超域イノベーション・コア

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超域イノベーション総合

産官民の実践家とともに、多様な研究科から集まりチームとなった大学院生が現在の延長線上にはない未来を描き、未来に挑む。イノベーションチャレンジ。それが、「超域イノベーション総合」です。
課題設定・解決能力の修得を目指す、超域イノベーションコア科目の集大成プロジェクト。

 超域イノベーション博士課程プログラムでは、汎用力の基礎となる知識やスキルを身につけるための授業科目の他、課題設定・解決能力ならびにその実行・実装のための総合的な能力を修得するための超域イノベーションコア科目を開講しています。「超域イノベーション総合」は、その集大成となる長期のプロジェクト型授業です。

プロジェクト成果

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大人の心に届く環境教育

課題提供者:サントリーホールディングス株式会社

 多くの水を消費する都市部において、生活者である「大人」が水の役割やその重要性を身近な問題として理解し、一人ひとりが水を大切にできるような社会の実現が望まれています。このような都市生態系にも目を向けた「大人のための水育プログラム」の提案に取り組みました。

活動概要&成果 
■ 従来の環境教育の弱点を分析する

 これまでも環境教育プログラムは数多く行われてきたはずであるのに、どうして社会は変化しないのか。サントリーが実施する「水育」プログラムへの参加をはじめ、複数の環境教育プログラム・イベントに参加することで得た情報を分析し、「水循環」「次世代環境教育」「波及効果」などのキーワードをもとに、課題文を再定義しました。また、子供向けプログラムに参加した親世代の満足度の高さ(自身の学びとして)や、参加者が帰宅後に伝える側に回った場合のプログラム内容の難易度評価からは、既存のプログラムとの相互作用も検討事項であると考えました。

■ 森と都市部を繋ぐものとは?

 都市部で生活する大人を対象とする際に着目したのは、これまでの環境教育ではマイナス要因でしかなかった「都市部ならではの利便性」を、水育手段として利用した際の可能性です。ミネラルウォーターやウォーターサーバーを「森と都市部を繋ぐもの」と位置づけ、その利用時に焦点を当てて突破口を模索しました。利便性の追求と水循環の実感、相反する二つの感情・動作を統合させる仕組みを考えました。

■ 「教育」ではなく「学ぶ機会」を提案

 持続可能性、コスト面、波及効果などを検証した結果、ウォーターサーバーの利用者に焦点を当て、「年間の飲料水量(l)×年間の森の整備面積(m2)=ウッドポイント」と仮定した仮想通貨ポイント付与の仕組み、水をモチーフとしたボードゲーム(共有資源の持続性を維持しながら個人の利益増加を目指す)による教育手段、情報発信ツールとしての雑誌「月間水人」の創刊を考案しました。これらはいわゆるedutainment(education×entertainment)であり、本課題の対象とした「都市部の大人」だけでなく、その家族を含めた周囲への波及効果も見込んでいます。

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EXPOCITYの新たな「未来」

課題提供者:三井不動産株式会社

 消費傾向が大きく変化する中、商業施設はただモノを売るだけではなく訪れた人に新しい体験や時間の過ごし方を提供する必要に迫られています。この課題では30年先までを見据え、万博周辺地域全体を巻き込んだ体験型観光実現に向けた戦略立案に取り組みました。

活動概要&成果 
■ 大型商業施設の抱える課題

 2015年に万博跡地に開業したEXPOCITYは複合型商業施設として順調な集客を続けていますが、30年先の未来を見据えた場合には、この種の施設の常として、集客力の低下が生じると予想されています。EXPOCITYが長く魅力を維持するための新たな戦略が必要とされており、その立案のために現状の課題を分析することからこのプロジェクトは始まりました。

■ シンボリックなイメージの創出

 30年先までその魅力を維持・向上させるためには、新たな価値の提案が必要となります。集客力の向上には現状の主な集客範囲である近隣都市圏に加えて、国内外の広い範囲から集客可能となることが望ましく、そのためには周辺の地域や施設と連携し、観光地としての立場を確立させることが求められました。
 そこで新たに必要だと考えたのが「地域を象徴するイメージ」です。京都や富良野に代表されるように、観光地として成功している地域には特定のイメージが定着しており、そのイメージを体験するために広い範囲から人が訪れているという構造が調査から見えてきました。

