超域イノベーション・コア

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超域イノベーション総合

産官民の実践家とともに、多様な研究科から集まりチームとなった大学院生が現在の延長線上にはない未来を描き、未来に挑む。イノベーションチャレンジ。それが、「超域イノベーション総合」です。
課題設定・解決能力の修得を目指す、超域イノベーションコア科目の集大成プロジェクト。

 超域イノベーション博士課程プログラムでは、汎用力の基礎となる知識やスキルを身につけるための授業科目の他、課題設定・解決能力ならびにその実行・実装のための総合的な能力を修得するための超域イノベーションコア科目を開講しています。「超域イノベーション総合」は、その集大成となる長期のプロジェクト型授業です。

プロジェクト成果

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快適を創造するロボットづくり

課題提供:パナソニック株式会社

 人工知能 (AI)・センシング技術等の先進技術要素を統合した製品の登場により、ロボットが暮らしに密接に関わってくる時代が到来しようとしています。このような状況において、情報とハードを組み合わせて「5年先に実現する快適空間」を可能とする商品(ロボット)を考案し、それが普及するビジネスシナリオを構築することが、チームの課題でした。

 チーム パナソニック: 活動概要&成果 
■ 課題の再定義・試行錯誤

 本課題は「問題を見つけることが課題の一部となっている課題」であり、さらに「快適空間」「ロボット」などの定義があいまいな条件のみが提示されているという自由度の高い、言い換えると雲をつかむような課題でした。そのため開始早々、課題の再定義を行う必要がありました。そこで課題提供企業の方とのディスカッションおよび工場見学、文献調査、アンケート調査を行い、課題の具体化そして製品コンセプトに繋がる情報を探しました。

■ コンセプト案創出から「おうちクラウド」の提案まで

 コンセプト創出方法として、まずはロボットが使用されると想定される環境(シーン)と、ロボットが持ちうる機能および存在効果(メリット)の掛け合わせからの強制連想を行いました。ここで導き出したアイデアをもとに講義で学んだ様々な手法を駆使し、思考の発散・絞り込みを何度も繰り返すことでコンセプト案を創出しました。さらにインタビュー調査やプロトタイプの作成を経て案の再検討を行い,「おうちクラウド」を提案しました。CozyはCoT(Cloud of Things)をキーワードとする、人とモノの関係を変える新しい視点からの収納です。

■ 本取り組みからの学び

 本課題解決からは、講義で学んできた思考プロセス方法の実践と共に、協同作業と長期的活動の困難さ(他者理解)に対峙する機会、そしてなによりも固定観念(ロボットとして一般的に想像されるイメージなど)にとらわれず自分達で再定義するという貴重な機会を得ることが出来ました。

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人と獣の共存のために

課題提供:大阪府立環境農林水産総合研究所

 このチームは、野生動物が農林業等に被害を及ぼす、いわゆる獣害問題について、解決に至るために実施すべき新たな手法の提案にむけて活動しました。

 チーム 獣害: 活動概要&成果 
■ 社会課題の分析と再定義

 学生チームはまず、テーマとなった大規模な社会課題に対して、被害拡大の背景にある中山間地域の過疎化、狩猟者・里山利用の減少、森林の人工林化等の複合的要因と多岐に渡るステークホルダーの関係を整理し、システム思考等の手法を用いた分析を進めていきました。

■ 「住み分け」実現にむけた課題

 全体の構造分析の中から、現状の被害対策(防除柵、追い払い、駆除等)は「集落からの排除」という機能を持ち、しかしそれだけでは獣害解決の実現は困難との考えに至りました。現状の対策に加えて、森のなかに動物を留めるために、動物の行く先をコントロールする手法が必要と結論付けました。
 また現地調査では農家の自主的な対策を視察し、より効率的な対策手法の周知が必要であるとの認識を得ました。しかし専門家の人手が全く足りておらず、1人の専門家が広範囲の現場に手法を周知できるような仕組み作りが求められました。

■ 人は里に、動物は森に

 全体の構造において不足する要素を補うための具体的な方策として、森のなかに動物を留めるための「高選好・低栄養」(美味しいが、栄養が少なく個体数の増加を招かない)餌の開発が立案されました。
 また実際に農家と柵を立てた経験から、農家と一緒に「研究のために」柵を設置することで、既存の自治組織を介して、短期間・少労力での手法の伝播が可能という方策を打ち立てました。
 獣害問題は多くの専門家が頭を悩ませる複雑かつ困難な課題ですが、学生チームは個別具体の小さな解決に拘泥するのではなく、全体を見通したうえで現状不足する内容を洞察し、かつ専門家が思いもよらなかったアイデアを提案するに至りました。

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新興国を対象とした新たな廃棄物研修プログラム

課題提供:NPO法人こども環境活動支援協会LEAF

 NPO法人LEAFは、新興国から廃棄物処理に関わる行政職員を日本に受け入れ1か月に渡って研修を行う事業をJICAより受託しています。本チームの課題は、「新興国における循環型社会の構築に寄与する廃棄物処理の研修プログラムを提案せよ」というテーマを与えられ、新たな研修プログラム案の提案に向けて取り組むことでした。

