Activity Reports超域履修生による、ユニークで挑戦的な活動のレポート。

授業レポート | 超域イノベーション総合


中小企業を元気にする新規事業創出手法

2021/5/26

課題提供者: ノーリツプレシジョン株式会社

社会環境の変化によって大企業の優位性が高まるなか、中小企業が生き残るためには企業間連携が重要だとされています。 この課題では、中小企業間連携を喚起し日本の「ものづくり」を振興する仕組みを立案しました。

■活動概要&成果

中小企業間連携の重要性

 中小企業はものづくり大国と呼ばれた日本において技術開発等の側面で重要な役割を果たしてきましたが、ビジネス環境の変化には脆弱な側面があります。課題提供者であるノーリツプレシジョン株式会社は80年代から90年代にかけて写真現像機メーカーとしての地位を築き上げたものの、デジタルカメラの普及による需要減退により新たな成長事業の創出を目指しています。一方、社会に求められる製品は高度化・複雑化しており、新規事業創出に際して中小企業間で技術・人材・設備・情報を共有することが、開発・マーケティング等の面で大きな効果を発揮すると期待されています。

魅力的なアイデアこそが連携の端緒

 中小企業間連携が拡大しない現状に対して、情報収集・分析を進める中でこのチームが得た着想が「アイデアが連携を生む」というものでした。魅力的な新規事業のアイデアがあれば、その実現に必要な技術や人材が浮かび上がり、結果として企業間連携の契機となるのではないかという発想です。しかしそのような魅力的なアイデアは簡単に生み出せるものではなく、実際に事業化可能な質の高いアイデアは数百、数千にひとつだと言われています。つまり無数のアイデアを継続的に生み出し続け、さらにそれらを精査、評価する視点が必要ということになります。

アイデアを生み出す人材と環境

 これを解決するためにこのチームが提案したものが「アイデア創出ワークショップ(WS)」と「社内教育WS」でした。前者は新規事業を中心的に担う人材を対象として、自社の強みや技術を俯瞰的に捉え直し、社会的ニーズと掛け合わせて大量のアイデアを生産するというものです。一方後者は全社横断的に低負荷・低頻度のWSを実施する、緩やかな意識改革を目的としたものです。これにより利益に直結しない新規事業開発に対する理解を醸成し全社的な取り組みとすることで、アイデアが生まれやすく評価されやすい環境を作ることが狙いとなっています。さらに、提案の中では一社にとどまらずこの仕組みを展開していくための事業化案が含まれています。今回の提案は、魅力的な事業アイデアをモチベーションとして、中小企業が有機的に連携する未来に繋がるものだと考えています。

■課題提供者からの声

ノーリツプレシジョン株式会社 代表取締役社長 星野達也 氏

 今回は、地方中堅メーカーの新規事業創出方法に関して検討していただきました。テーマとしては高難度だと考えていましたが、長期にわたる活動の間、何度も議論を重ねながら検討していただき、結果としては、弊社として大変納得のいくアウトプットを作成していただいたと感じています。我々のような中堅メーカーにとって、今後の成長のためには新規事業の創出が必須となります。一方、それは大変難しくどの企業も頭を悩ませていると思いますが、そこに対して、実践的な方法論を作成していただけましたことに感謝しております。今回まとめていただいたプロセスを、今後弊社内でも活用していこうと考えています。また、活動のなかで、学生チームと弊社社員が一緒にワークショップをするということがありましたが、その際には、弊社の社員が多くの刺激や気づきをもらうという想定外の効果もあり、経営者目線でもとても満足度の高い活動でした。今回縁あってご一緒いただいた大阪大学の学生さんたちに、改めてお礼を申し上げます。

■履修生チームの声

 仮説・検証・調整のサイクルが回せないテーマでアウトプットすることの困難さや、アウトプットのきっかけは思わぬ方向からやってくることを実感した課題でした。後者でいえば、最終報告会まで2か月を切り、未だに五里霧中だった中で、課題提供者のコメントによって突如として霧が晴れ、アウトプットの方向が決まったあの感覚は忘れることができません。
 前者はいわゆる「解決されるべき社会課題」全般に共通することであり、ステークホルダーの多さや影響範囲の広さが、サイクルを回すことの困難さの原因の1つだと考えられます。授業の中でこの困難さを克服するような解法は見つけられませんでしたが、他のイノベーターがどのようにこの困難を克服したのかといった、先例から学ぶ際に着目すべきポイントが分かるようになった気がします。同様に、これから起こるイノベーションのどこに着目するべきかも分かるようになったと思います

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