● 超イノベーション・コア「超域イノベーション総合」
授業レポート

社会を考え、動かすプロジェクト
―超域イノベーション総合―

授業担当:藤田喜久雄(工学研究科) 山崎吾郎(COデザインセンター)
大杉卓三 大谷洋介 渕上ゆかり 山村麻予(未来戦略機構)

Texted BY 2013年度生 花井舜平 高田一輝 篠塚友香子 鵜飼洋史 増田壮志
担当教員 山崎吾郎(COデザインセンター)

■3.現場の実課題と向き合う

(山崎)

地域の人たちとはどんな関わり方をしていたのですか?

(高田)

プロジェクトを進めるにつれて地元の人たちとの関わり方が変わってきたと思っています。最初は課題提供者の一人であるNPOの大前幹紀さんを糸口にして地域の人と繋がっていたので、大前さんに近い立ち位置の方にお話を聞くことが多かったです。中盤になると、大前さんから紹介していただいた方に紹介していただいた方、つまり、課題提供者ご本人とは少し離れた人間関係のなかで話を聞きに行くようになりました。そうなると、自己紹介から授業の趣旨説明まで全部自分たちでこなさないといけなくなるのですが、逆にいうと、このときから自分たちの意図に沿って自由にプロジェクトを進められるようになった感覚はありますね。もちろん、意図した話が聞けないということも多くはなりましたけど、想定外の方向の話が聞けたりして有益だったと思います。

(山崎)

応じる相手があらかじめ決まっていると、自分の役割まで最初から決められているような感覚になってしまうからね。ということは、授業だからといってプロジェクトの仕組みを整えすぎちゃうと、逆に動きにくくなるという面もあるのかもしれません。そこは授業を設計する側も工夫が必要ですね

(花井)

時間をわざわざ作っていただいたり、本音でお話していただいたりした上、僕たちと話すこと自体を喜んでくださる方もいました。地域の方々に直接触れることで、この人たちに貢献したい、今後も関わっていきたいという気持ちがわいてきました。

写真_現地報告s

(山崎)

最終提案の報告会を終えて課題提供者から直接フィードバックをもらったときは、どんなふうに受け止めましたか?

(篠塚)

報告会の時は、正直にいうと、あまり私たちの意図が伝わっていないのかなという印象を持ちました。課題提供者の方々は、課題を提供した時点で、こういう提案をして欲しいなとこちらに期待していることがありますよね。最初の課題文には「地域振興につながる『空き家』活用策の提案」とあったので、地域が元気になる斬新な空き家活用策という提案をしてくれるだろうと期待して報告会に来られた方もいたはずです。ですが、私たちは空き家の具体的な活用方法ではなく、行政と住民が連携する仕組みづくり(システムへの提案)と住民主体の組織が継続する支援方法(具体的な手段の提案)の二段構えの提案をしました(図1)。私たちは、「空き家」という切り口で地域について調査を進めていくなかで、空き家問題の背景にある地域の構造的な問題こそアプローチすべき本質的な課題だと定義しました。そして、空き家活用は住民主体の組織による活動を軸に進めていくべきだという立場から提案をおこなったのです。報告会は発表時間も少なかったので、提案内容をわかりやすく伝えることに意識が向いてしまい、提案に至ったプロセスをきちんと説明して、「斬新な空き家活用策を提案してくれるだろう」という聞き手の前提を切り替えることができなかった。報告会の質疑に対応しながら、「あ、伝わらなかった」と反省しました。

京北チーム提案の概要

京北チーム提案の概要

(高田)

報告会から1ヶ月後に最終報告書の提出期限があるのですが、報告書は提案そのものを採用してもらえなくても、考え方や情報として今後参考にしてもらえるようにという意識で書きました。報告書提出後に実施した現地での報告会の時は、紙媒体で報告書を配布したのですが、それに対する反響はあったと思います。調査の過程で地元の方々の声をたくさん収集していたので、提案としてだけではなく、資料、情報としての価値も認めてもらえたように思いました。

