Activity Reports超域履修生による、ユニークで挑戦的な活動のレポート。

活動レポート
履修生主導型企画 ロシア海外研修<1>
自らに潜むステレオタイプを打ち破る

2017/6/1

はじめに

超域イノベーション博士課程プログラム(以下超域プログラム)では、国内学習とロシアの首都モスクワとその近郊での海外実習(2016年2月27日〜3月5日)を含むロシア企画が実施された。ロシア企画は、超域プログラムにおいて企画の発案から実施までが履修生により行われた初めての企画になる。本ページでは、ロシア企画での活動と参加した履修生が得た学びの一部を紹介する。

超域プログラムの履修生の使命は、新時代の博士人材として21世紀のグローバル社会を牽引するリーダーとなり、未知で複雑で困難な社会的な問題の解決に挑むことである。本企画ではロシアでの研修を通じて、グローバルに活躍するために不可欠な国際的教養と、大きな社会的イノベーションに対する想像力という、履修生が世界で必要とされるリーダーになるために必要な素養を育成することを目的とする。

■ 背景と課題

上記の使命を果たすためには、履修生自身の高度な専門に加え、広く社会で活用することの出来る教養やスキルなどの汎用力、さらにそれらを結び付ける俯瞰力及び社会に変革を起こす独創力が求められる。本プログラムではそれら能力を掛け合わせ“超域力”とし、履修生が超域力をもつ新時代の博士人材へと養成するために、従来の大学院教育にはなかった、斬新で多彩な教育を提供、実施している。一方、グローバル教育に焦点を当てると、本プログラムではアカデミックイングリッシュやサマースクール、海外フィールドスタディなどの必修科目に加え、独創的教育研究などにより履修生自身の関心に合わせた様々な国際地域に行く機会が与えられている。しかしながら、世界には異なる価値観や文化を持つ社会が無数に存在し、現在のプログラム内容だけでこれらを網羅することはできない。さらにイノベーション教育に焦点を当てると、超域イノベーション・コア科目により課題設定・解決能力を養う機会はあるものの、過去に起きたイノベーションについて深く学び、その後の社会の変容について考察する科目は存在しない。国際社会の中で重要な立ち位置にありながら履修生が見知らぬ国および社会や、劇的なイノベーションから大きな変化を経験した社会について深く学ぶことは、世界の未来を見通し、よりよい社会を創出するグローバルなリーダーとなるために重要であり、本企画はその機会を提供するものである。

■ 目的

本企画では、本プログラムの既存科目では学ぶ機会のない価値観を持ち、かつ今後のグローバル社会において重要な役割を果たす国である「ロシア」において、研修を実施する。ロシアは世界の主要国の一つ(元G8)であり、社会主義のような、日本やアメリカとは“異なるイデオロギー”により近年まで動いていた国である。本企画では有識者との対談及び住人との交流の双方向からロシアという国の在り方を学び、実見を基に深く理解することを目指す。またロシアは社会主義の崩壊というイデオロギーの大変革を経験した国である。この社会主義崩壊が社会のあらゆる側面にもたらした変化を学び、イノベーションが社会へもたらす影響を想起する力を得ることも目的とする。更にロシアは日本と領土を隣り合っているにも関わらず、韓国や中国よりも“見知らぬ隣人”である。そこでロシアと日本の関係を見つめなおし、“日本”としてロシアとどう付き合い、“世界市民”としてどう対峙するべきかを考察することで、国際問題を解決するための力を養う。また科学技術、政治、経済、文化といった全ての方面で独自の発展を遂げた国であるロシアにおいて、履修生それぞれが自発的に専門的興味による学びに取り組むことで、履修生の専門力をも深める機会とする。

■ 到達目標

■ 実施内容

本企画では学びを最大化させるために、国内学習、海外研修、成果発信の3部構成とする。

■ 旅程と活動内容

研修は(1)超域生として学ぶべき全体ワーク(2)少人数で興味や専門に基づく活動をするグループワーク(3)個人の興味に基づく個別学習(4)学びを共有するふりかえりミーティングにより構成される。具体的なスケジュールを以下の表に示す。
(旅程は基本的に渡航前のものであり、現地での変更箇所も存在する。)

具体的には以下のような活動をそれぞれ行った。

【全体ワーク】

①ロシア科学アカデミー民俗学研究所の研究員Maxim Mikhalev氏による講演
中国に10年間在住していた経験を持ち、国内外からの視点を持ってロシアを見ているMaxim Mikhalev氏の講演から、ロシア社会に関する知識や実見の習得を目指す。

②在ロシア日本国大使館の訪問
大使館職員による講演や質疑応答を通して日本とロシア及び国際社会との関係性を学び、国際社会における日本の“利害関係のある当事者”及び“介入する第三者”としての視点を養う。

③Financial Universityの学生とのワークショップ
Financial University under the Government of the Russian Federationに通うロシア人大学生及び大学院生との議論や交流を通して、同世代のロシア人学生の姿を知り、彼らがどのようにロシアという国を見ているかを学ぶ。

【グループワーク】

①芸術と教育班
芸術と教育班 ロシアにおける芸術と教育とのかかわりについて、作品の鑑賞、実践家へのインタビューなどを通じて、その現状と可能性についての知見を得ることを目的とした。
● 行先:チャイコフスキー博物館、Konstantin Grouss氏のプライベートスタジオ、Fabrika

②大学・企業訪問班
日本とロシアの産業・ビジネス環境に現れる違いをロシアの大学・企業訪問を通じて探り、日露双方でどのようなコミットをすることが出来るのか考察することを目的とした。
● 行先:FabLab、Moskabel-Fujikura社 工場、モスクワ日本センター

③“本物の芸術”班(サンクトペテルブルク)
ロシアにおける芸術を鑑賞し、さらに創作活動を行うことにより、鑑賞する・創作するという双方向から芸術の意義を学ぶことを目的とした。
● 行先:ロシア美術館、エルミタージュ美術館、血の上の救世主教会、マリインスキー劇場

④ロシア人の価値観班(トベリ及びモスクワ)
地方都市やLGBT組織を訪れることで、多様なロシア人の価値観に触れることを目的とした。
● 行先:トベリの街及びトベリ大学、LGBTコミュニティセンター

⑤多民族共生班
若い人々のethnic groups に対する態度を学ぶことを目的とした。
● 行先:State Historical Museum, State Darwin Museum, Dr. Maxim Mikhalev interview, Lomonosov Moscow State University

State Historical Museum
State Historical Museum

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