● Transferable Skills Workshop1

自分を知る、メンバーを知る

担当教員:小林傳司(大阪大学CSCD)、山内保典(大阪大学CSCD)
TEXT BY:山内保典、中川智絵(大阪大学未来戦略機構)

3. 授業内容

 このモジュールでは、最初の3回で様々な表現方法を体験し、残り2回で専門を生かしたキャリアを考えてもらいます。最初の3回で自分を多様な形で表現することは、自分自身について考えを深め、意識化することを促します。その後、博士人材の武器となる専門性について相対的に見ることを体験し、キャリアパスを展望することは、超域での5年間での学習プランを立てる基礎となります。それに加え、毎回、今週学んだ内容に関する振り返りと、次週のワークに関わる宿題が課されます。これはアクティビティによる学習の型を習得するきっかけとなります。



 これらを通して「自身の性格やスキル、専門分野、置かれた環境を客観的に分析できるようになる」、「状況に応じた自己紹介ができるようになる」、「他者に質問し、話を聴いた上で、その話をまとめ発表することができる」、「キャリア上の課題を列挙し、課題解決に向けてすべきことを明らかにできる」ことが学生の達成目標となります。


4. 成果

 このモジュールの成果は、いろいろなレベルで考える必要があり、さらにそれぞれの評価には、難点があります。
 一つ目は、個々の学生のスキルの向上というレベルです。基本情報として、パフォーマンスや提出物、あるいは、振り返りシートの記述など、個々の学生の状況はポートフォリオとして記録されており、そこに学習を見てとることはできます。しかし、それらはいわゆる量的な評価にはなっていません。加えて、より原理的な問題もあります。Transferable Skillsは、その定義から、「このモジュールを通して学んだものを違う状況(例えば、研究、他の授業、課外活動)で活用する」こと、「他の状況Aで学んだものを状況Bに活用する際に、モジュールを通して学んだスキルを活用する」ことが評価対象になります。モジュール内でうまくスキルが使えても、他で活用できないのであれば、そのスキルはTransferableではないのです。したがって、このモジュールで獲得されたスキルの評価は、修了後も含めて継続的に、様々な場面で実施する必要があります。
 二つ目は、超域のカリキュラムに対しての成果というレベルです。このモジュールは、冒頭のガイダンスで「サプリメント的な授業」と紹介しており、上述したように、他の授業での学習や研究活動を支えたり、円滑にしたりすることも重要な役割です。例えば、野球にはランナーを進めるために確実にゴロを転がす「送りバント」という作戦があります。送りバントをした選手を個人として見た場合、その選手はゴロでアウトになっているにすぎません。しかし、打線としてみるとチャンスが広がり得点する可能性が高まっているのです。同様に、このモジュールも、カリキュラムという打線の中で評価する必要があります。一般に授業評価は個々の授業に対して行われますが、カリキュラムを通した学習プロセスの中での貢献について、別の評価方法を開発する必要があると考えています。
 三つ目は、表現が難しいのですが、癒しとしての成果です。本モジュールは、学生から癒しの時間と評されることがあります。各自の一日の生活について話したり、理想のリーダー像をコラージュで表したり、ワークは楽しくリラックスしたムードで進められますし、それは教員側が狙ったものでもあります。スポーツの世界では、アクティブ・レスト(積極的休養)という考え方があります。これは、横になって一日を過ごすなどの消極的休養に対し、軽い運動など体を動かすなどの休養を指し、こちらの方が効率良く疲労回復できるという研究結果があります。私のモジュールは、知のアスリートである学生たちにとって、知的なアクティブ・レストになることを目指しています。研究や講義などでギリギリまで負荷をかけた頭に、いつもと違った刺激を与え、リフレッシュしてもらうのです。