実施体制

発足から現状に至る経緯

超域イノベーション博士課程プログラムは、大阪大学が文部科学省による博士課程教育リーディングプログラムのオールラウンド型のもとで2012年度に発足させ、その支援期間終了後も独自の取り組みとして推進しようとしている大学院の特別プログラムです。

文部科学省による大学院振興施策の中にあって、2002年度からの21世紀COEプログラムとそれに続く2007年度からのグローバルCOEプログラムでは、伝統的な専門領域毎に支援が展開されましたが、2011年度からの博士課程教育リーディングプログラムでは、先の2つの枠組みとは異なり、俯瞰力と独創力を備えたグローバルリーダーの育成のための専門分野の枠を超えた学位プログラムの構築が要請されました。中でも、オールラウンド型では、グローバル社会を牽引するトップリーダーを育成するための大学の叡智を結集した文理統合型の学位プログラムの構築という、旧来からの大学院教育の延長線上には想定できない課題への取り組みが要請されました。

大阪大学では、オールラウンド型という新規な要請に対して、2011年度に「超域イノベーション博士課程プログラム」という構想を申請し、首尾よく採択に至り、部局横断型の教育や研究の取り組みを推進するために設置された総長直轄の未来戦略機構の第一部門に位置づけられ、全学体制のもと、2012年度から履修生を受け入れて、教育活動を展開してきました。申請時にあって、社会における課題が複合的で複雑になってきているもとにあって、解決に向けた基盤は細分化され高度になっていることから、核となる専門力には博士レベルのものが必須になるとともに、その専門を超えることも求められ、加えて、課題に対峙するための取り組みや組織は大規模になることから、それらを牽引するための汎用力にはより高度なものが求められるという考え方のもと、「 専門力 × 汎用力 ⇒ 超域力 」という構図を教育の中核に据えていました。そのもと、研究科での専門力の教育に対して汎用力の教育を担うプログラム独自のコースワークは、当初、大阪大学が強みとしていたコミュニケーションデザイン・センターやグローバルコラボレーションセンター、学際融合教育研究センターなどによる部局横断型の教育プログラムのリソースを活用することにより高度教養教育を先鋭化する形で立ち上がりました。その後、学年進行にあわせて、社会課題と向かい合いイノベーションのためのビジョンやプランを構想するための資質や能力を開発するための科目や活動が立ち上がってきました。2014年度には、コースワークが重点的に展開される1年次から3年次までの科目群が立ち上がったことを受け、高度教養としての“知識”、専門を社会で活かすための“スキル”、イノベーションを構想するための“統合”という3つの軸から教育の全体像をとらえる構図が形成されました。2015年度には、同構図のもとにコースワークにおける科目のシーケンスを明確化し、その趣旨を教育目標、ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、アドミッション・ポリシーとして整備するに至りました。加えて、2016年度からは3つの軸の中でも、本プログラムとして独自に科目開発を進めてきた“統合”の意味合いについて、旧来からの大学院教育が専ら担ってきたそれぞれの領域ごとの研究や教育ではその領域内に限定した科学性が追及されてきたことに対して、社会における課題をリアルに解決しようとする際には、課題の理解や解釈、解決策の構想などにおいて、その種の科学性とは別に、曖昧な状況にあっても相応の科学性に立脚することが求められているという立場から、コースワークを構成する各科目の意義や意味を再定義するに至りました。さらに、2016年度と2017年度のプログラム修了生は、“社会で活躍する博士人材”という意味合いにおいて、かつての博士課程修了者とは異なるキャリアパスを開拓してきました。

以上のような経緯を経て教育の理念や内容を充実させ発展させてきた本プログラムは、2017年度に実施された日本学術振興会の委員会による事後評価において、学位プログラムとしての内容や修了者の成長とキャリアパスの構築が高く評価され、総合的にもA評価を得るに至りました。その間、博士課程教育リーディングプログラムにかかわるフォーラムなどのイベントに際しては、全採択プログラムの中から同枠組みの代表選手としての取り扱いを受けることもありましたし、産業界からも高い関心を得ることができました。大阪大学にあっても、第3期中期目標・中期計画 (2016~2021年度) における教育関連での中核取り組みとなっている「高度汎用力」というコンセプトの形成にも影響を及ぼしました。

さて、文部科学省の博士課程教育リーディングプログラム事業による支援 (2011~2017年度) のもとで上記のような展開と発展を遂げてきた本プログラムは、2018年度以降も、大阪大学の独自の取り組みとして自立し進んでいこうとしています。博士課程教育リーディングプログラムで要請されていた俯瞰力や独創力の育成、さらには、オールラウンド型で標榜されていたあらゆる学術を統合する学位プログラムの必要性は、この間に進んだ社会や経済における状況変化のもとで、例えば、Society 5.0として標榜される超スマート社会やSustainable Development Goals (SDGs) という横断的な課題群への挑戦のもとで、より強く求められるようになってきています。大学院教育への要請は、それらのもと、旧来からの基盤となるものをも含めた場合には、かつては想像することができなかったような広がりを見せつつあります。大阪大学では、そのような多様化の動向に対して、大学院教育を「知の探求」・「知と知の統合」・「社会と知の統合」という3つの軸のもとに重層化していこうとする構想が進みつつあります。本プログラムは、同構想のもとにあって、「社会と知の統合」にかかる大学院の副専攻方式による特別プログラムとして位置づけられ、部局横断型の学位プログラムを統括する国際共創大学院学位プログラム推進機構の一部門として、今後も進化を続けていくことになっています。

なお、本プログラムが今後の教育で目指していく「社会と知の統合」の意味合いについては、人材像という視点からは『社会システムの変革を導く異次元のイノベーションを目指し、さまざまな境域を超えて社会における状況を俯瞰した上で、その眺望の中から斬新な課題を横断的に見つけ出し、その解決により新たな価値を創出することに向けて、統合的な知を創造していく』こととしています。

(2018年9月記)