 チーム LEAF: 活動概要&成果 
■ 課題の読み解きと研修で目指す人材像の定義

 新興国および日本における廃棄物処理の歴史や社会経済状況を調査する中で、新興国は風土や宗教などが複雑に絡み合った「混沌」とした状況を有していることを理解しました。その中で、新興国において求められる人材は、目の前の混沌とした問題を一度受け入れた上で、人々が持続的に幸せを享受できる未来の社会に向けて、他者と協働していくことができる人材であると定義しました。

■ 演劇ワークショップの考案

 上記の人材を育成するために、従来の研修に「演劇ワークショップ」を加えることを考案しました。演劇という手法は、問題(設定)に対する暫定的な解(オチ)を話し合いで決める必要があること、役を演じることで他者への理解が深まることなどが強みです。廃棄物特有の混沌とした状況設定や、豊かな社会を目指す場面を入れることで、上記の能力の向上を効果的に目指すことができると考えました。全研修の前半に演劇ワークショップを行うことで、研修員同士が親密になり、以降の研修でより積極的に意見交換できる環境にすることも狙いました。

■ 実際の研修での実施

 本チームは、演劇ワークショップを実際に研修で実施する機会を得ました。プロの劇団の協力のもと、アジア各国の政府や地方自治体で廃棄物対策を担当する行政官を対象に実施し、「帰国後も組織内での横断的な連携や市民の人たちへ向けた啓発活動などに演劇ワークショップは応用できる」との感想をいただきました。

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地域コミュニティの
新たな拠点となるような小学校跡地の活用方法

課題提供:NPO法人 結びめ

 本チームの課題は、滋賀県高島市の広瀬地域において、2016年3月に廃校となった小学校跡地の活用方法を考案し、この地域の将来的な拠点形成につながる提案をすることでした。

 チーム 高島: 活動概要&成果 
■ コミュニティという課題

 チーム活動をはじめるにあたって、まずは「地域コミュニティの新たな拠点」をどう定義するかが問題となりました。というのも、「地域」には行政単位としての市町村だけでなく、ミクロな単位での共同性や、実際的かつ横断的な人の結びつきが含まれるからです。一方で、2005年に5町1村が合併して誕生した高島市において、「地域」や「コミュニティ」は、合併前の行政単位と強く結びついていることも調査のなかでわかってきました。こうした現状理解のなかで、人口減少が進む新しい時代のコミュニティとはどういうものか、そこで拠点となる施設にはどんな機能が必要なのかを考えながら、議論は進んでいきました。

■ 地域におけるイノベーションとは?

 高島市内では廃校活用の先例が少なく、すべてが新しい取り組みとなりました。そこで履修生たちは、現場の調査を通じて課題の抽出を行うとともに、日本各地の先進事例の視察や情報収集を精力的に行いました。そして、現在の地域振興の取り組みが、新しいアクターを巻き込んだイノベーティブな場を作り出していることを感じ取りながら、高島の地で何ができるか、何をすべきか、アイデアを練り始めました。

■ 持続可能な小学校跡地利用の方法

 最終段階では、考案したアイデアの数々を、持続可能な仕組みとしてどう実装していくかが大きな課題となりました。できることとやるべきことのギャップを埋めながら、最終的に、トライアル期間を設けた施設運営の提案を行いました。5年後を一つの区切りとし、常設的な利用と住民参画事業が一体となった仕組みを採用することで、継続的に地域振興の活動にコミットでき、そこから波及効果が生まれるような活用案にまとめました。

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超域イノベーション総合プロジェクト 2016年度を振り返って

■ キックオフ

 課題提供機関と学生の初顔合わせです。企業/NPO/自治体の概要、プロジェクトとして取り組む課題とその背景についての説明を受けた後、課題提供機関との打ち合わせを行い、今後の方向性や予定を議論しました。

■ 進捗報告

 5月、6月には教員へ向けての進捗報告を行いました。教員からのフィードバックを受けて計画を修正するとともに、異なる課題に取り組む他チームの進捗を知ることでモチベーションが喚起されました。

■ ミニレクチャー

 プロジェクトの進行段階に合わせて、週に1回のペースで30分程度のレクチャーを受けました。レクチャーの中では教員から各段階に必要な考え方、手法等の補足が行われました。

■ 中間発表
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 7月初旬に課題提供機関である企業/NPO/自治体の関係者を招き、プロジェクトの進行度合いを報告しました。ここでは各チームが実施した調査の結果や定義した問題、解決策のプロトタイプを発表し、関係者からフィードバックをいただきました。いただいた意見をもとに方向性の修正および最終提案に向けた進行計画の調整を行いました。

■ 進捗報告
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 9月末には再び教員に向けた進捗報告を行い、最終提案の素描を提示しました。プロジェクトの終結に向けて必要な事項の洗い出しを行いました。