(篠塚)

最終報告書は、地元の方の声を情報として盛り込むことで、現場にとって価値のある資料になるように工夫しました。あとは、報告会ではきちんと伝えられなかった課題定義までの経緯を明確に記し、提案の必要性が伝わるよう気を配りました。現地での報告会の様子を見て、視覚化されたデータがあるとそれを介して地元の方が意見を言いやすくなるという意味では、報告書が少しは役立ったかなと感じたのを覚えています。

(高田)

特に、おーらい黒田屋の方々を含め、地元の方にこの提案を伝えたかったので、現地報告会が出来たのは本当に良かったです。あまねく伝わったかどうかというよりも、伝えたい相手に伝えることができたのかなとは思います。

(花井)

報告会や報告書を通して、伝わらない、伝えられない、という感情を抱くことは何度もありました。ですが、これはあくまで「提案」なので、それをどう受け取るかは受け取る側次第というところで、批判されたり拒否されても仕方のないものなのかなと思っていました。でも、批判されるにしても、まずは伝えないと始まらない、伝えるべきことは伝えよう、と思い切って発表した感じでしょうか。

(高田)

プロジェクトが終わってから半年後くらいに(2016年6月)京北を再訪問したとき、課題提供者の一人である片山博昭さん(右京区副区長、京北出張所長)が、僕らの提案を受け入れてくださっていたというか、実はよく理解してくれていて、議会で政策の提案するときにも参考にしたよと言ってくださったのは嬉しかったですね。結果的には、地域にとっても、課題提供者にとっても、悪くない提案だったという自己評価でよいでしょうか(笑)。

写真_現地調査1s

(山崎)

総合の授業を通じて、どんなことを学んだと思いますか。これまで大学や大学院で受けてきた授業との違いを何か感じたでしょうか?

(篠塚)

普段の研究では、「考える」という事は沢山していますけど、そこで考えたものが実際に動き出すところ(社会実装)まで付き合えることは中々ないですよね。でも総合の授業は、どういう提案をしたら実際に社会のなかでものごとが動くのかというところまで考えるプロジェクトです。実装の段階で色々なしがらみも出てくるので、課題に対する答えを見つけるだけでは解決できなくて、そこに関わる人たちの意図が複雑に絡み合う状況でどう動くかも考慮しないといけません。自分たちの考えたことが上手くいかない、じゃあどうしよう。こっちがダメだったからあっちを試してみよう、と。このように、社会実装まで一連のプロセスを経験できたことは大きかったです。

(花井)

僕たちの活動がどれだけ地域に影響を与えたかはわかりません。でも、少しだけでも良い影響を与えたという手ごたえを、先日の再訪問のときに感じることができました。

(高田)

展開の授業では、課題や目標を挙げていても、「そうはいっても学生の考えることだし短期のプロジェクトだから…」という甘さというか印象があったのではないかと思います。ですが、総合は8か月という長期間のプロジェクトだからかもしれませんが、課題を提供する側の期待もすごく高くて、「良い提案があったら本当に採用したい」ということを、お世辞かもしれないけど何度もいわれていました。それを感じて、僕たちのモチベーションは凄く上がりましたね。これがなかったら、ここまで議論は白熱しなかったかもしれない。

(篠塚)

混迷期は、もうええわ、適当になんかかたちにしとけ、みたいな投げやりな気分になり、モチベーションが下がったこともありましたけどね。そういう時は先生たちのコメントに対しても、「現場の状況もわからず、なんか理論的なことばっか言ってるな」と感情的になってしまって。

(高田)

下がったテンションを、ご飯と出張で上げる、その繰り返しです。ご飯は大事。3期生のみんなはちゃんとご飯食べて議論しなよ!

(鵜飼)

それ、高田だけやん!

写真_ご飯を食べようs
■1.課題を(再)定義する ■2.プロジェクトを通して学ぶ ■3.現場の実課題と向き合う
■4.おわりに