● 超イノベーション・コア「超域イノベーション総合」
授業レポート

社会を考え、動かすプロジェクト
―超域イノベーション総合―

授業担当:藤田喜久雄(工学研究科) 山崎吾郎(COデザインセンター)
大杉卓三 大谷洋介 渕上ゆかり 山村麻予(未来戦略機構)

Texted BY 2013年度生 花井舜平 高田一輝 篠塚友香子 鵜飼洋史 増田壮志
担当教員 山崎吾郎(COデザインセンター)

■2.プロジェクトを通して学ぶ

(山崎)

プロジェクトのイメージをつかむまでに時間がかかったようですが、それまでは大変だった?

(高田)

プロジェクトの半ばくらいまでは「まだ情報が足りないから判断できないんだ」とみんな言っていたように思います。だから、どんどん調査してどんどん情報を集めないと方向性は決められないだろうなって。そして集まった膨大な情報を処理するのに精いっぱいで、でもまだ足りない気がして。どこかで、「よし、ここまでの情報で一度提案までもっていってみよう」という決断をしなくてはいけなかったんですが、その踏ん切りをつけるのが難しかった。

(篠塚)

議論が堂々巡りしている感覚は自分たちの中でもありました。情報はどんどんたまっていくけれど、議論は全く進んでいないっていう。堂々巡りしている議論がいつも同じようなところに行きつくなという感じ、たぶんこれがこの課題の本質だろうという感覚はあったのですが、なかなか決断できなかった。私がリーダーなので決断しなければいけなかったのですが、不確定要素が多い段階で、チームの合意のもと決断するというのが本当に難しかったし、恐怖ですらありました。

(鵜飼)

最初は、「具体的な解決案を考える」みたいな局面があって、その次に「課題を捉えなおさないと」と思い始めたんだよね。で、それはしばらく続いて、篠塚さんが言うように、議論を進めていく中で「この辺が怪しい」と思う箇所はいつも同じだというところに行き着くようになった。それで、じゃあそれを掘り下げて解決するためにはどんな奇想天外なアイデアがあるのか、とやっぱり考えていました。でもあるとき、この問題点を改善するだけならそこまで奇想天外なアイデアは必要ないんじゃないかと、当たり前のことを当たり前にできるようなアイデアさえあればいいのではないかと冷静に考えることが出来るようになって、そこからグンと議論が進んでいったという感じですかね。

写真_座談会風景s

(山崎)

プロジェクトに取り組んでいるときに楽しかったことや大変だったエピソードがあれば教えてください。

(高田)

現地に足を運んで、普段、大学では出会えないような人たちと話せたのは楽しかったです。例えば、おーらい黒田屋の人たちは、大学に所属しているだけでは絶対に会えない人たちですよね。世間にはこんな考え方をする人がいるのかという新鮮な驚きがありました。大学内で行われている議論が、いかに視野の狭いものだったかという感覚をもつことも出来ました。まあ後々、地元の方々の気持ちがわからず、苦しむ原因にもなるのですけど。でも全体としては、地域の人たちと関われて楽しかったですね。

(鵜飼)

僕は滋賀県の田舎出身だったからか、地域の方々の考え方は意外と予想通りというところもありました。子供のころから両親の姿を見ていたから、田舎には田舎の複雑な状況があるというのも実体験として感じていましたし。高田君と違ってそこは結構すんなりと受け入れられたかな。でも楽しかったですね、懐かしいというか。

(篠塚)

大変だったことは、課題を再定義するまでの混迷期ですね。先ほども話しましたが、議論が堂々巡りになって、次第に「前に進んでいないのでは」ということだけをチームのみんなが共有するというような状態になる。でも、どうしたらその状況を抜け出せるのかは誰にもわからなくて、この時期は本当にしんどかったですね。今思えば、プロジェクトの全体像が掴めていなかったんだと思いますが。

(花井)

毎週、授業時間外に集まって議論をしていましたが、延々と結論が出なくて、みんなイライラしていましたね。チームが破綻するまではいきませんでしたけど。やってる感覚はあるけど進んでいない、頑張っているのに結果が出ない、そんな感じでした。

(篠塚)

あるときは、先生方に提出する週報に「高田と篠塚がケンカ」って書かれてしまいました!ケンカではなくて、意見の相違があって議論していただけですけど、白熱してしまって。

(高田)

本当にこの時期の議論はしんどかったですよ・・・夜になるとお腹がすいてしまって。お腹がすくと僕、イライラしてしまうんですよ。

(鵜飼・花井)

そしてお腹が満たされるとケンカ?も終わるという。最終的に、ミーティングには食事を持ってくることになった(笑)

(山崎)

このイノベーション総合の授業は、大学院の3年目に受講する、集大成的な位置づけで設計されています。プログラムのカリキュラムとして考えた場合に、実際に受けてみてどんな授業だったと思いますか?

(篠塚)

超域のカリキュラムを見ると、「超域イノベーション導入(序論)」から始まり、順次、プロジェクトを回すのに必要な視点や方法論を学ぶようになっている。ですが、実際にプロジェクトを長期間回すというのは初めての経験だったので、授業で学んできたことを活かせたかというと、少し疑問です。暗中模索なところもあったし、次にどうすればいいのかがわからない局面がいくつもあって。学んだことをダイレクトに使用するのではなく、自分たちの向き合っている課題に応じて、さまざまな情報や手法を組み合わせて使わなくてはならないところも難しかった。そして私の場合は、専門研究で参与観察型の調査を実施しているので、たまに現地を訪問して、関係性もまだ構築できていない状態でインタビューをして、そこでの語りをデータとして扱っていいのかと考えたりもしました。

(高田)

篠塚さんが言うように、総合の前に色々な授業で、調査方法や分析方法の要素は授業で学んでいたのですけど、その意図がその時にはつかめていなかった。総合のプロジェクトの後で振り返ってみると、あの授業の意図はここだったのかな、というのがわかってくる。総合の後にもう一度その授業を受け直したら、もっと学びが深くなるかなという印象は持っています。

(花井)

研究や普通の授業と違って、プロジェクトになると一気に現実味が増して、関係者が多くなるのも特徴だと思います。誰かを立てると誰かが下がるし、全員が喜ぶ解なんて存在しない。それを理解した上で、その利害のバランスや、何に焦点を当てるのかを考えなくてはならない。利害関係がからむ中で、どう立ち居ふるまったらいいのかが難しいところでした。

(篠塚)

いま、後輩である3期生(2014年度生)の総合の授業のTAをしているのですが、TAとして少し離れたところから総合の授業を見るようになってようやく、全体を落ち着いて俯瞰できるようになりました。全プロセスを経験した後だからとは思いますが、去年は言われてもピンと来なかった先生方のコメントの意図が、今はすんなりと理解できるようになっていますね。

■1.課題を(再)定義する ■2.プロジェクトを通して学ぶ ■3.現場の実課題と向き合う
■4.おわりに