Professors & Lecturers様々な分野の教員が履修生の学びを支援します。

特任助教中井 好男Nakai Yoshio

専門分野
応用言語学(日本語教育)
担当業務
履修生支援・海外研修・総務
研究関心
第二言語としての日本語とそれを用いて日本社会を生きる人々に関する事象
ろう者を家族にもつCODA(Children of Deaf Adults)やSODA(Siblings of Deaf Adults/ Children)が抱える課題  
人を対象とする質的研究や当事者研究

研究紹介

  私は現在、日本語を第二言語とする外国ルーツの人々やろう者家族の経験を対象とした質的研究を行っています。その中で、言語的・文化的マイノリティの行為主体性やアイデンティティ、社会が作り出す課題について、応用言語学だけではなく社会学や心理学などの知見を借りながら読み解いています。今取り組んでいる研究に至るまでには紆余曲折がありましたが、その原動力となっていたのが日本語教育の実践でした。私はこれまで、留学生や企業の研修生、看護師・介護福祉士候補者など、様々な目的と背景を持つ人々の日本語学習支援を行ってきました。その中で大切にしてきたことは、自律性につながる学習者オートノミーの育成や日本語話者としてのアイデンティティの構築です。そして、これらを主眼においた実践を進める中で、学習動機の形成過程を図式化したり、ポップカルチャーやSNSを駆使して自律的に組み立てられた教室内外の学習活動を分析したりしながら、教育現場の改善や生涯学習につながる自律性に迫ってきました。それと同時に、日本に住む外国ルーツの人々の経験を記述することで、行為主体性や日本社会が抱える構造的課題についても考えてきましたが、彼らの経験を理解しようとすればするほど自身が置かれている環境に向き合わざるを得なくなっていきました。私が取り組んできた質的研究が私の研究的関心を外からどんどん内に向かわせたということです。それで現在は、ろう者の両親を持つCODA(Children of Deaf Adults)という言語的・文化的マイノリティの当事者として自身の経験に迫る当事者研究も行っています。社会から受け取るメタメッセージが作り出す「障害者の家族」という自己スティグマや聴文化とろう文化の違いから生じるコミュニケーションの摩擦が生み出す生きづらさなど、日本社会を生きる外国ルーツの人々との対話を通して自身の経験が持つバイカルチュラルな側面に気づかされました。言語的・文化的マイノリティという当事者同士の対話には、既存の言説では説明できない当事者特有の問題の記述を可能にするだけではなく、自己のこれまでの生を複眼的に辿ることで、スティグマからの解放をもたらす副次的効果があります。このような特性を持つ対話を用いて言語的・文化的マイノリティの生きづらさの探求することによって、共生社会に向けた社会的課題を明らかにすることに加え、生きづらさを客観視し、そこから解放されることを可能にする実践と研究に取り組んでいます(言語的・文化的マイノリティの経験についての文字による対話も試みています。よかったらどうぞ。https://livinginjapan.me/)。

 

 

私にとっての超域とは?

日本社会とその礎を作る教育には、日本人/非日本人、日本語母語話者/日本語非母語話者、音声言語/非音声言語、非障害者/障害者といった二項対立にもとづく区別や差別が深く浸透しています。そのため、「日本人」が目指してきた「外国人」との共生はおろか、「外国人」では括れない人々との共生の実現には程遠い状況にあります。この現状を変えるには、学問的にも方法論的にも既存の枠にとらわれない学際的な形で、共生を考え、実現していく必要があると私は思います。私たちをつかんで離さない従来の枠組みを乗り越えることを可能にし、これまで脈々と続く世界のあり方を脱構築し、再構築できるのがこの「超域」という場だと思っています。

超域生へのメッセージ

私は「超域」というのは一人ではできないと思っています(もちろん超俯瞰的な視点と思考に加えて、それを実現する行動力を持ち合わせている方は別ですが)。そのような「超域」を実現するための方法が対話と協働であり、対話を通して自身を主体的、かつ自律的に見つめ直すとともに、社会と自身のあり方を変えていくための視野やスキルが身につけられるような活動を組み立て、共に実践していくことが求められるのではないかと思います。私は自分ができないことを人にやってくださいとは言いません。私もそれができるよう皆さんと一緒に「超域」に取り組んでいきたいと思っています。よろしくお願いします。