4. 合宿二日目

4-1. ピラティス、フィールドホッケーチーム対抗戦

 翌朝、6時30分に全員集合し、トレーナーの小田島政樹氏によるピラティスのワークショップが開かれました。ピラティス(ピラティス・メソッド)とは、もともとは第一次世界大戦中のドイツにおいて負傷兵のリハビリテーションのためのフィットネスプログラムでした。呼吸法を活用しながら、主に体幹の深層筋(インナーマッスル)をゆるやかに鍛える方法です。履修生は、初日の激しい運動により硬くなった筋肉を解しながらピラティスは実践していきました。小田島さんは、いくつかの動きを紹介していただきましたが、何のために、どの筋肉の部分を使うのかについて非常にわかりやすい説明していただき、理論的かつ実践的な理解を得ることができたと思います。また小田島さんは合宿期間中を通してトレーナーとして、履修生のみならず教員の困ったときの駆け込み寺的存在として、あらゆるリクエストに対応され、とても心強い存在でした。
 朝食後は再び、森本さんによるメンタルトレーニングが行われ、その後、前日のホッケーの続きとなりました。まず、チーム対抗で、ボール出しゲームをおこないました。これは決められたコートの中から自分のボールを守りながら、相手チームのボールをエリアから外に出して、最後までボールを守っている人が多いチームが勝ちになるというものです。このゲームはシンプルですがかなりエキサイトしていきました。さらに、途中からフリーの鬼として岡本さんと超域教員1名が参加し、手当たりしだいにボールを外にだして、大いにひんしゅくを買いました。
 その後、チーム対抗でリーグ戦を実施しました。ボールは通常のホッケーのボールでは危ないので柔らかいボールを使用しました。またチームによっては人数が揃わないので、超域教員、さらにはこの日から参加となった現役オリンピック選手の江里口匡史さんもチームに加わることになりました。試合はそれぞれのチームが戦略を立てて、役割分担をして相手のゴールを果敢に狙って行きました。履修生全員にとって馴染みのないスポーツであるにも関わらず、すんなりルールを理解し試合を進めていきました。一つひとつの技は全くの素人ですが、ボールをゴールに入れるためにするべきことを考え、合理的に動く姿が見られました。例えば、男子よりも体力の劣る女子はぶつかることを避け、ボールがゴールに向かうための良いポジションにいて、スムーズなパスやゴールを狙っていました。2日目になって少しずつ、ライフスキルが生かされてきたように見えました。


森本さかえ氏:指導の感想
こんなに教えやすい人たちに教えたことはありませんでした。一つ教えれば、それをそれぞれがちゃんと考えて実行に移したり、チームでゲームをするときも体力や技術がない人も自分なりの役割を見つけて、戦略・戦術が実行できていたことがすごかったです。

4-2. ピラピラゲーム、サーキットトレーニング

 ホッケーのチーム対抗戦終了後、超域履修生のルール作成チームが考案したゲーム「ピラピラゲーム」を行いました。このゲームは、体に括りつけたタスキをチーム対抗で奪い合い、その本数を競い合うというゲームです。自分のチームのメンバーを守りつつ、相手のチームから紐を奪って行かなければいけません。超域履修生は真剣に、チーム内の体力の配分や作戦を考えて取り組んでいました。
 昼食後、江里口さんと山田明仁アスリートネットワーク事務局長(元400M日本代表・大阪ガス陸上競技部副監督)によるサーキットトレーニングとなりました。本格的なトレーニングの方法を現役オリンピック選手の指導で行なっていきました。一連のトレーニングはかなりの負荷がかかるもので、超域履修生もかなり体力的な限界に到達している様子でした。このトレーニングで女子の負担を軽く設定したことがきっかけで、それまでの合宿メニューが男子と女子が同じ負荷で行われていたことに何人かが気づきました。「ハンデをつけろ」という主張がとどきましたが、この合宿の趣旨は自分自身の体力の限界を知り、その範囲でパフォーマンスを発揮すること、さらにチームではそれを役割分担することで、女子は体力の差を作戦でカバーすることが目的であると説明しました。しかしあくまでも「勝ち」にこだわる超域履修生はなかなか納得しませんでした。


