超域イノベーション・コア

自主実践活動

超域イノベーション総合

産官民の実践家とともに、多様な研究科から集まりチームとなった大学院生が現在の延長線上にはない未来を描き、未来に挑む。イノベーションチャレンジ。それが、「超域イノベーション総合」です。
課題設定・解決能力の修得を目指す、超域イノベーションコア科目の集大成プロジェクト。

 超域イノベーション博士課程プログラムでは、汎用力の基礎となる知識やスキルを身につけるための授業科目の他、課題設定・解決能力ならびにその実行・実装のための総合的な能力を修得するための超域イノベーションコア科目を開講しています。「超域イノベーション総合」は、その集大成となる長期のプロジェクト型授業です。

プロジェクト成果

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先端技術で構想するショッピングモールの未来

課題提供者:
三井不動産株式会社、三菱電機株式会社

 消費傾向が大きく変化する中、商業施設は訪れた人に新しい価値を提供する必要に迫られています。この課題では総合電機メーカーの持つ多様な要素技術を統合させることで実現する、買い物体験がより「楽しく」なる仕組みの立案に取り組みました。

活動概要&成果
大型商業施設と総合電機メーカーの連携が創出しうる新たな可能性

 大規模な複合型商業施設はリアルな買い物の場として順調な集客を続けていますが、EC(電子商取引)が隆盛するなか、実店舗ならではの価値を見つめ直し、顧客にとってより「楽しい」ものとなるような買い物体験をリデザインすることが求められています。一方、総合電機メーカーはこれまで、様々な製品や技術を個別に提供してきましたが、新たな体験と価値が求められている昨今、それらをパッケージ化した製品やサービス群を提案し提供することに迫られています。

実店舗ならではの価値

 文献・実地調査を続ける中でこのチームが着目したのは消費行動における情緒的価値(買い物から得られる刺激や喜び)でした。実用的価値において重視されるのが価格や利便性である一方、情緒的価値においては購入前後のプロセスにおける体験も重要な位置を占めます。実用的価値に利点を持つECとの共存を目指すうえで、情緒的価値を重視した「買い物プロセス全体を通した楽しさ」の提供が求められるという洞察を得ました。
 この着眼点に立ったとき、大型商業施設の特長が多種多様なテナントを内包することにある一方、現状での体験は「各テナントでの買い物の連続」となっており、広大な施設全体を通じた買い物体験の提供ができていないことが見えてきました。

ひとつなぎの買い物体験

 施設に入ってから出るまでをひとつの大きな買い物体験とするためにこのチームが立案したのが、全テナントに陳列されている商品を横断的に登録・比較可能となる電子デバイス・サービスの導入でした。施設に入った顧客は各テナントを巡り、気になった商品を次々とデバイス上のリストに登録していくことになります。気の済むまでテナントを巡った後、3D映像等によってリストに登録された商品を比較検討し、購入を判断します。これによって間に煩わしい手順(比較のためのテナント間の往復、購入の判断、会計)が入らず、施設全体をひとつの大きな「店」として買い物を楽しむことが可能となります。
 この方策は総合電機メーカーの技術・サービスの包括的な導入によって「テナントの集積」としての大型商業施設から脱却し、全く新しい商業施設像を創り出すものだと考えています。

履修学生チームの声

 「未知で複雑で困難な課題を解決する」(本授業シラバスより)ために費やしたこの8ヶ月間は、文字通り紆余曲折のある道のりでした。我々のチームは、研究分野もこれまでの人生経験も人一倍異なる、多様なバックグランドを持った学生から構成されていました。本授業のようなプロジェクト型演習(PBL)の醍醐味の一つは、全員が当事者になれることにあると考えます。自分自身を課題に当てはめながら、アイデアを出し合えることは貴重な経験でした。しかし、価値観や課題の捉え方が大きく異なる場面も多く、議論が平行線を辿ることが多々あったことも事実です。この困難に立ち向かうべく、我々は次の二点を心がけました。一点目は、都度合意形成を図ることです。与えられた課題を解決するために行う議論は多岐に渡ります。その際、方向性に誤りはないか、異論はないか、逐一クリアにしながら議論を進めていきました。二点目は、各人の個性とスキルを織り込むことです。我々は、境域における異種の交わりにこそ、イノベーションの萌芽が見られると考えます。各々が持つ面白い視点と知識がどう交われば、課題解決につながるのか、主観的かつ客観的に考えながら、アイデアを模索していきました。もちろん毎回の授業で学ぶ課題解決のための方法論、教員やティーチング・フェローからの助言、課題提供企業の思いも大きな力となりました。今後も各分野で、課題解決のためのイノベーティブな総合力養成を続けていきます。

