Activity Reports超域履修生による、ユニークで挑戦的な活動のレポート。

超×超域人
超×超域人 Vol.5
―留学生が語る「超域」との「ラブストーリー」-

2021/3/16

インタビュイー:2017年度生 許 俊卿(人間科学研究科)・2019年度生 冷 昕媛(人間科学研究科)・2020年度生 王 瀅鴿(言語文化研究科)
インタビュアー・記事編集:2017年度生 沈 吉穎(言語文化研究科)
写真撮影・記事編集:2018年度生 岡田 茉弓(言語文化研究科)

 

大阪大学超域イノベーション博士課程プログラムの履修生や教職員にインタビューする「超×超域人」!今回は、留学生である許俊卿さん(人間科学研究科博士後期課程2年生)、冷昕媛さん(人間科学研究科博士前期課程2年生)、王瀅鴿さん(言語文化研究科博士前期課程1年生)にお話を伺いました。どのような経緯で「超域」と出会ったのか、留学生から見えた「超域」の魅力とは何か、履修を通してどのような学びがあったか、ドキドキしながら留学生と「超域」との「ラブストーリー」を見ていきましょう。

※本記事は中国語で行ったインタビューの内容を日本語に翻訳したものです。

 

「超域」に辿り着くまでの経緯

 今回お話を伺う皆さんは全員留学生ですが、日本への留学を決めた理由は何ですか?

 私は学部時代日本語を専攻していたので、大学3年生のとき、一度交換留学生として日本に留学に来た経験があります。その時に感じた、自然が豊かで学生間の交流が活発な日本の大学の雰囲気が印象に残っていたので、大学卒業後に留学しようと考えたとき、地理的にも近い日本にしました。

 私の場合、最初は企業に就職したいと思っていたので、日本に留学する気はありませんでした。しかし、大学2年生の夏にインターンシップをした際に、民間の仕事は忙しすぎると感じ、もう少し自分を磨きたいと思いました。私も日本語を専攻していたので、日本で勉強したほうが人生経験が増えると思い、留学することにしました。

 私も許さん、王さんと同じく、日本語専攻だったので、一度日本の生活を体験したいと考え、1年間ほど仕事をしながら留学の準備をしました。

 一度就職して社会人経験を積んでいたのですね。なぜ留学しようと思ったのですか?

 社会を一度体験してみたいという気持ちで就職したのですが、その後、やはり自分は研究に向いているのではないかと思い、研究者になるために留学をしました。

 皆さん様々な理由で日本に来たわけですが、なぜ大阪大学の大学院を選んだのですか?

 まず、教育の質が高いと思われる国立大学を目指しましたが、最初はどの専攻にするのかは明確ではありませんでした。というのも、中国の大学では主専攻は日本語、副専攻はメディア学でしたが、交換留学生として東京外国語大学に留学したときには日本語教育のゼミにも参加していました。そのため、メディア関連か教育関連か、専攻をなかなか決められませんでした。結局、自分は環境問題やSNSに関心があったので、環境問題に関するメディア研究ができる今の研究室に入りました。私の所属する研究室は、世界的に共通の課題である環境問題を人間の生活の次元から捉え、その解決方法について考察しています。実際、いろいろな興味深い研究が行われています。

 中国の大学での日本語主専攻から現在の人間科学専攻へと、研究の内容は大きく変わりましたね。
さて、王さんは現在、言語文化研究科に所属し、これまで一貫して言語学を専攻しているのですが、なぜ阪大を選んだのですか?

 私は社会言語学の中で言語行動を研究しており、阪大の言語文化研究科は私の研究とかなり近いと感じました。また、阪大の先生にメールをお送りしたときに、対応が迅速で丁寧でしたし、私自身、関西人の親切な性格が好きだったので、いくつかの大学院を受験しましたが、最終的に阪大を選びました。

 広く網をかけていたのですね(笑)

 私もそうです(笑)私もいくつもの大学院に出願しました。中国の大学での卒業論文は「風の谷のナウシカから見る日本人の自然観」で、社会学や環境問題などに興味を持っていました。現在所属している研究室では、日本人の学生も中国からの留学生もどちらも環境問題に関して自分の視点から研究活動を盛んに行なっていると聞き、中国の実情を把握している私自身の経験もすごく役に立つと思い、いろいろ考えた上で許さんと同じ三好先生のご指導のもとで勉学に励もうと決めました。

 私の場合、助教の先生が中国出身だったことも実は大きな理由ですね。

 そのことも影響があったのですか?