■ 未来を感じられる場所

 万博周辺地域に定着させるイメージとしてこのチームが着目したのが「未来」というキーワードでした。この地域では「人類の進歩と調和」をテーマとした万国博覧会が1970年に開催され、大勢の人が未来を体験したという歴史を持ちます。その背景を活かし、訪れた人が少し先の未来を体験できる場所という統一したコンセプトのもと、EXPOCITYや周辺地域、施設が取り組みを続けることで、独自の世界観を持った観光地として広く世界に認知されることを目指す、という提案をするに至りました。
 具体的な方策として、ベンチャー企業の製品を展示、その場で小口投資が可能な仕組みを整備し、実現された商品を万博公園や周辺地域で先行的に実用化するなど、常設のものとしては国内外に例がなく、また地域全体での取り組みが可能なプランを提案しています。

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人びとが集う魅力ある駅前広場のデザイン

課題提供者:大阪市都市計画局

 なんば駅周辺は、現在、大阪市都市計画局を中心として再開発の計画が進められています。この課題では、交通の要所としての現在の広場の機能を維持しながらも、訪れる人にとって情報発信とコミュニケーションの場となるような駅前広場を新たにデザインします。

活動概要&成果 
■ なんばとその周辺の変化

 なんばは、大阪を象徴する「ミナミ・エリア」への入り口として広く知られています。しかし、近年相次いで着工された阿倍野・天王寺やうめきたなどの再開発によって、大阪の他の地域と比べて、利用者にとっての難波エリアの魅力は相対的に低下しつつあります。さらに、2031年に予定されているなにわ筋線が開通すると、難波駅は、関西国際空港から関西圏の各都市へと移動するための「通過点」となってしまう恐れもあります。このプロジェクトでは、こうした近い将来に到来が予想される難波駅周辺の変化を分析しながら、広場のデザインにとってコアとなる問題意識とコンセプトを確認するところから始まりました。

■ 入り組んだステークホルダー

 駅前広場の再開発は、現在、大阪市が中心となって進められていますが、この事業に関係するアクターは他にも多く存在しています。各鉄道会社や、広場に面した大型百貨店、また地元の商店街や近隣の住民など、それぞれの立場によって広場への思い入れや期待は異なっています。一方で、歴史的にみれば、民間資本や地元商店が主導となって街が形作られてきたことこそが難波という地域の最大の魅力であり、「なんばらしさ」を残した広場のデザインには、効率性や機能性だけではない、人々の思いをくみとる必要があることに徐々に気づきはじめました。近隣商店や利用者へのインタビューなど現地調査を重ねることになり、同時に、多くのステークホルダーが関わるからこその再開発の難しさを肌で感じ取ることにもなりました。

■ 仕組みとしての広場

 広場のデザインには、空間のデザインだけでなく運営形態のデザインも含まれています。そこで、駅前広場の管理運営を行っている先行事例の検討や視察を通して、なんばの現状にあった実現可能な運営方法についても議論を重ねました。最終的には、約8ヶ月に渡る調査と検討の成果を踏まえて、想定されるステークホルダーのそれぞれに対してメッセージ性をもちうる工夫を盛り込んだ、広場の空間とその使い方をひとつのコンセプトにまとめて提案することになりました。また、行政を中心として現在進められている整備事業が終了したのちにも持続可能な広場の運営ができるよう、人材、財源、組織のありうる形態についてのアイデアを盛り込みました。

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超域イノベーション総合プロジェクト
2017年度を振り返って

■ キックオフ

 課題提供機関と学生の初顔合わせです。企業/NPO/自治体の概要、プロジェクトとして取り組む課題とその背景についての説明を受けた後、課題提供機関との打ち合わせを行い、今後の方向性や予定を議論しました。

■ 進捗報告

 5月、6月には教員へ向けての進捗報告を行いました。教員からのフィードバックを受けて計画を修正するとともに、異なる課題に取り組む他チームの進捗を知ることでモチベーションが喚起されました。

■ ミニレクチャー

 プロジェクトの進行段階に合わせて、週に1回のペースで30分程度のレクチャーを受けました。レクチャーの中では教員から各段階に必要な考え方、手法等の補足が行われました。