4-3. テコンドー基礎、試合

 2日目のメインとなった競技は、岡本さんによるテコンドー体験でした。まず、テコンドーの基礎では、テコンドーのルールについてビデオを見ながら学習し、その後、ミットの蹴り方、防具を着けて基本の技の練習に移りました。補助インストラクターとして山下昭子氏、さらに大阪経法大テコンドー部の芝田健太さんと三橋佑樹さんにもデモを披露していただくなどの協力をいただきました。
 蹴りの練習をすることは大学院生の生活ではほぼありません。さらに格闘技は本来、女性の得意分野ではありませんが、女子も消極的な姿勢を見せず、初めてのテコンドーに果敢にチャレンジしていました。さらにチーム内では他のメンバーに教え合ったりと、フォームをチェックしたりするような協力しあう姿が見られました。何よりもほとんどの履修生にとって初めての体験であるテコンドーというものに、ほぼ全員が興味を持ち、サーキットトレーニングの後で体力的も限界でありながらも興味を持って取り組む姿がとても印象的でした。
 最後は、チーム対抗のテコンドーの試合でした。男女それぞれのトーナメントで、試合を行いました。組み合わせによっては、同じチームのメンバーと対戦しなければいけない部分が出てきてしまったのですが、その試合であっても真剣に試合に臨む姿が見られ、「同じチームならば強いメンバーが勝ち上がる方が良い作戦ではないか?」と学生に問いかけたところ「初めての試合でわからないから、全力でやってみた方が次の試合でも上手くできる」という回答でした。こういう所でも超域履修生の学びや勝負に対する妥協のない姿勢が強く伺うことができ、普段見ている以上にそれが揺るぎないものであることが分かり少々圧倒されました。さらに女子もそれぞれのレベルで真剣に試合に望んでいました。最後は男女の決勝となりましたが、それぞれのチームが真剣に応援し、その場の雰囲気はなんともいない真剣な空気となり、教員側からはほとんど声もかけることができないとても緊張感の高い場となっていました。試合自体のレベルもとても高く、「だれがあの技を教えた?」とインストラクター側が首をかしげるような技も飛び交いながらの試合でした。そして試合後は全員笑顔に戻り、再び和やかな空気になりました。お互いに蹴り合いをしているのでどうなることかとこちらとしては少々心配しましたが、このあたりはみな気持ちを切り替える力もとても強いものがあると感じました。

山下さん・芝田さん・三橋さん:指導の感想
一つ教えるごとにプラスして返ってきたので、教えている方もとても嬉しかったです。(山下さん)

学生の方々の集中力や理解力はすごかったです。テコンドーを楽しく体験しているのを見ているとこちらも元気をもらうことができました。
(芝田さん)

大学院生の学ぶ姿勢、何か少しでも何かを得ようという向上心に私はとても感銘を受け私自信がとても学ばせていただいた一日となりました。
(三橋さん)

4-4. 洲本市の子どもとの交流会

 ほぼ履修生の体力の限界を迎えていた2日目夜に地元の洲本市の子どもたちとの交流会が開催されました。この交流会は、洲本市教育委員会事務局の岩熊隆之氏のご尽力により、普段接する機会がない「大学院生」がせっかく大阪から来るのだからということで開催されました。交流会の企画も超域履修生のチームが行いました。交流会チームは、超域履修生の非常に多様な背景から3つのトピックを選び、それぞれのブースを作って、参加者にブースを巡ってもらうというとても斬新な企画となっていました。子どもたちに夢と希望を持ってもらうというコンセプトに従い、なかなか子どもたちにイメージのできないものをイメージできるように、そして身近なテーマということで、「夢」・「勉強」・「スポーツ」・「英語」の4つのテーマが設定されていました。①夢は、子どもの頃の夢,今の夢,子どもの頃の夢からの変化について、②勉強は、好きだった科目、勉強で頑張ったこと、勉強方法について、③スポーツは、現在しているスポーツ、スポーツをやっていてよかったこと、習い事の経験について、④英語は、英語を話すためにいること、必要性を感じた事などをテーマとして、岡本さん・江里口さんも混じってブースでディスカッションを行うというものでした。
 交流会は、履修生の金谷くんのファシリテーションで始まりました。アイスブレーキングは、超域履修生と参加者の子どもたちとその保護者の皆様も混じって金谷くんの設定したお題を共有する仲間探しをするというものでした。アイスブレーキングの時点で会場全体にとてもいい雰囲気が出来上がりました。このあと3つのブースでの座談会がスタートしました。やはり子どもたちは、「スポーツ」のブースにたくさん集まっていました。江里口さんは「英語」のブースに参加し、世界で戦うトップアスリートも英語によるコミュニケーションが重要であることをわかりやすく伝えられていました。岡本さんは、「勉強」のブースに参加されていました。こちらは名前から子どもたちに敬遠されていたようで、どちらかと言えば保護者の方々に人気があったようです。全般的に超域履修生たちは、子どもたちを相手に丁寧に話かけていました。交流会の後、超域履修生は子どもたちが何かを得たのか不安そうでした。しかし、この機会を設定していただいた洲本の教育委員会の方々は、子どもたちが阪大生と触れ合うこと自体が、素晴らしい機会であると考えておられて、一生懸命取組んだ学生たちや、サポートの教員に対して非常に感謝しておられました。超域履修生は、実際の社会に触れることができる貴重な機会を得ることができて、超域生にとっても、子どもたちにとっても、素晴らしい時間を共有できたことと思います。交流会が終わっても、会場のあちこちで記念撮影が行われたり、履修生からなかなか離れない子どもたちがいたりしました。

1.目的 2.事前学習 3.合宿一日目 4.合宿二日目 5.合宿三日目 6.事後学習・まとめ