 そうですね。コミュニケーションがスムーズにできますので。

 阪大から合格通知をもらったあと、入学手続きや研究室の案内などは助教の先生を通してやり取りを行うのですが、とても親切にしていただきました。

 そうなんですね。異国で、しかも当時はおそらく日本語もそれほど上手ではなかったと思いますので、同じ国出身の方がいてくれると、心強いですよね。

 

インタビュイーの冷さん(左上)、許さん(右上)、王さん(左下)、インタビュアーの沈(右下)

 

「超域」との奇妙な出会い

 「超域」にはどんなきっかけで出会ったのですか?

 最初は超域プログラムの1期生である松村先輩から紹介していただきました。様々な分野の学生と共に議論できる多様性と、大学外の多くの活動に参加でき、実際の課題に挑戦し実践性が強いという印象を受けました。そして、専攻以外の何かが勉強できればという思いもありました。あとは素朴な理由ですが、奨学金が支給されるので、経済的にとても助かります。

 先輩からの声掛けがきっかけだったのですね。奨学金については、冷さんと王さんが入った時は、プログラムの予算が文科省から大阪大学に移ったこともあり、少なくなりましたね。

 それでも経済的な支援があることはとても魅力的です。中国で副専攻を学ぶには学費は自腹なのですが、こちらは学費を支払う必要がないだけでなく、奨学金までもらえるなんて、とびっくりしました。あと重要だったのは、大先輩の松村さんも許さんも、自分自身の専門分野における研究だけではなく、超域の履修生として、いろいろな社会活動にも携わっている姿を見て、すごいなあと思ったことです。それで許さんに、自分も超域に興味があると言ったところ、授業の内容や試験のやり方に関する情報を教えてもらい、「よし、受けてみよう!」とやる気が出て、出願をしました。

 そういえば、冷さんと許さんは同じ研究室で、王さんと私も同じ研究室ですね。

 私は指導教員に薦められたことが結構大きかったです。同じ研究室の先輩も超域で活躍されているとのことで、「王さんも挑戦してみたら?」と先生から声をかけていただきました。もちろんそれだけでなく、実際に超域のホームページなどを見て、今の社会は統合的な知が求められるということに共感しました。私は言語学を専攻していますが、現在の言語現象も他の社会課題のように複雑化しており、言語についての理解を深めていくためには、言語学だけの知識では足りないと感じていました。そこで、言語学を出発点として、人類学、社会学など、様々な学問分野と結びつけて分野横断的な知を得たいと思い、超域に入りました。

 そういえば、当時のパンフレットに「文理融合」という言葉が載っていて、とても印象的でした。所属している研究室は環境行動学の研究室なので、文理融合の視点から環境問題の改善に寄与するという全体的な目標があります。自分の研究においても、文理融合という視点が大事なので、超域は私にとってピッタリだと思いました。

 パンフレットの言葉にも惹かれたのですね。私も、言語、文化、専門、性別などを超える、超えることでしか生まれない、といったようなキャッチフレーズに魅了された記憶があります。たくさんのリーディングプログラムや副専攻のパンフレットの中で、いかに人目を惹くかということも重要ですね。
ここで少し話を変えて、超域は全体的に留学生が少ないと思います。許さんと私の6期生は、15人中留学生が5人いたのですが、それより前には留学生は2人ぐらいしかいませんでした。冷さんと王さんの8期生と9期生もお二人だけですが、受験する時はどのような気持ちでしたか?

 私は「絶対落ちる」と考えていたのですが、面接の経験を積めると思い受験しました。面接に加えて、筆記試験もあり、小論文を書くのが一番辛かったです。

 それでも、私たち6期生のときの受験と比べると、楽だと思います。私たちのときは、筆記試験と個人面接のほかに、2日間にわたるグループ・ディスカッションもありました。これまでの人生の中で一番長くて難しい試験でした。特にグループ・ディスカッションは、集中力、忍耐力、体力の勝負でしたね。最初は、みんな全力で議論をしますが、時間が経つにつれて、集中力が下がり、1日目はなかなか合意形成ができませんでした。寝ると、元気になりましたが。

 一晩休んだら、エネルギーチャージができたのですね。

 そうですね。でも、競争意識も強まって合意形成が更に難しくなりました(笑)

 大変だったのですね。今年度は、コロナの関係で試験内容は4,000字程度のレポートと面接だけでした。

 受験する時、不安や困難を感じましたか?

