するプロセスを調べました。
クリーブランドクリニックでは約30名の研究者の前で2時間、研究成果を発表する機会を頂き、回転磁場や分散・凝集技術の利用先について意見交換をすることができました。意見交換の中では、私の研究している技術が工学分野だけでなく、バイオテクノロジーや医療分野に有効活用できる可能性を示唆して頂きました。
これらの国外での研究活動やプレゼン経験を経て、数値計算スキルを身に着けるとともに、理論計算をすることで磁気分離や磁気凝集の定量的な評価が可能となることが明らかになり、当初の研究目的以外の課題に対しても自分の開発した技術が有益であることに気づかされました。今後はこれらのコア技術をより多方面に生かすために、実践活動で知り合った先生方と協力して、様々な分野への貢献に取り組んでいきたいと考えています。