課題提供者様の声
三井不動産株式会社 関西支社事業二部 木村庄佐氏

 携帯電話やパソコン等の普及によりネットでの買物が身近になっている今日、リアルモールに買いに行きたいと思わせる仕組みをどう創るか、買い物以外の目的でわざわざ来館するきっかけをどう創るかという視点で商業施設の運営を行っております。超域プログラムでは「EXPOCITYでの買い物がより楽しくなる仕組み」をテーマにさせていただきました。買い物という身近な行為を『楽しく』するというテーマは、シンプルであるが故の難しさがあり、物事を構造化し問題を正しく認識しないと実践的な提案にたどり着けないテーマであったかと思います。課題提案者としては、総合電機メーカーである三菱電機さんと合同だったこともあり、AI・IoTを活用したサービスにも期待を致しました。超域学生からの提案は、分析力・発想力・提案力に非常に優れているものだったと思います。「DigList」「PickPort」というまったく新しいサービスは、リアルモールならではの“実物を見て取捨選択できる”という楽しさを倍増させ、商品を吟味する際の煩わしさは払拭させるという、お客様目線にたった納得感の高い内容でした。プログラムを通し得られた様々な経験は今後の皆様の活動にておおいに役立つことと思います。最後に、本気でEXPOCITYをより良くしようと、ひたむきに取り組んで頂きありがとうございました。皆様の益々のご活躍を期待しております。

三菱電機株式会社 未来イノベーションセンター 束田智輝氏

 少子高齢化、家族構成の変化、価値観の変化、都市集中化などショッピングモールを取り巻く環境が変化する中、買い物がより楽しくなるための仕組みを、今後重要となるUX(User Experience)やコミュニケーション視点で提案していただきました。
 特に、ショッピングモールでの実体験に基づいて買い物に関わる課題を深掘りし、具体性のある解決案を導出したことは大きな成果だと思います。さらに、当社を理解する活動も精力的に実施した上で、当社の特性を勘案した提案となっており、今後、我々のアイデア検討に活かせると考えています。今回、ビジネスモデルや事業のステークホルダーにまで踏み込んで検討していただきましたが、そのような物事を俯瞰して見る経験が、皆さんの今後の力になればと思っています。チームの皆さんには、今後の更なる飛躍と活躍を期待します。

 

過疎地域の交通と自動運転の未来

課題提供者:
トヨタ自動車、京都市右京区役所京北出張所

 自動運転の技術は、現在世界規模で急速に開発が進められています。この技術によって、私たちの生活はどう変わりうるのでしょうか。過疎地域が向き合う現状を踏まえながら、次世代モビリティのコンセプトとその実証実験の提案に取り組みました。

活動概要&成果
移動するとはどういうことか?

 20世紀を代表する社会技術である自動車は、私たちの生活や社会のあり方を大きく変えました。自動運転もまた、ただ移動手段を快適にするというだけの技術ではないはずです。こうした問題意識のもと、自動運転技術の最新の動向をフォローしながら、同時に、過疎地域におけるモビリティの現状と課題を検討しはじめました。主要な交通手段の担い手(バス、タクシー、介護福祉サービス、病院、個人等)を訪問し、それぞれが抱える課題を聞きとりながら、人々が移動に何を求めているのかを考えなおす必要があることに気づきました。そして、移動が人間の本質的な権利であり、喜びであるという視点が欠かせないことを、プロジェクトの基本方針としました。

主要な交通手段にアクセスするまでのモビリティ

 調査を進めるなかで、過疎地の交通には、赤字路線の維持から高齢者の免許返上に至るまで、さまざまな課題が山積みであることが徐々にみえてきました。特に高齢化が進む地域では、交通の利便性や合理性を考える前に、主要な交通手段にアクセスするまでのパーソナルな移動の支援を行うことが不可欠であることもわかってきました。自動運転技術は、そうした基本的なモビリティの前提がなければ有効に機能しません。そこで、自宅から主要な道路までの移動手段を新しくデザインすることに焦点をしぼり、「スマートカート」を用いた自動運転の実証実験を構想しました。

社会の仕組みとしての「モビリティ」

 モビリティは、すべての人にとって、日々の生活に直結した身近な関心事です。したがって、自動運転の技術的な可能性も、利用する生活者の視点なしには意味をなしません。住民にとって提案がどういう意味をもつのかを知ることは、プロジェクトの意義を考える上でも必要になります。そこで、プロジェクト終了後の現地成果報告会では、住民、行政、地元交通事業者、開発者であるトヨタ自動車という異なるステークホルダーが一同に会して、過疎地域の交通の未来について一緒に議論する場を設けることにしました。この報告会を通して、住民が主体的に交通問題に取り組めるような仕組み作りや、社会システムの問題として移動を考える必要性に改めて気づくことになりました。