 レポートは私にとってかなり労力がかかるものでした。文理融合や複眼的視点から社会問題を解決するというのは超域の趣旨の一つなので、レポートを書く時に、自分の専門領域からだけでなく、できるだけより多様な視点から書こうと思いました。そこで、全く学んだことのなかった社会学や統計学などを勉強し、小規模のインタビュー調査も行いました。そうした作業を通して、自分自身、他の分野についての知識が本当に少ないことを痛感しました。

 私は受験のときにとても不安でした。特にグループ・ディスカッションのときには、日本人学生の話すスピードが速く、まだ理解できていないうちに話が終わってしまいました。自分が話したいと思っても、どのタイミングで話すのか、どのような表現で相手と異なる意見を言うのかわからず、なかなか自分の意見を言うことができませんでした。筆記試験では、日本語と英語の文献を読む必要があったのですが、それらを一気に読んだら、レポートを書くときに頭がぼーっとしてしまいました。

 日本人にとっては母語と外国語ですが、我々にとってはどちらも外国語ですからね(笑)

 中国語ならもっと容易に課題をこなせるだろうと思いますが、日本語ではときどき言葉に詰まるときがあります。筆記試験が終わったときには、達成感があっただけで、合格できるとは思いませんでした。

 

 

グローバルエクスプローラ活動中の冷さん 琵琶湖博物館にて

「超域」との「付き合い」によるさらなる成長

 実際に超域に入って、超域に対するイメージや自分自身について、何か変化したと思うことはありますか?

 日本語の話すスピードが上がり、論理立てて話す能力や話す内容をまとめる力も高まりました!超域では、よくグループ・ディスカッションやワークショップを行うので、それらを通じてこうした能力が鍛えられたと思います。それから、超域に入る前は「超域イノベーション」に対する漠然としたイメージしか持っていなかったのですが、超域に入ってからは、その意味するところや「文理融合」について徐々に理解できるようになってきました。

 許さんも「文理融合」の言葉に惹かれたということでしたが、超域に入った後は元々もっていたイメージ以上のものがありましたか?

 そうですね。超域で取り組んでいる多くの社会課題を解決していくには、文系と理系の分析手法を共に使う必要性があると思います。また、議論の中で、文系と理系の両方の学生がいるので、考え方も多元的ですね。超域のコンセプトは本当に良かったです。

 王さんはどうですか?超域に入ってみて。

 自分にとってこのプログラムは一体どれほど有益かが未知数だったので、超域に入る前は少し不安でした。でも、実際に入ってみると、課題解決ケーススタディや超域特別講義などの授業を通して、超域でなければ知る機会がなかなかないようなことや、自分のもっている視点と違うことなどをたくさん学びました。自分の専門以外の知を学ぶという機会がこれまであまりなかったのですが、超域のおかげで、いろいろなことを知ることで自分の視野が広がっただけでなく、日本や中国、今の社会の現状をある程度客観的に認識することができたと思います。要するに、超域での学びは私にとって非常に新鮮で魅力的であり、「超域に入って良かった!」と思います。

 超域に入った後、日本人との交流や日本の社会問題などを考える機会が増えたと思いますが、日本人や日本社会に対する見方について変化したことはありますか?

 自分の見方の変化ではないのですが、同期の日本人学生が自分の変化について話してくれたことがあります。中国人留学生と交流する機会が増えたことで、「日本人ってなんて曖昧な話し方をしているんだろう」ということに気づいたと言っていました。6期生は当初中国人留学生が5人いましたが、グループ・ディスカッションの際には、賛否はどうであれ、留学生はいつも素直に自分の意見を話します。そのことが、日本人学生が自らの話し方について考える機会になったのだと思います。

 確かに日本人の考え方は中国人の考え方と違うところがあると思います。日本人は意見を言うとき、最初から最後まで理路整然としています。なぜそのように考えてきたのか、自分はどうすべきなのかということまでよく筋が通っています。私の周りでは、そういうとても論理的な考え方をもっている日本人がほとんどです。

 でも、時に議論の中で急に論点が拡散することもあります。私たち中国人は、提起された問いに基づいて考えることが普通ですが、日本人学生は時に議論が拡散していきます。それはそれで面白いのですが、最初の問いとの関連性がないように感じることがあります。

