Activity Reports超域履修生による、ユニークで挑戦的な活動のレポート。

授業レポート | 超域イノベーション総合


先端技術で構想するショッピングモールの未来

2019/2/22

課題提供者: 三井不動産株式会社、三菱電機株式会社

消費傾向が大きく変化する中、商業施設は訪れた人に新しい価値を提供する必要に迫られています。この課題では総合電機メーカーの持つ多様な要素技術を統合させることで実現する、買い物体験がより「楽しく」なる仕組みの立案に取り組みました。

■活動概要&成果

大型商業施設と総合電機メーカーの連携が創出しうる新たな可能性

大規模な複合型商業施設はリアルな買い物の場として順調な集客を続けていますが、EC(電子商取引)が隆盛するなか、実店舗ならではの価値を見つめ直し、顧客にとってより「楽しい」ものとなるような買い物体験をリデザインすることが求められています。一方、総合電機メーカーはこれまで、様々な製品や技術を個別に提供してきましたが、新たな体験と価値が求められている昨今、それらをパッケージ化した製品やサービス群を提案し提供することに迫られています。

実店舗ならではの価値

文献・実地調査を続ける中でこのチームが着目したのは消費行動における情緒的価値(買い物から得られる刺激や喜び)でした。実用的価値において重視されるのが価格や利便性である一方、情緒的価値においては購入前後のプロセスにおける体験も重要な位置を占めます。実用的価値に利点を持つECとの共存を目指すうえで、情緒的価値を重視した「買い物プロセス全体を通した楽しさ」の提供が求められるという洞察を得ました。
この着眼点に立ったとき、大型商業施設の特長が多種多様なテナントを内包することにある一方、現状での体験は「各テナントでの買い物の連続」となっており、広大な施設全体を通じた買い物体験の提供ができていないことが見えてきました。

ひとつなぎの買い物体験

施設に入ってから出るまでをひとつの大きな買い物体験とするためにこのチームが立案したのが、全テナントに陳列されている商品を横断的に登録・比較可能となる電子デバイス・サービスの導入でした。施設に入った顧客は各テナントを巡り、気になった商品を次々とデバイス上のリストに登録していくことになります。気の済むまでテナントを巡った後、3D映像等によってリストに登録された商品を比較検討し、購入を判断します。これによって間に煩わしい手順(比較のためのテナント間の往復、購入の判断、会計)が入らず、施設全体をひとつの大きな「店」として買い物を楽しむことが可能となります。
この方策は総合電機メーカーの技術・サービスの包括的な導入によって「テナントの集積」としての大型商業施設から脱却し、全く新しい商業施設像を創り出すものだと考えています。

先端技術で構想するショッピングモールの未来

■履修学生チームの声

「未知で複雑で困難な課題を解決する」(本授業シラバスより)ために費やしたこの8ヶ月間は、文字通り紆余曲折のある道のりでした。我々のチームは、研究分野もこれまでの人生経験も人一倍異なる、多様なバックグランドを持った学生から構成されていました。本授業のようなプロジェクト型演習(PBL)の醍醐味の一つは、全員が当事者になれることにあると考えます。自分自身を課題に当てはめながら、アイデアを出し合えることは貴重な経験でした。しかし、価値観や課題の捉え方が大きく異なる場面も多く、議論が平行線を辿ることが多々あったことも事実です。この困難に立ち向かうべく、我々は次の二点を心がけました。一点目は、都度合意形成を図ることです。与えられた課題を解決するために行う議論は多岐に渡ります。その際、方向性に誤りはないか、異論はないか、逐一クリアにしながら議論を進めていきました。二点目は、各人の個性とスキルを織り込むことです。我々は、境域における異種の交わりにこそ、イノベーションの萌芽が見られると考えます。各々が持つ面白い視点と知識がどう交われば、課題解決につながるのか、主観的かつ客観的に考えながら、アイデアを模索していきました。もちろん毎回の授業で学ぶ課題解決のための方法論、教員やティーチング・フェローからの助言、課題提供企業の思いも大きな力となりました。今後も各分野で、課題解決のためのイノベーティブな総合力養成を続けていきます。

■ 課題提供者の声

三井不動産株式会社 関西支社事業二部 木村庄佐氏

携帯電話やパソコン等の普及によりネットでの買物が身近になっている今日、リアルモールに買いに行きたいと思わせる仕組みをどう創るか、買い物以外の目的でわざわざ来館するきっかけをどう創るかという視点で商業施設の運営を行っております。超域プログラムでは「EXPOCITYでの買い物がより楽しくなる仕組み」をテーマにさせていただきました。買い物という身近な行為を『楽しく』するというテーマは、シンプルであるが故の難しさがあり、物事を構造化し問題を正しく認識しないと実践的な提案にたどり着けないテーマであったかと思います。課題提案者としては、総合電機メーカーである三菱電機さんと合同だったこともあり、AI・IoTを活用したサービスにも期待を致しました。超域学生からの提案は、分析力・発想力・提案力に非常に優れているものだったと思います。「DigList」「PickPort」というまったく新しいサービスは、リアルモールならではの“実物を見て取捨選択できる”という楽しさを倍増させ、商品を吟味する際の煩わしさは払拭させるという、お客様目線にたった納得感の高い内容でした。プログラムを通し得られた様々な経験は今後の皆様の活動にておおいに役立つことと思います。最後に、本気でEXPOCITYをより良くしようと、ひたむきに取り組んで頂きありがとうございました。皆様の益々のご活躍を期待しております。

三菱電機株式会社 未来イノベーションセンター 束田智輝氏

少子高齢化、家族構成の変化、価値観の変化、都市集中化などショッピングモールを取り巻く環境が変化する中、買い物がより楽しくなるための仕組みを、今後重要となるUX(User Experience)やコミュニケーション視点で提案していただきました。
特に、ショッピングモールでの実体験に基づいて買い物に関わる課題を深掘りし、具体性のある解決案を導出したことは大きな成果だと思います。さらに、当社を理解する活動も精力的に実施した上で、当社の特性を勘案した提案となっており、今後、我々のアイデア検討に活かせると考えています。今回、ビジネスモデルや事業のステークホルダーにまで踏み込んで検討していただきましたが、そのような物事を俯瞰して見る経験が、皆さんの今後の力になればと思っています。チームの皆さんには、今後の更なる飛躍と活躍を期待します。

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