履修学生チームの声

 私達、博士課程で研究する者は、知らず知らずのうちに自分の専門領域で使う際の言葉のニュアンスに染まっています。例えば、理論という言葉を聞いたとき、私の場合は万有引力の式のような、突っ込みどころのないほぼ確立されたものというイメージを持ちます。それに対して、他の分野では理論は証明されるべきものなので、確立はされてはいない、むしろ不確かなものというふうに捉えられます。このような同じ言葉に対するとらえ方の違いは、アカデミア内に限らず、社会の中にも多く存在し、それらが議論の妨げになったり、時には誤解を招くことすらあります。すなわち、研究者が異分野とコミュニケーションをとるためには、言葉がそれぞれの専門にあたえる意味を知っておく必要があります。この気づきは、超域イノベーション総合で異分野の学生と協働し、京北地域の住民と行政、企業など様々なステークホルダーと話をする中で私が得られた成果です。その成果により、異分野とのコミュニケーションが達成され、私だけでは気づくことがなかった課題を設定することができました。今後異分野と協働する際にも、この経験は私の力になると、確信しています。最後に、課題の作成から議論の参加、報告書の添削等、感謝してもしきれないほどお世話になった、課題提供者様と教職員の皆様に厚く御礼申し上げます。

課題提供者様の声
トヨタ自動車(株)

 山間地域の社会課題と掛け合わせて「移動の本質とは何か?」を問い直して頂きました。
 フィールドワークを通じた現場の課題感と、意味を問い直す目線の高さ…両極を行き来してまとめるのは、難易度が高かったかと思いますが、京北地区の方々と多くの対話に根差した課題設定は期待値を超える洞察があり、自分の言葉でプレゼンされた姿も印象的でした。共創の力を今後の活躍にぜひ活かして頂ければと思います。

京都市右京区副区長・京北出張所長 金子宣幸氏

 京都市との合併から13年,京北地域は全国の過疎地域の例にもれず,人口減少・少子高齢化が進み,まさに,持続的な発展に向けた新たな取組みが求められているところです。この度,超域イノベーションで取上げて頂いた交通問題については,地域住民にとって,あまりにも身近な課題であり,多大な関心をもって捉えられたのではないかと考えております。交通に関する問題の解決には,技術革新等による先進技術を導入しインフラ整備に繋げるハード施策と,人の行動の変容させるソフト施策の融合が重要だと思います。超域イノベーションで取組んで頂いたことが,この地域の人々に交通問題を認識し,考える一助になったと確信しております。今後も,新たな課題に向けて積極的にアプローチされることを期待しております。

超域イノベーション総合プロジェクト
2018年度を振り返って

■ キックオフ

 課題提供機関と学生の初顔合わせです。企業/NPO/自治体の概要、プロジェクトとして取り組む課題とその背景についての説明を受けた後、課題提供機関との打ち合わせを行い、今後の方向性や予定を議論しました。

■ 進捗報告

 5月、6月には教員へ向けての進捗報告を行いました。教員からのフィードバックを受けて計画を修正するとともに、異なる課題に取り組む他チームの進捗を知ることでモチベーションが喚起されました。

■ ミニレクチャー

 プロジェクトの進行段階に合わせて、週に1回のペースで30分程度のレクチャーを受けました。レクチャーの中では教員から各段階に必要な考え方、手法等の補足が行われました。

■ 中間発表
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 7月初旬に課題提供機関である企業/NPO/自治体の関係者を招き、プロジェクトの進行度合いを報告しました。ここでは各チームが実施した調査の結果や定義した問題、解決策のプロトタイプを発表し、関係者からフィードバックをいただきました。いただいた意見をもとに方向性の修正および最終提案に向けた進行計画の調整を行いました。

■ 進捗報告
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 9月末には再び教員に向けた進捗報告を行い、最終提案の素描を提示しました。プロジェクトの終結に向けて必要な事項の洗い出しを行いました。

■ 最終成果発表
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 プロジェクトの集大成として課題提供機関の関係者を招き、最終的な提案内容の発表を行いました。これまでに学んだ知識・技術を駆使して行った7ヶ月に渡る調査と議論を通じて見えてきた課題の本質を明らかにし、新たな価値を創造するビジョンとそれを実現するための実行プランを提案しました。

■ ふりかえり

 プロジェクト終了後、7ヶ月間の活動を通して得たそれぞれの学びの振り返りと共有を行いました。また活動を行った現地へ訪問して多くの関係者へ提案内容の紹介を行い、広く意見をいただきました。

■充実したフィールドワーク、文献調査、プロトタイピング

 活動期間中は課題内容への理解を深めるため、文献調査とともに現地でのフィールドワークを行い、現地で行われている活動への参加やインタビュー等を実施しました。綿密な調査を通じて課題を問い直し、課題そのものだけでなくその背景へも洞察を深めました。教室に留まらないフィールドワーク、何度も繰り返した議論、アイデアのプロトタイピングを通じて問題の本質へアプローチする提案を目指しました。

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■ 本プロジェクトについてのお問い合わせ 

企業、自治体、NPO、その他団体等からの連携のお問い合わせ、大学等からの後援・視察依頼等、 お気軽にお問い合わせください。
お名前、ご所属、連絡先を明記の上、お問い合わせフォームからご連絡ください。

宛先:超域イノベーション総合授業担当まで

※本ページに掲載している情報は、2019年4月時点のものです。また、掲載している情報の無断転載を禁じます。