 私もそんな感じがします。特にグループ・ディスカッションの時、日本人がたくさんいると、一人が持ち出した関係なさそうな別の話題で盛り上がることがあります。そして話題はどんどん先に進み、しかも空気を読むのか、それを誰も止めないです。

 いや、私はそんなふうに感じていません。同期の日本人は議論に筋が通っていて、論理だっていると感じます。

 議論に参加する人の専門や学年も関連するかもしれませんね。

 そうですね。超域に入る前は、私たちは日本人と密接な関わりをもっていなかったですし、恐らく日本人に対するイメージもステレオタイプにとらわれていることが多かったかと思います。超域ではグループワークが多く、活動のフィールド先で一緒に食事したり一緒に泊まったりすることもよくあります。プロジェクト型の授業になると、一週間から半年以上の間、協働して活動することもあります。そこでお互いの理解が深まったと感じましたね。

 お互いの関係が近いですね。カナダでの語学研修やフィールド・スタディなどの個別の活動では、先生方もおらず、私たち履修生だけの時間がありますので、自分たちで企画したりお互いに協力的に活動するなど、本当に楽しかったです。

 

 

語学研修中の許さん(左)と同期生 カナダのバンクーバーにて

 

 

 

 超域の多様な授業や活動の中で、特に印象深かったことや勉強になったことはありますか?

 面白い授業がいっぱいありますね。「超域イノベーション序論」でSociety5.01について考えるようになりました。地域社会の獣害対策や空家問題などを通して日本の社会問題の多様性や複雑性を知り、留学生の立場から中国の制度や実情との違いなどに気づくことができました。それに、「フィールド・スタディ」や「グローバルエクスプローラ」などで、プロジェクトの企画力や実行能力も大変鍛えられました。
空き家問題の授業を例として挙げると、住之江区の役所を訪問した際に、役所の方と話す中で中国と日本の状況が違うことに気づきました。中国は国家公有制なので、空き家になれば政府が解体して終わりです。しかし、日本は私有財産制なので、相続税や家の解体などにかかる莫大な費用負担は持ち主が負わねばならず、特に災害時などには、そういう空き家の存在は持ち主にとって大きなリスクとなります。つまり、日本における「不動産」とは、投資できる資産である一方、負の資産となる側面も持ち合わせる可能性があることに気づきました。この学びから、さらに日中の状況の違いを深く理解できるようになりました。

 一般的に留学の意義としては、留学を通して日本社会について学び、そこで得た知識や経験を中国社会に応用する、ということがよく挙げられますが、個人的には必ずしもそうではないと思います。最も大事なのは、ものごとを相対化して捉える視点をもつことであり、相対化した上で、双方の差異とそれが生じる背景について考察していくことです。日本で得られた経験や知見をそのまま中国社会に応用するのではなく、自国の発展により適した方策を考えていくことが有意義であり、留学の意義ではないかと考えています。

 超域での学習は留学の意義を捉え直す良いきっかけにもなったようですね。王さんはどうですか?

 専門分野の研究科だけでは得られない知識を得て、能力も知識も伸びたと思います。特に、今学期に履修した金森先生の「課題解決ケーススタディ」という授業が印象的でした。学生は日本、アメリカ、中国を代表する3つのグループに分かれ、ワクチン開発について三国間で意見交換をするというものです。議論の中で感じたのは、中国と日本では中国に対するメディアの捉え方が違うので、日本人が認識している中国と私たち中国人が認識している中国の間には大きな認識の食い違いがありました。例えば、政治的立場の違いから、多くの日本のメディアは中国が遂げてきた進歩や実績などに対して、肯定的な視点ではなく、批判的な報道をしています。このため、中国に対する偏見やステレオタイプが日本人の中で肥大化することがあると思います。

 

 

農業体験中の王さん 能勢町にて

 

 

 超域はそもそも専攻、出身、学年など多様な背景の人が集まっていますが、留学生というファクターはどれぐらい重要ですか?皆さんは自分が留学生だということをどれぐらい意識していますか?