■ 中間発表
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 7月初旬に課題提供機関である企業/NPO/自治体の関係者を招き、プロジェクトの進行度合いを報告しました。ここでは各チームが実施した調査の結果や定義した問題、解決策のプロトタイプを発表し、関係者からフィードバックをいただきました。いただいた意見をもとに方向性の修正および最終提案に向けた進行計画の調整を行いました。

■ 進捗報告
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 9月末には再び教員に向けた進捗報告を行い、最終提案の素描を提示しました。プロジェクトの終結に向けて必要な事項の洗い出しを行いました。

■ 最終成果発表
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 プロジェクトの集大成として課題提供機関の関係者を招き、最終的な提案内容の発表を行いました。これまでに学んだ知識・技術を駆使して行った7ヶ月に渡る調査と議論を通じて見えてきた課題の本質を明らかにし、新たな価値を創造するビジョンとそれを実現するための実行プランを提案しました。

■ ふりかえり

 プロジェクト終了後、7ヶ月間の活動を通して得たそれぞれの学びの振り返りと共有を行いました。また活動を行った現地へ訪問して多くの関係者へ提案内容の紹介を行い、広く意見をいただきました。

■充実したフィールドワーク、文献調査、プロトタイピング

 活動期間中は課題内容への理解を深めるため、文献調査とともに現地でのフィールドワークを行い、現地で行われている活動への参加やインタビュー等を実施しました。綿密な調査を通じて課題を問い直し、課題そのものだけでなくその背景へも洞察を深めました。教室に留まらないフィールドワーク、何度も繰り返した議論、アイデアのプロトタイピングを通じて問題の本質へアプローチする提案を目指しました。

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履修学生チームの声

サントリー班

 本課題を進めていく過程において、座学では経験できない多くの学びを得ることができました。以下に特筆すべき二点について述べます。一つ目は、答えのない問いに対し、暫定的な解を出し漸進していくことの難しさです。時には原点に立ち返り議論を振り出しに戻す勇気と柔軟性が求められました。議論が行き詰まっていることは分かっても、結論を捨てて一から考え直すことは容易ではありませんでした。しかし、プロジェクトの後半にさしかかり、採用をあきらめていたアイデアが最終的なアウトプットにつながることが数多くありました。議論の結論がプロジェクトにとっての結果なのではなく、結論を導く過程で検討を重ねてきたすべてのことが結果であることを学びました。二つ目は、新しいモノを生み出すことの難しさです。新規性を求めるあまり現実離れした案に陥ることや、逆に現実性を追求するあまり、ありふれた案になることもありました。このトレードオフから抜けだし、新規性と現実性を両立した斬新な案を生み出すためには、既存の解釈の中では答えを導くことはできないことを痛感しました。課題を再定義し直し、新たな視点からモノに価値を与えることの重要性を学びました。これらの学びは、絶えず変化する社会の中で求められているイノベーションのあり方ではないかと考えています。

三井エキスポ班

 8ヶ月にわたるプロジェクト活動を通して、どこから手をつけたらよいかわからない暗中模索の苦しみと、アイデアが形になっていく快感という対極の経験をすることができました。課題解決においては、問題を正しく認識することが最重要ですが、有効な解決策を考えて初めて問題が認識できるという矛盾が生じます。この矛盾を打破するには、物事を構造化して、問題を設定しなおし、暫定的にでもどこから手をつけるか決める必要がありました。振り返ってみると、暗中模索をしていた初期の議論の中にも、最終成果につながるようなキーワードや議論の芽がたくさんあったことに気づきます。我々の班では、課題解決のためのよいモデルケースに出会ったことで、議論が構造化されて、初めて課題解決への手応えを感じることができました。プロジェクトの進捗が芳しくない時には、重い足取りで吹田キャンパスに向かうこともあり、実に濃厚な8ヶ月間となりました。課題解決の苦しみを、身をもって知ったこの経験は我々の血肉となり、これからも役に立っていくことでしょう。最後に、我々の自主性を重んじながら適切な距離を保ってご指導いただいた課題提供者および教職員の皆様に厚く御礼申し上げます。

