● Transferable Skills Workshop1

自分を知る、メンバーを知る

担当教員:小林傳司(大阪大学CSCD)、山内保典(大阪大学CSCD)
TEXT BY:山内保典、中川智絵(大阪大学未来戦略機構)

1. 「Transferable Skills」とは

 超域で「Transferable Skills Workshop 1:自分を知る、メンバーを知る」というモジュールを担当させて頂いています。Transferable Skillsとは、「1つの文脈で学んだスキル、例えば、研究を行う上で学んだスキルのなかで、他の状況、例えば、研究であれ、ビジネスであれ、今後の就職先において有効に活用できるようなスキル」のことを指します。EU圏では、10年以上前から、アカデミック人材を対象に、これらのスキルのトレーニングが展開されています。  本モジュールの開発は、Transferable Skills Trainingで先導的な役割を果たしているエジンバラ大学の研究者/実践者と共同で進めています。2013年度の実践に関しても情報を共有し、来年度に向けて、新規ワークの開発や既存ワークのカスタマイズなどを行う予定です。


2. 位置づけ

2.1 超域アドミッションポリシーにおけるTransferable Skillsの位置づけ

 「専門や領域を『超えることでしか生まれない』を生み出す」人材を育成する上で、自分の専門知識やスキルを他の状況で有効に活用するスキルであるTransferable Skillsは、その柱の一つになるでしょう。実際に超域では「汎用力」がアドミッションポリシーに位置づけられており、本モジュールの役割と、今後の発展への期待は大きいと考えています。

2.2 「自分を知る、メンバーを知る」スキルの位置づけ

 本モジュールで扱う「自分を知る、メンバーを知る」ことはリーダーの基本的な資質です。「彼れを知りて己を知れば、百戦して殆うからず」という言葉があるように、今も昔も競争を勝ち抜き、新たな社会を協創していくには、自分自身、自分の仲間や組織、ライバルについて知らなければなりません。
 これらのスキルは、イギリスで、優秀な研究者が持つ素養やスキルを示すために用いられているResearcher Development Frameworkでいうと、主にDomain B「Personal effectiveness」にあたり、一部Domain D「Engagement, influence and impact」の内容も含んでいます。
 また超域コンパスでいうと、本モジュールは、超域人間力の「Trust」、超域ネットワーキング力の「傾聴・情報リテラシー」と「説明・プレゼンテーション」、超域思考力の「メタ視点」、超域リーディング力の「ビジョン」に対応付けられています。


2.3 カリキュラム内での位置づけ:初年時最初の授業としての役割

 超域カリキュラムの中では、初年次の最初に位置付けられています。この時期に開講される授業には、それ以降の超域での学習に必要な基礎固めをし、超域という新しい学習環境へのスムーズな移行を助けることが期待されます。

2.3.1 「自分とメンバーに関する知識」の提供

 このモジュールでは、「自分/他者に関する知識」を獲得すると同時に、それらの知識を獲得するスキルや、獲得した知識を表現するスキルを学びます。自分に関する知識を獲得する中で、「現在の自分」と「将来の理想の自己像」のギャップが明確になれば、学習プランやキャリアプランを自身で設計する際の助けとなるでしょう。またその知識を獲得するスキルは、途中でのプラン変更や修正に役立ちます。またメンバーに関する知識は、今後、共同学習やチーム活動を効果的に進めるために欠かせません。メンバーから何を学ぶことができるのかを意識することで、超域での5年間での学びも充実するでしょう。

2.3.2 「学習の型」の提供

 超域では、社会的問題解決ラーニングなど、アクティビティを通した学習が予定されています。しかし、ともすれば、こうしたアクティビティは「やりっぱなし」になってしまいます。アクティビティを学びにつなげるには、ある種の学習の型が必要です。本モジュールは、その型を身に着けるための試行錯誤の場として機能します。本モジュールの授業はアクティビティ中心で行われ、ワークシートや毎回の宿題を用いて「振り返り」を習慣づけるなど、学習の型を明示するようにしています。加えて、用いるワークは、それぞれ30分程度のある程度独立したものなので、一つの失敗が致命傷になることなく、いろいろと試行錯誤することができます。本モジュールで得た学習の型は、将来の本格的なアクティビティでの学びの基礎になると考えています。

2.3.3 議論する雰囲気づくり

 超域では、議論する機会が多いのですが、出会ったばかりの4月は、気軽に発話できる雰囲気が学生間にまだできていないことがあります。さらに言えば、建設的批判や価値観に関わる議論をするためには、異なる研究科から来たメンバーがもつ価値観や行動様式、専門性を理解し、お互いに信頼し合い、敬意を持ち合うことが必要です。本モジュールには、そうした相互理解を促す役割があると考えています。