Career path修了生インタビュー

金南 咲季

出身研究科
人間科学研究科
専門分野・領域
教育社会学・社会学(移民と教育、子育てと格差)
現在の所属・役割
椙山女学園大学 人間関係学部 専任講師
キーワード
教育、社会学的想像力、専門社会調査士、
フィールドワーク、好奇心

2017年度修了生

博士人材として社会に出ることについて、大学院での研究内容との関わりや今の仕事を選んだきっかけ、博士人材だからこそ社会に提供できる価値など、感じるところをお聞かせください。

 私は博士課程修了後、愛知県にある私大で2年間働いた後、2020年度より現在の勤務校に移りました。前勤務校は非常に国際的な環境で、主に英語を用いて日々の授業や教務、留学生等に関わる業務に携わってきました。現在の勤務校は大学院時代に培った専門性を活かすことができる環境で、主に教育社会学・社会学関連の授業やゼミを担当しています。
 私はこれまで主に、1) 国境を越えて移動する子どもや若者がどのような困難に直面しているのか、また、どのようにすればより良い教育環境や社会環境をつくることができるのかという「移民と教育」に関わるテーマと、2) 家庭の社会経済的背景によって、子どもの教育達成がある程度規定されてしまう教育機会の不平等をいかに是正していくかを、子育てという観点から考える「子育てと教育格差」に関わるテーマに取り組んできました。
 大学教員としての業務は主に、日々の授業を通じた「教育」に加えて、自身の「研究」、そして学部や大学運営といった「学務」があります。授業によっては履修生が200人を越えることもあり、まさにこれから社会に出ていく世代に、授業を通じて様々な知識やものの見方を伝えたり、共に考え真剣に議論したりすることは、地道ではありつつも社会変革につながる重要な営為であると感じています。また自身の研究として最近では、論文や専門書だけでなく一般書を執筆させていただく機会もいただき、様々なチャネルで社会に働きかけていくことができる可能性について実感するきっかけにもなりました。
 「教育」は、私の研究対象でもあり自身の実践でもあるわけですが、この教育のあり方は、時代の変化とともに大きく形を変えていくものであり、また様々な社会問題の解決の根幹に深く関わるものだと考えています。まだキャリアが浅くできることは限られていますが、超域で得た経験知を日々の教育・研究・学務それぞれのなかで活かし、足と頭を動かし人や知識と出会い続けるなかで、長期的な視野に立って未来の教育と社会づくりに関わっていきたいと思っています。

大学院生活とその後のキャリアパスに対して超域プログラムが果たす役割について、超域での学びが就職活動や現在の職務へ与えた影響や、履修によって生まれた新たな視点や考え方などがあれば教えてください。

 「好奇心を殺すな」というキャッチコピーが書かれたポスターを鮮明に覚えているのですが、学部生の頃からCSCD(大阪大学コミュニケーションデザインセンター)やGLOCOL(大阪大学グローバルコラボレーションセンター)のような学際的な授業がとても好きで、一人で基礎工学部、法学部の授業等の他学部の授業や留学生向けの授業等にもふらっと参加をしていました。学部3年生の頃のデンマークへの1年間の交換留学を終え大学院進学を真剣に考え始めていた頃に、「超域」の存在を先生方や先輩から教えてもらい、直感的にこれだと確信したのを覚えています。
 印象に残っている授業や場面はいくつもありますが、特に修士課程2年時のフランス・パリでの「プレ・インターンシップ(現 グローバルエクスプローラ)」は貴重な経験となりました。経緯としては、OECD Student Ambassadorという広報活動に超域の履修生数人とチームを組んで応募し活動をするなかで、「OECD東北スクール」という教育支援復興事業に大きな関心を持ち、事務次官の方やOECD職員の方に直にメールをしたりと体当たりでアプローチした結果(今から考えれば無茶で強引なものですが)、ご縁がつながり数か月に及ぶ活動に結実しました。携わった業務はあくまで活動のサポート的な役割を担うものでしたが、活動を通じて、国際機関・行政・企業・地域の学校など様々な主体がつながり、相乗的な学びをつくりあげていくなかで社会的課題に切り込むという、教育の力を強く認識する契機となりました。また同時に、同じ「教育」に携わっていても、国際機関や行政、企業、現場等それぞれの立場によってスタンスや実践が大きく変わることを肌で感じることができたおかげで、私自身は大学に軸足を置きながら多様な主体と協働するという立場が最も合っていると感じ、それまでまだ留保していた大学教員になるという決意を固めることにもなりました。
 プレ・インターンシップ以外で言えば、「超域イノベーション博士課程プログラム」という教育思考実験に触れ、それまで具体的なイメージとして私の中にはなかった大学教育の役割や可能性、大学教員像を内部から知り考えることができた点が貴重な学びとなりました。自身の専門の傍らで社会的課題に鋭く目を向け、分野や立場を大きく超えていく革新的な枠組みや実践をつくってこられた先生方や関係者の方々に敬意を感じますし、今後、批判的視点も交えつつ自身の実践につなげていきたいと思っています。

日々研究に励みこれから社会へ飛び立つ超域生に一言お願いします!

 超域を通じて出会うことのできる教員、職員、外部講師の方、同級生、先輩、後輩と一見「無駄」に思えることも含めていろいろと話してみてください。違った見方に気づいたり、新しい挑戦に踏み出すことができると思います。また、超域在籍時代に築いた様々なつながりは、卒業後も刺激をもらったり新たなアイディアや活動にもつながる大事なつながりになっているので、是非大切にしてください。

(2021年1月)