 例えば、日本社会について何かを論じる時、私は日本社会のことをよく知らないなあ、という気持ちになります。日本の事情についてはあまり詳しくないので、日本の社会事情に関連した話題にはついていけません。

 一方、中国の話については、すぐに話すことができますし、むしろ何かを言わなければならないという気持ちもあります。

 その瞬間に、中国人としてのアイデンティティーを強く意識するんですね。

 実際、意識させられたことがありました。例えば、グループ・ディスカッションの中で日本のある社会課題を考えた時に、私は日本人の立場に立って、あるいは自分の日本社会に対する理解に基づいて話したいと思っていたにもかかわらず、「中国ではいかがでしょうか?」と聞かれました。自分の意志とは逆に、留学生というイメージをもたれているのだなと感じました。但し、自分としては知らないことを学んでいると考えているので、あまり「留学生」という感覚はないです。

 確かに普段のディスカッションでは、各自が異なる視点から自由に議論しているので、それほど留学生であることを意識してはいないのですが、いざ発表会や報告会の場になると、考えていることをいかに適切な言葉で表現すればよいのか、伝えたいことをいかに適切に伝えるかなどについて考えはじめると、自分は留学生だからかなかなかうまくできないと思うこともありますね。

 このほかにも、メールで学外の人と連絡を取るときなど、挨拶文を書くのは難しいです。

 

インタビューの風景

 

「超域」への「告白」

 留学生として超域のカリキュラムや授業などについて、何か意見や提案、言いたいことなどありますか?

 私は超域に感謝しかないです。超域でこの世界を知る機会がたくさんあったと感じます。例えば、「グローバルエクスプローラ」や「海外フィールド・スタディ」では、海外に行く機会があります。今年はコロナのために中止になりましたが、このような機会はなかなかないので、とてもよい授業だと思います。提案としては、留学生の履修生が増えていくと授業自体がより国際的になると思いますので、留学生に向けての広報にさらに力を入れてもいいかもしれません。

 私も超域には感謝しています。社会問題を解決していくためには、政府、市民、企業、NPOなどの多様なステークホルダーが存在しているので、一つの切り口で論じることはできないと思います。本来なら、できるだけ多くの関係者の意見に耳を傾けることが重要ですが、残念ながら、コロナの影響で、私たち自身も外出を制限され、フィールド・スタディや海外関連の授業も実施できなかったので、その代わりとして、オンライン上の交流会などがほしいです。

 海外研修に関連して一つ思っていることがあるのですが、今までいろいろな国で超域の授業や活動が行われてきましたが、私たち中国からの留学生以外に、中国で何か活動をしようとする履修生が少ないようです。やはり日本人のもっている中国に対するイメージと中国の実態がずれている側面があると思います。特に近年は経済発展に伴い、中国社会の変化も早く、私自身も帰国するたびに驚くほどなので、超域生の皆さんには超域の活動だけでなく個人の旅行でもよいので、一度は中国に行ってほしいですね。

 中国のことをもっと多くの人にアピールしたいと思います。一度体験してみると、面白い発見があると思います。

 超域では、さまざまな側面から新しい視点がもたらされ、自分の能力を鍛える機会も多いので、評価しています。特に不満はないですが、単位の計算が難しかったです(笑)あと、多元的視点から、英語で議論する授業が増えるといいかなと思います(笑)

 では最後に、これから超域に入ってくる履修生や留学生、もしくは検討中の人に、伝えたいことを一言お願いします。

 私たちの研究は実はこの社会のほんの一部にすぎず、学ぶべきことが他にもたくさんあるので、自分の分野にとらわれず、より多くのことを学び、自分の可能性を広げてみてはいかがでしょうか。社会についてもっと知りたい、自分の考えを人に伝えたいと思っている人はぜひ超域に来てください。

 私個人の体験では、超域では問題を考える角度を多元的に提供されるので、面白い人間になれると思います。新しいことに挑戦したい人は、ぜひ来てください!

 超域と研究科の両立は難しいと多くの人が言うかもしれませんし、留学生にとって大きな挑戦となるかもしれませんが、だからこそプラスアルファの意味をもち、相乗効果が生まれると思います。研究やキャリアに関してプラスになるだけでなく、自立と挑戦に立ち向かう勇気は、超域から獲得したもう一つの宝物であり、これからの人生にとって大切だと思います。自分の力で社会を変えたいという思いをもっている方は、ぜひ超域に来てください。

 

 

 

(注)
1 Society5.0:サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のことを指す。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱。
(内閣府HP参照。 https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/ 2021.2.25閲覧)