■ 最終成果発表
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 プロジェクトの集大成として課題提供機関の関係者を招き、最終的な提案内容の発表を行いました。これまでに学んだ知識・技術を駆使して行った7ヶ月に渡る調査と議論を通じて見えてきた課題の本質を明らかにし、新たな価値を創造するビジョンとそれを実現するための実行プランを提案しました。

■ ふりかえり

 プロジェクト終了後、7ヶ月間の活動を通して得たそれぞれの学びの振り返りと共有を行いました。また活動を行った現地へ訪問して多くの関係者へ提案内容の紹介を行い、広く意見をいただきました。

■充実したフィールドワーク、文献調査、プロトタイピング

 活動期間中は課題内容への理解を深めるため、文献調査とともに現地でのフィールドワークを行い、現地で行われている活動への参加やインタビュー等を実施しました。綿密な調査を通じて課題を問い直し、課題そのものだけでなくその背景へも洞察を深めました。教室に留まらないフィールドワーク、何度も繰り返した議論、アイデアのプロトタイピングを通じて問題の本質へアプローチする提案を目指しました。

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履修学生の声

 本活動に取り組むにあたって、文献調査や様々な方々、グループメンバーとの対話を行ってきた。その中で様々な学びを得ることができた。以下に、特筆すべき二点について記載する。まず一点目に「解くべき問いを設定すること」である。十分な情報や論理の蓄積が無い曖昧な仮説から生まれる解決策に新規性や有効性は少なく、問いを適切に設定することがいかに困難でかつ重要な意味を持つかを理解することができた。二点目に、「問題の混沌さを理解する」ことである。問いを設定する上で、現状の問題が混沌としている状況を理解することの重要性を学ぶことができた。環境問題などの、「複雑で解決困難な社会課題」の代表例に触れることにより、その複雑さを再認識することは我々にとって大きな学びであったと言える。

 「プロジェクト最終提案書」より一部抜粋

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課題提供者の声

■ パナソニック株式会社 全社CTO室(文責:大阪大学側担当教員)

 プロジェクトは、自ら課題設定することの焦燥、Social Storyが容易でない挫折、独自の評価軸で解決に至るが、Business Storyは紆余曲折の経過を辿りました。結果、歴史観より現代の社会課題を紐解き、近未来の快適空間を創造しつつ、メンバーの生活環境に落し込み、自らを顧客としたビジネスシナリオ構築は、ベンチャーのスタートアップに値するのではないでしょうか。今後、技術深耕、実証実験、本成果(光)に対する新たな課題(影)への言及に期待したいと思います。

■ 地方独立行政法人 大阪府立環境農林水産総合研究所 環境研究部
  自然環境グループ 研究員 幸田 良介

 今回、獣害という幅広い問題を敢えてテーマを絞らずに課題とし、大部分を学生の自主性に委ねました。その中で目的地をどこに設定するか、どんな意外性のある提案が見られるか、大阪という地域にどう落とし込むか、それぞれ期待半分、不安半分で見させていただきました。問題の背景を捉える力、成果をまとめる力、フィールドワークでの行動力には目をみはるものがあり、興味深い提案を出して頂けました。提案内容を社会実装するにはまだ課題も多いですが、その課題面は引き続き各自で反芻し、今後の活躍に活かして頂けるよう期待しています。

■ NPO法人こども環境活動支援協会LEAF 小川雅由

 廃棄物問題は、先進国、新興国を問わず人々や社会経済の活動がある限り発生する、避けて通れない問題です。これまで、先進国ではモノの豊かさが人々の幸せのバロメーターと考え、大量生産・大量消費・大量廃棄という社会システムを生みだし、プラスティックや家電ごみなど処理困難物も大量に発生させてしまいました。科学技術の発展は、廃棄物問題においては解決方法をより困難にしてしました。そして、グローバル化の中で先進国だけではなく、新興国においても同じようにモノは流れていきます。技術力、経済力の弱い新興国では、物質的な豊かさが重大な環境破壊に直結してしまいます。こうした現代社会の諸相を人間問題として捉え、様々な立場に置かれている人々の内面を映し出し、問題認識を止揚する方策として演劇ワークショップの手法を用いたことは、人材育成研修に新たな方法を提示できたと思います。研修員が廃棄物課題を業務として捉えるだけでなく、人々の生き様として考えるきっかけを与えてくれたことに感謝しています。

■ NPO法人 結びめ 清水安治

 地域社会における課題対応は、机上の論理だけでは到底解決できないものです。私たちがテーマとしている地域コミュニティとの関わりにおいても、人と人の関係性に立つ実践的な試行錯誤の連続です。その段階で、博士課程で身につけた論理的な思考や深く幅広い知識があれば、実践の場で「超域」的な解決策を見いだすことが可能でしょう。髙島でこれまで発揮していただいた皆さんの前向きな行動力で切り拓いてほしいと思います。

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宛先:超域イノベーション総合授業担当まで

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