Activity Reports超域履修生による、ユニークで挑戦的な活動のレポート。

授業レポート | 自主実践活動


地域生活を支える精神医療福祉システムとは?

2017/2/2

Text: 人間科学研究科・人間科学専攻 篠塚友香子

精神医療福祉の地域支援モデル構築過程における多職種連携のあり方の探求―― アメリカ地域支援プロジェクトの実践を参考に

アメリカのUniversity of Massachusetts Medical School(以下、UMMS)にて、約3ヶ月間の「超域イノベーション実践」の活動に取り組みました。精神医学研究所の研究員として、フィンランド発祥のOpen Dialogue (以下、OD)という地域支援モデルをアメリカに導入するプロジェクト「Preparing the Open Dialogue Approach for Implementation in the U.S.」を中心に従事しました。

精神医療の世界的な動向は入院医療から地域ケアへの移行にあります。入院中心医療は精神疾患に苦しむ人を社会的に疎外する傾向にあると長年批判されてきましたが、昨今の多様化かつ広範化する社会ニーズに応えるためにも地域ケアへの転換が迫られています。日本でも政府の重点的な施策展開により地域支援の充実が進められているものの、現場の実践レベルでは多くの課題が残されています。そこで私は、精神医療の地域化促進に不可欠な契機として多職種連携に着目し、「精神医療福祉の地域支援モデル構築過程における多職種連携のあり方の探求」を活動目標に設定しました。この目標設定は、専門研究で精神科医療福祉の実践者と関わるなかで抱いてきた問題意識とも関係しています。

ODでは多職種連携のチームにより、地域を基盤とした包括的な支援が実践されており、世界的注目を集めていますが、入院と薬物療法が主流のアメリカの医療制度に導入するうえでは多くの障壁があります。UMMSのプロジェクトチームは、実践者との連携を通して、教育、組織改革、研究を三本柱にODの導入を進めています。UMMSプロジェクトチームの一員として、既存の制度に新しい実践を導入するために必要なプロセスを学び、その成果として(1)新しい実践を導入するプロセスのモデル化、(2)ODの日本での展開可能性の検討を行いました。この活動を通じて、多職種連携とは専門職同士の相互理解を促進するだけでなく、専門職の役割や働き方を規定する制度をも変えていくダイナミックなプロセスにより実現されるのだということを、具体的な事例を通して学ぶことができました。