大阪市なんば班

 この授業は、分野の異なる履修生が集まって実社会の「現場」での課題について解決を行っていく授業で、現場の問題について読み解き、それぞれの分野の知見を活かしながら課題解決を果たしていくことが求められます。授業を通して思ったのは課題の現場を詳細に読み解いていくこと以上に、会議室での会議がどれだけきちんとできるのかが重要だということです。会議がきちんとできたときは次にやるべきことが見通せ、現場での調査もうまくいきます。しかし会議がきちんとできなかったときは、何も決まらず、現場でなにもできませんでした。「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ」というセリフがありますが、何か意味のあることを起こそうとするには会議がとても重要だということを身をもって知りました。グループワーク等においてチームで何かを決めるという機会もさることながら、グループワークを円滑にするためにどのような努力が必要かを考えることも大切だと感じました。実社会では至るところで会議があり、相手と妥協したり、強く主張したりしながら、なにかを決めなければなりません。また、会議で決めたことをきちんと実行することも求められるでしょう。この授業は、「グループを円滑にまとめながら」課題を解決する力を鍛えることができ、普段集まって何かを決める、それに従って実行する、という行動に慣れていない私達にとって良い機会でした。

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課題提供者様の声

■ サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社 水科学研究所 近藤 平人

 蛇口をひねれば自然と出てくる清らかな水、現代の日本人には当たり前すぎて深く考える機会の少ない水の世界。このような状況の中、山紫水明の豊かな水が実は限りある資源であることを認識し、次の世代へと繋いでいくためにも、都会人に対する「水育」の必要性が高まっています。豊かな地下水を育む森林の重要性を実際の天然水の森で体感した上で、都市の生態系にも目を向けて、大人のための「水育」プログラムの提案を学生にお願いしました。中間段階では多くのジャストアイデアが錯綜して訴求したいことがぼやける感があり心配しておりましたが、纏めの段階に来て、WATERサーバーを通じた水の価値訴求に着眼し、水が我々に自然との繋がりを想起させ、生活の豊かさを届けていることを実感させる「水育」プログラムの提案に至り、また、水への関心と理解が深まった大人を「水人」と称するといった「超域」的な発想で方策展開に導けたことは、異なる分野で研鑽を積んだ博士課程学生ならではの深い洞察力の賜物と感謝しております。今回の活動を通じて得た協創の力を是非今後に活かして頂ければと思います。

■ 三井不動産株式会社 鈴木達也

 2015年11月に吹田市万博記念公園内にオープンした大型複合施設EXPOCITYを中心とした観光誘客をテーマにさせていただきました。大阪大学に近接し、エンターテインメント施設と商業施設を含んだ複合施設の観光誘客を考えるという身近に思えるテーマでありつつ、多角的な視点を持ちながら仮説を組み立てないと実践的な提案が生まれにくいテーマであったと思います。課題提供者としては特に万博公園周辺施設との連携や、30年間続く事業としての時間軸、国内外を含んだ観光客のターゲットの特定など、EXPOCITYを取り巻く環境を分析したうえで独自性の高い提案を期待しました。超域学生からの提案は、課題提供者の期待を大きく上回り、分析力・発想力・提案力に優れたものであったと言えます。観光誘客のために「聖地化」というキーワードを抽出し、万博エリアの持つ土地の特性を活かして「未来に夢を描ける場」というテーマで施設を色づけ、実現可能性を踏まえて中長期的な施策に落とし込んでいくストーリーは非常に納得感の高いものでした。本プログラムで発揮した力は、ニーズが多様化し、刻一刻と変化していくビジネスにおいても活用できるものだと思います。皆様の益々のご活躍を期待しています。

■ 大阪市都市計画局 佐藤 明子

 近年、公民連携での公共空間の利活用が活発ですが、その実現のためには整備・運営段階でのそれぞれの役割分担や、法的課題の整理など、様々な課題を解決する必要があります。これらについて、私達とのディスカッションにとどまらず、実際に地域に足を運んで地域住民や来街者の声を聴きながら、駅前広場の実現に向けて、専門域を超えたメンバー間での議論を踏まえた柔軟で興味深い課題解決策をご提案いただきました。プロジェクトは一旦終了となりますが、引き続き、なんば駅周辺が変わっていく様に興味を持ち続けていただき、応援いただければと思います。

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■ 本プロジェクトについてのお問い合わせ 

企業、自治体、NPO、その他団体等からの連携のお問い合わせ、大学等からの後援・視察依頼等、
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宛先:超域イノベーション総合授業担当まで

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