Activity Reports超域履修生による、ユニークで挑戦的な活動のレポート。

授業レポート | 超域イノベーション総合


アバターロボットがもたらす新たな教育体験をデザインせよ

2021/5/26

課題提供者: ANAホールディングス avatarin株式会社

「アバター」とは、遠隔地に置かれたロボットに意識・技能・存在感を伝送させる、先端技術を結集させたテクノロジーです。履修生チームはアバターを活用することで開かれる新しい大学教育の提案に挑みました。

■活動概要&成果

活動概要

 今回の課題は、avatain株式会社が保有する「newme」という製品の使用を前提として、数年以内に大阪大学に実装するという条件のもとで設定されました。履修生チームはこの課題に取り組むために、実際にnewmeを用いて様々な実験によって検証を重ねつつ、あるべき大学教育の未来について議論を重ねました。また、本プログラムのBasicコースで培われた分析手法や方法論を活用し、関係するステークホルダーのニーズを把握するとともに、newmeの製品的な特徴を分析することによって、製品のデザイン改善やマネタイズも含めた総合的な解決策の提案を試みました。

「アバター・コモンズ」の提案

 履修生チームは昨今の大学教育が置かれている状況を次のように分析しました。主として2012年以降、アクティブラーニングの重要性が叫ばれるようになり、大学の授業では双方向的なコミュニケーションの必要性が意識されてきました。大阪大学ではアクティブラーニング用スペースとしての「コモンズ」の整備に力を入れており、2021年現在、3つのキャンパスに7つのコモンズが設置されています。一方、2020年度は大学教育の多くがオンラインでの遠隔授業となり、学生が対面で授業に参加する機会が大幅に減少しました。授業のオンライン化は、新しい教育の可能性を広げるものではあるものの、そこには学生の「身体」が現れないため、これまでのような双方向的なコミュニケーションが困難になる、という課題を抱えています。これに対して履修生チームは、アバターを利用して学生の協働学習を促すための自由なスペース「アバター・コモンズ」を構想し、その具体的な運用方法を提案しました。

アバターが開く大学教育の未来

 履修生チームはアバター・コモンズに切り開かれる未来を次のように展望しました。アバター・コモンズは、アバターを介した学生同士の協働学習を推進するだけではなく、avatarin株式会社を始めとする民間企業との連携を創出し、大阪大学の目指すところでもある産官民学連携の牽引役として、社会と知の統合に寄与することができます。導入期におけるアバター・コモンズの利用使途として想定されるのは学生間のグループ活動ですが、それが大学に浸透していくことによって、漸次的に利用使途も拡大していき、やがてキャンパスを超えた高度教養教育が展開され、大学の垣根を超えた教育体験・共同研究が推進されていくでしょう。それに伴って、導入期には大阪大学の図書館のみに設置されていたアバター・コモンズも、大学内で設置が広がり、複数の大学で、さらには企業や官公庁にアバター・コモンズが設置される、いわゆる「アバターインフラ」が整備されていきます。履修生チームはこうした展望に基づき、アバターによって誰もが制限なく大学の知にアクセスでき、多様な個人・組織が連携しながら新しい教育が創造される未来を描き出しました。

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■課題提供者からの声

 新型コロナウイルスの影響により、人のコミュニケーションの在り方は大きな転換点を迎えることとなりました。そのような中、今回は、弊社の遠隔操作ロボット「アバター」を活用した、「アバターロボットがもたらす新たな教育体験をデザインせよ」という課題に取り組んでもらいました。アフターコロナ、ウィズコロナという目まぐるしく変わる社会情勢の下で、大学の教育におけるコミュニケーションの本質を捉えて、試行錯誤して頂いたことは、今この時にしかできない経験になったのではないかと思っております。アイデアを形にすることは様々な苦難を伴いますが、今回考えたアイデアが世の中で実装するまで支援したいと思います。

■履修生チームの声

 今回はCOVID-19の影響もあり、オンラインによる遠隔活動が主体となったことに加え、扱うテーマそのものも遠隔体験に関するものであった。さらに今回集まったメンバーは、豊中、吹田、箕面と別キャンパスを主に利用する学生であったため、移動にまつわる本課題がより自分事として捉えられ、最終提案は実現性と発展性という意味で十分なものになったと考える。一方で、私達がまさに今直面している課題を解決しなければ、という意思が働いてしまった可能性があるため、課題提供者の視点をより組み込んだ提案にブラッシュアップしていくというのが今後の課題である。しかし何れにせよ、昨今話題となっている大学の在り方に深く関わる価値の深掘りを行うことができ、大学と技術、社会との関わりを見つめ直すきっかけとなったことは間違いない。

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